櫻庭秀次/インターネットイニシアティブ メッセージングサービス部
サービス推進課シニアプログラムマネージャ

 迷惑メールはますます悪質巧妙化している。例えば(写真1)は最近の迷惑メールの例である。これを受け取ったユーザーが,何やら面白そうだと思い,ここで示されているリンク先をクリックするとFlash Playerの新バージョンのダウンロードを促される(写真2)。そしてさらに,何かの動画が見られるかもしれないと考え,ダウンロードしたものをつい実行してしまうと,実はこれは不正なプログラム(マルウエア)なのである。ファイル名も“flashcodecinstall_13_31.exe”と,なんとなくそれらしい名前がついているが,実はトレンドマイクロでは "TROJ_DLOADR.GH" と名前がついているトロイの木馬型のマルウエアだ。

写真1●最近の迷惑メールの例
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写真2●Flash Playerのダウンロードを促されるが…
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 世界で最初の迷惑メールは,今から30年前の1978年5月1日にインターネットの原型となったARPANETに米Digital Equipment(DEC,当時)の営業担当者が自社製品の宣伝を流したことが始まりといわれている(関連記事)。それから30年が過ぎ,インターネットの発展とメール・システムの普及により,迷惑メールは急速に広がり,今や大きな社会問題となっている。

 特に日本では,携帯電話がインターネットからのメールを送受信できることから迷惑メールを受け取る層が広く,より深刻な問題となっている。

メール総数の7~8割は迷惑メール

 現在日本では,どれくらいの迷惑メールが流通しているのか。

 日本では,メールも電話と同じ通信の一形態として見なされていることから,その取り扱いについては厳しく制限されており,なかなか実数としてこれまで公表されてこなかった。そもそも迷惑メールは,ウイルスメールと違い特定のパターンで識別できるケースが少ないことから,その判定自体が難しいという問題も抱えている。

 しかし,2008年4月に衆議院の総務委員会で行われた,「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の改正案の審議過程で総務省から推計値が報告された(参考資料)。それによると,迷惑メールの流通量は1日当たり25億~30億通程度。日本で受信されているメール通数が1日当たり35億~40億通で,そのうちの7~8割程度が迷惑メールと言われていることから,25億~30億通という数値を推定している。

 日本の総人口の全員がメールを利用していると仮定すると,1日1人平均20通の迷惑メールを受信している計算となる。メールを全く使わない人がいることを考え合わせると,実際には相当数の迷惑メールを受信していることになる。これに伴う諸々の損失は相当額に上る。

 迷惑メールが日本経済にもたらす影響については,日本データ通信協会が2008年3月に調査結果を発表している。それによると,生産面への被害として約7300億円,インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)などにおける投資として約319億円,事業所・行政機関などにおける投資として約518億円,消費者における投資として約132億円と推計している(参考資料)。これらの金額には,迷惑メールの受信を起点とした詐欺的行為による金銭的な搾取は含まれていないため,実際にはより多くの額が失われているのではないかと考えられる。

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