App Storeでは,携帯電話事業者の方針に縛られず,ソフトウエアの開発者が自由にアプリを開発できるメリットもある(図1)。

図1●iPhone 3Gではアプリ開発までのハードルが低い
従来の携帯電話の場合,アプリケーション開発者が正式サイト上に登録してアプリケーションを配布しようとした場合,携帯電話事業者に企画内容の審査を受ける必要があった。iPhone 3Gでは,いきなりアプリを作成して,アップルに送付するだけ。新規参入の開発者でもハードルが低い。
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 iモードなど携帯電話事業者の公式サイトでアプリを配信したい場合,まずソフトウエア開発者側が,その企画内容を事業者に対して説明する。そのうえで,改善点などのアドバイスを受ける。事業者の方向性と合わない場合は却下されることもあるという。

 事業者から了承が下りれば,アプリを制作し,改めて事業者の品質チェックを受ける。こうした手順を踏むのは,「課金しても問題のない品質を持っているか。技術的な問題はないか。必要以上に高額なパケット代がかからないか,などを確認する」(NTTドコモ)ためだという。

発売1カ月でアプリの数は倍増

 一方,iPhoneのアプリを作るには,事前交渉の必要はない。SDKを使ってアプリの作成に取り掛かり,完成したらアップルに送付する。その際に,どの国で配信したいか,「ビジネス」,「教育」,「ゲーム」などApp Store上で表示する際のカテゴリをどれにするか,無料か有料かなどを開発者が指定する。

 App Storeへの掲載前には,アプリの内容をアップルが確認する。これは暴力あるいは性的な描写に問題がないか,セキュリティ保護上の問題がないかといった点を審査するため。常識的な内容であれば,問題なく通過できる。

 こうしたメリットを評価した開発者が手がけたアプリが,続々とApp Storeに集まっている。App StoreのサービスはiPhone 3Gの発売前日の7月10日に公開されたが,この開始直後に日本向けに配布されたアプリのタイトル数は約500だった。だが,8月上旬の時点では1000以上に到達している。

 SDKのダウンロード数は,アップルの開発者会議WWDC 2008が開催された6月上旬の時点で,全世界で25万に到達。SDKは従来のMacintosh用の開発キットをベースとしているが,タッチパネルや加速度センサーを使ったユーザー・インタフェースの制御機能を追加している。開発者はiPhoneのエミュレータで動作を確かめながら,アプリを作成する。

 SDKは無料でダウンロードできるが,アプリを配布するには有償の「iPhone Developer Program」に加入する必要がある。主にApp Storeで配布するアプリを対象としたスタンダード・プログラムが年額1万800円。個人でも十分支払える金額で参入できる。企業向けを対象としたプログラムは年額3万3800円となる。このiPhone Developer Programへの登録数もうなぎのぼりだ。6月上旬の時点で法人個人を問わず4000の開発者が登録したという。

望まれる月額課金の仕組み

 App Storeへの参入は相次いでいるが,従来の携帯電話向けアプリで月額課金をしていたアプリ開発メーカーには思わぬ“落とし穴”があった。

 App Storeに並ぶ有料アプリは多くが100円から1000円前後。ダウンロード時に一括で料金を支払う「売り切り型」の課金体系を採用している。これは,1曲売り切りという音楽データの販売プラットフォームが土台となっているため。これに対して,iモードなど従来の携帯電話でアプリを提供する際は,月額で利用料金を得ることが多い。月額料金では「アプリ開発メーカーは収益が予測しやすく,新たなゲームを投入して飽きさせないなど囲い込みの手段も講じられる」(NTTドコモ)からだ。

 実際,継続して運用コストが発生するサービスには売り切りの料金はなじまない。月額課金モデルの実現が望まれている。ナビゲーション・サービスを提供するナビタイムジャパンは,今のところiPhone用に無料アプリを配信しているが,今後機能を強化した有償アプリの展開を計画している。その際,「地図データ,時刻表,リアルタイムの災害情報などは(ナビタイムジャパンが)利用料を払って入手している。ユーザーに継続的にサービスを利用してもらう場合は,定期的に料金を得られないと事業が成り立たない」(大西啓介代表取締役社長)と訴える。同社では,アプリはApp Store経由で配布したうえで,同社のWebサイトからクレジット課金の手続きをしてもらう方法も検討している。

 経路検索サービスの無償アプリを配信している駅探も,「期間限定の料金を最初に設定し,例えば2年目以降は安くするといった事業モデルなどをアップルに提案していきたい」(駅探の中村太郎代表取締役社長)という。

出典:日経コミュニケーション 2008年8月15日号 pp.25-26
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。