日経コミュニケーションが総務省と共同で実施した「ブロードバンド/モバイル/NGN時代の企業ネットワーク実態調査」の結果,WANサービスの最新利用動向が分かった。利用率では,IP-VPNでNTTコミュニケーションズの「Arcstar IP-VPN」,広域イーサネットでKDDIの「KDDI Powered Ethernet」が,それぞれ7年連続の1位となった。

 今年の企業ネット実態調査は,7月中旬から8月初旬にかけて,上場企業3909社を対象に実施した。IP-VPN,広域イーサネット,マネージド型インターネットVPNといった通信サービスや,IP電話,テレビ会議,LAN/無線LANの利用状況に加え,企業における携帯電話の利用実態,セキュリティ対策などを調べた。回答数は1098件。その結果から,WANサービスの利用率ランキングが明らかになった。

Group-VPNが6位から4位に

 IP-VPNを導入している企業は1098社のうち599社(54.6%)だった。このうちの160社(26.7%)はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の「Arcstar IP-VPN」を利用している(図1)。2位がNTT東日本/西日本(NTT東西)の「フレッツ・グループ」,「同アクセス」で118社(19.7%),3位がKDDIの「KDDI IP-VPN」で113社(18.9%)となっている。前年から順位の変動はなかった。

図1●IP-VPNではフレッツ・グループやGroup-VPNなど安価なサービスの躍進が続く
NTTコミュニケーションズのArcstar IP-VPNは7年連続でトップだが,シェアは1.6ポイント低下。代わりにGroup-VPNが昨年の6位から4位に上がった。回答は複数回答。
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 ただ,IP-VPN全体を見渡すと,じわじわと変化が進んでいるのが分かる。フレッツ・グループ/同アクセス,NTTコムの「Group-VPN」といった,いわゆる“エントリーVPN”の台頭である。エントリーVPNはアクセス回線としてFTTHやADSLを利用した,格安のIP-VPNである。

 具体的には,前年比でArcstar IP-VPNの利用率が1.6ポイント落ちたのに対し,フレッツ・グループは0.7ポイント伸びた。前年6位だったGroup-VPNは,利用率が前年比で2.8ポイント増の13.5%となり,4位に上がった。

 今後利用する予定/検討中のサービスとしてIP-VPNを挙げた36社に,候補となるサービスを尋ねたところ,フレッツ・グループ/同アクセス,Group-VPNがともに25.0%でトップだった。

 現状では,1位と2位以下の利用率の開きが大きいことに加え,通信サービスの乗り換え機運はそれほど高くない。さらに,Arcstar IP-VPNでもOCNを介してIPsec接続すれば,通信料を抑えられる。このため一気にシェアが塗り替わることはなさそうだが,少しずつ移行が進んでいる。

 一方でKDDI IP-VPNも着実にシェアを伸ばしている。18.9%の利用率は前年比で+1.3ポイント。今後利用を予定/検討中の候補としては22.2%で,フレッツ・グループ,Group-VPNに迫る。背景には,広域イーサネットで圧倒的な強さを見せるKDDI Powered Ethernetと合わせた,法人市場を強化するための販売戦略がありそうだ。

広域イーサはトーンダウン?

 広域イーサネットは399社が利用中で利用率は36.3%だった。前年は40.1%(1162社中466社)で2006年の35.8%(1311社中469社)から大きく利用率を伸ばしたが,2008年は利用率が下がった。調査の結果だけでは具体的な原因は分からないが,FTTHの普及を背景としてエントリーVPNやインターネットVPNへの移行が進んだのではないかと考えられる。

 サービス別の利用率ではKDDI Powered Ethernetが相変わらずの首位で,利用率は32.1%だった(図2)。2位のNTTコムの「e-VLAN」の16.8%に対しシェアで2倍の差をつけた。ただしPowered Ethernetの利用率は,前年の33.0%から0.9ポイント下がった。

図2●広域イーサネットでは相変わらずKDDIの強さが目立つ
KDDI Powered Ethernetは旧パワードコム時代から通算で7年連続の首位。ただし,富士通のサービスが4位に立つなど変動があった。回答は複数回答。
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 上位につけたサービスの順位は,IP-VPNと同様に前年とそれほど大きく変わらない。3位はソフトバンクテレコムの「ULTINA Wide Ethernet」で14.3%。5位はKDDIの「KDDI Ether-VPNサービス」で9.5%だった。

 順位が変動したのは,富士通の「FENICS ビジネスEthernetサービス」(10.8%)と,NTT東西の「ワイドLAN ビジネスイーサ タイプSWL」および「ビジネスイーサ・タイプ2」(8.0%)で,4位と6位が入れ替わった。

 広域イーサネットでは全体に前年よりも利用率が下がったサービスが多い中で,利用率を伸ばしたのが前述のFENICSとNTT東西の「ビジネスイーサ タイプS」(4.3%)。それぞれ前年比+1.6ポイント,+1.5ポイントだった。

アンケート調査の概要
総務省/日経コミュニケーションは2008年7月7日~8月8日,「ブロードバンド/モバイル/NGN時代の企業ネットワーク実態調査」と題したアンケート調査を実施した。対象は国内の証券取引所に上場する企業3909社。回答を得たのは1098社で,回収率は28.1%。
出典:日経コミュニケーション 2008年9月1日号 pp.12-14
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。