皆様お久しぶりです。前回の記事からまたもや日が空いてしまいました。

 2008年6月11日~13日の間,千葉市・幕張メッセにて「Interop Tokyo 2008」という日本最大級のネットワーク関連の展示会が開催されていました。ちょうど私の会社も,「SPEED Call」(自動音声通知機能付き監視ASPサービス)という新しいサービスの立ち上げをお手伝いした関係で出展していました。あまりにも時間がなかったために会場内をゆっくり見渡すことができませんでしたが,昨年と比較して会場が多少小さくなったものの,来場者数は昨年とほぼ変わらなかったため,何とも密度の濃い展示会となりました。

 私の会社のブースにもたくさんご訪問頂きました。ありがとうございます。SPEED Call が気になる方はホームページを見てくださいね。

IPv4アドレス枯渇の対策はどうする?

 この連載でも何度かIPv4アドレスの枯渇問題に触れてきましたが,未だに枯渇はしていません。ただ,ここ最近の傾向を見ていると,2011年ごろにIPv4アドレスが枯渇しそうだという予想がそれほど動かなくなり,だんだんとその時期が迫ってきているという感じがしています。

 あと3年を切っていることを考えると,そろそろ現実的な対策を考える時期に来ているようにも思えます。

 このような中,2008年2月25日から29日に台湾で開催されたAPNICミーティングに,日本から“Proposal to create IPv4 shared use address space among LIRs”(prop-058 )という提案がされました。

 この提案は,もともと日本で開催されたJPOPM(JPNIC open policy meeting,オープンポリシーフォーラム主催の日本におけるアドレス・ポリシーを検討するためのミーティング)で,「AP地域LIR共同利用IPv4アドレス空間の新設」として検討されたものから発しています。日本における詳しい議論は,JPOPF(Japan open policy forum)のホームページをご覧ください。

 ごくごく簡単に説明すると,「プロバイダなどが顧客へのサービスのために使うネットワークで,利用可能なプライベート・アドレスを作りましょう」というものです。

 通常,プライベート・アドレスというのはネットワークの一番エンドサイト,つまり家庭のネットワークなどで使います。そして,家庭のネットワークをインターネットにつなぐ際は,ブロードバンド・ルーターがプライベート・アドレスとグローバル・アドレスを変換します。このようなアドレス変換をNAT(network address translation)といいます。

 NATは,一つまたは少ないIPv4グローバル・アドレスの数で,多くの端末を接続できるようにする技術です。これは,抜本的ではないにしろIPv4の消費量を抑える効果も少なからずあるわけです。

 しかし,プロバイダが顧客ごとにIPv4グローバル・アドレスを割り当てなくてはならないことは,今までと変わりありません。

キャリアグレードNATの二つの問題

 今後IPv4アドレスが枯渇する時のことを考えると,IPv4アドレスを節約しなくてはなりません。この節約はプロバイダレベルで実施する必要も出てきます。

   このとき,プロバイダのネットワークの一部にプライベート・アドレスを割り当て,そのプライベート・アドレスのネットワークに顧客のネットワークを接続する方法が考えられます。この方法を実現するには,顧客のネットワークに割り当てたアドレスと,プロバイダのネットワークに割り当てたアドレスを変換する,大容量で高速のNAT装置が必要です。このような,大容量高速NAT装置を経由してインターネットに接続させる方法を「キャリアグレードNAT」といいます。

 キャリアグレードNATは,ブロードバンド黎明期にCATVなどで採用されたことがありますが,今ではグローバル・アドレスで直接インターネットに接続するサービスが一般的です。それでも一部では現在も使われています。

 CATVなどで実施されてきたキャリアグレードNATは,大容量高速NAT技術の礎ともいうべきで,これらの経験が現在検討されているキャリアグレードNATにも生きています。しかし,これがFTTHやADSLをサポートするプロバイダでも使えるかというと,そう簡単にはいきません。

 キャリアグレードNATには大きく二つの問題,(1)大容量高速NATの性能問題,(2)多段NAT問題 ──があるのです。

NATはどこまで耐えられるのか

 プロバイダでNATを行おうとすると,まず「大容量高速NAT装置の性能」という問題がでてきます。

 現在,中・大規模のプロバイダが処理しているインターネットのトラフィックは,すでに10Gビット/秒を超えているところが少なくありません。つまり,10Gビット/秒という高速なネットワークでNATを行う必要があります。

 さらに,この10Gビット/秒で扱う通信の数も問題になります。NATは一つの通信元・通信先のペアで一つの「セッション」というものを管理しなくてはなりません。10Gbpsという大容量の回線では,1千万近いセッションを管理しなくてはならず,性能的に問題が出てくると考えられます。

 幸いなことに,NATの高速化技術の進み具合は早く,ハードの性能も向上しています。大容量のトラフィックでも,今あるネットワークのロードバランス技術などとうまく組み合わせることでさばける見込みが出てきています。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら