進捗会議や検討会議,障害対策会議やちょっとした打ち合わせなど,システム開発プロジェクトの現場では日々何らかの会議が行われる。その際,事前に資料を準備して配布する方法もあれば,ペーパーレスでプロジェクタに情報を映し出して行う方法もある。これらの会議は,やり方次第では何の成果もなく終わることが少なくない。終わった後,いったい何のための会議だったのかと思うことはないだろうか。“空中戦”主体の会議を行っていると,どうしてもこのような会議になりがちなのだ。

 ここで言う空中戦とは,お互いの意見を文字にすることなく,ただ口頭だけで会議を行うことを指す。参加者の頭の上をお互いの言葉が飛び交い議論(戦闘)している様子が,まるで戦闘機が空の上で戦っている様子に似ているところから作られた造語である。確かに見た目には華々しい空中戦ではあるがそれで大勢が決することはない。

7時間を無駄にしたKさん

 Kさんは入社12年目のベテランSEである。今回,Kさんは中規模システム開発プロジェクトのプロジェクト・マネージャ(PM)として指揮を執ることになった。プロジェクトが発足し,システム要件に関する会議を行うときの出来事である。

 今回,顧客から提出された要求仕様書は内容が薄く,とてもそのままでは要件定義書に落とすことができない内容だった。そこで,顧客の要求事項を整理し,どういうアプローチでインタビューを行うかを決めるのかをテーマに会議を開催することにした。

 Kさんは自分自身の経験から,この手の会議には時間が掛かるだろうと考え,プロジェクト・ルームとは別に,会議室を10:00から17:00までの7時間手配した。要求仕様書をはじめ,これまでに得られている情報をすべてコピーし出席者の人数分準備した。さらに,提案フェーズにかかわったSEを議事録担当者としてアサインしたのだった。Kさんとしては,この会議を足がかりに本格的な要件定義作業をスタートさせるつもりで準備万端整えたのだった。

 実際に会議を始めると思ったよりうまく進まない。Kさんはいらだちを感じた。会議の議長はKさんである。会議のファシリテートには,それなりに経験があり自信がある。しかし,どうしても議論がうまくかみ合わず,横道にそれてしまうのだった。

 また,ヒートアップする社員がいるかと思うと,ずっと資料に目を向けたまま議論に参加しない社員もいた。ヒートアップした社員は持論を延々と展開するし,聞いているようで,その実,聞いていない社員も多かった。昼食を終えると,居眠りする社員まで出てきた。

 そうこうしているうちに,15:00を超えようかという時間となってしまった。ここまで約4時間も使って会議しているのに,いっこうにアイデアがまとまっていなかった。これではいけないと感じたKさんは,残りの時間を使って何とかまとめようと努力した。議論に参加していない社員には率先して意見を求め,ヒートアップしがちな社員の意見を制して会議の方向性を保とうとした。

 結果的に17:00の段階では「それぞれ担当のユーザーにインタビューする」という抽象的な結果のみ決まっただけで,具体的に要求仕様書のどの項目を,どういった方法で,どの程度まで深掘りして聞くかといった内容は,各参加者の宿題事項となったのだった。参加者からは,「疲れただけの会議だった」という声が聞こえるだけでなく,「いったい,何のための会議だったんだっけ?」という声すら聞こえてきた。

 Kさんは会議のファシリテートについては自信があった。そうであるにもかかわらず,なぜうまくいかなかったのだろうか。

 原因の一つは,会議の目的と目標(ゴール)を明確にできなかった,会議の最後までそれを保てなかった,という点にある。会議の最初にその目的を伝えることは多い。しかし,それを最後まで明確に保つために,議長には相当な労力が求められる。人は耳から聞いたことを,そのときは頭で理解したつもりでも,時間が経つにつれ,どうしても意識から外れてしまうからである。従って,継続的に意識付けする必要がある。

 また,最終的に具体的なアイデアにたどり着かなかった原因として考えられるのは,会議の途中で出された何気ないアイデアが議論の中に埋もれてしまったことだ。よいアイデアも,会議終了時点では誰の頭の中からも完全に忘れられてしまったのである。

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