2006年10月の国内解禁から約1年半,電力線通信(PLC)に第2世代のチップセットを採用した製品が登場した。物理速度を190Mビット/秒から210Mビット秒に向上させた,パナソニック コミュニケーションズのPLCモデム「BL-PA300」である。実測では最大65.7Mビット/秒のTCPスループットを達成した。

 BL-PA300は,松下電器産業が開発したPLC技術「HD-PLC」に準拠する。利用する周波数帯域を4M~28MHzから2M~28MHzに広げることで,物理速度190Mビット/秒を210Mビット/秒に高速化した。さらに,チップの実装面積を従来の約半分とし,本体サイズを名刺大にまで小さくした。

 PLCには,HD-PLCのほかにも物理速度200Mビット/秒の「HomePlug AV」および「UPA」に準拠する製品が市場に出ている。しかし,200Mビット/秒を超える物理速度を実現した製品はBL-PA300が初めてだ。

 20Mビット/秒の物理速度向上によって実効速度がどれくらい変わるのかを知るため,BL-PA300のTCPスループットを実測した。第1世代製品のBL-PA100と比較すると同時に,両製品が混在した時の速度を計測した。混在時は互換性維持のため,BL-PA100が使っている4M~28MHz帯だけを利用する。帯域拡大による速度向上は望めないが, PLCモデムとしての基本性能が向上している可能性がある。

 測定した環境は,50平方メートルの集合住宅である(図1)。ポイント(1)のコンセントにつないだモデムを親機とし,測定用サーバーを接続。そのサーバーと,各ポイントのコンセントに接続した子機を経由した測定用クライアントの間でTCPスループットを測った。

図1●パナソニック コミュニケーションズの高速電力線通信(PLC)モデム「BL-PA300」の測定環境
図1●パナソニック コミュニケーションズの高速電力線通信(PLC)モデム「BL-PA300」の測定環境
従来製品のBL-PA100も用意し,BL-PA300同士,BL-PA100同士のほか,新旧2製品を混在させた場合のTCPスループットを測定した。
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 TCPスループットの計測には,米ヒューレット・パッカードのベンチマーク・ソフト「Netperf」を使用。TCPのスループットを大きく左右するウインドウ・サイズは,Windows XPの64Kバイトとした。

実効速度は最大65.7Mビット/秒

 結果を見ると,BL-PA300のTCPスループットはポイント(2)の場合で65.7Mビット/秒に達した(図2)。BL-PA100同士の最大62.7Mビット/秒と比べて3Mビット/秒ほど速い。

図2●コンセント別のTCPスループット
図2●コンセント別のTCPスループット
第2世代製品のBL-PA300では,最大実効速度が従来機の62.7ビット/秒から65.7Mビット/秒に向上。従来機と同じ周波数帯域を使う互換モードにおいても,最大で5Mビット/秒程度の実効速度向上が見られた。

 同系統のコンセント間のバラつきもBL-PA300の方が少ない。BL-PA100同士では,同系統のコンセントでも60Mビット/秒を切るポイントがある。BL-PA300同士では,三つのポイントで65Mビット/秒を超えた。

 20M~30Mビット/秒台の速度となったポイント(3)/(4)/(7)/(8)のコンセントは,親機と子機の電力線が分電盤をまたぐ。特に(7)と(8)は,「単相3線式」と呼ばれる配線方式で使用する,電力線そのものが異なるコンセントだ。3本ある電力線のうち2本を使い100Vの電力を取り出すため,違う系統(異相)の電力線ではPLCの信号が大幅に減衰する。別系統のコンセント同士で通信する場合に実効速度が半分以下になるのはこのためだ。

 BL-PA300で新しく使っている2M~4MHzの帯域は,信号の減衰が比較的少ない。このため「環境が悪い条件で,実効速度の改善が見られることが多い」(パナソニック コミュニケーションズ)。実測の値を見ると,最も結果が悪かったポイント(8)におけるBL-PA300同士とBL-PA100同士の差は5.3Mビット/秒。最も結果が良かった同系統のポイント(2)での計測値3Mビット/秒よりも,差が広がっている。

好条件なら新旧混在時でも速度向上

 周波数の拡大による速度向上は,BL-PA300とBL-PA100の混在時には当てはまらない。互換性を維持するために使用する周波数帯域が4M~28MHzに制限されるからだ。物理速度は190Mビット/秒に低下する。

 ところが実際に計測すると,混在環境でも一部のコンセントでBL-PA100同士を上回り,BL-PA300同士で出した値に迫る速度を得た。

 まずBL-PA300を親機,BL-PA100を子機とした混在環境では,電力線が同系統のポイントならいずれも65Mビット/秒台となる。BL-300同士の65.7Mビット/秒には一歩及ばないが,従来機を置き換えるのでなく,買い足す選択も十分考えられる向上幅だ。

 次に親機と子機を逆にした測定では,同系統のコンセント群での実効速度は62Mビット/秒前後にとどまったが,それでもBL-PA100同士を上回る。

 これは,BL-PA300の受信性能が改善されたためとみられる。Netperfは,クライアントからサーバーに向けてデータを送出する。この際上りのパケットがやり取りの多くを占めることから,受信側の電力線から信号を取り出す際のノイズ耐性の高さが実効速度を左右する。PLCでは信号強度が電波法で制限されており,送信側の信号強度を上げるのは困難だ。実効速度を上げるには,受信性能を高めるしかない。

 混在環境では2M~4MHzの帯域を使わない以上,周波数帯域の拡張による速度向上は望めない。最も条件が悪いポイント(8)では,親機・子機の関係にかかわらず約20Mビット/秒がやっと。BL-PA100同士とBL-PA300/100混在時の速度差は約2Mビット/秒に縮まった。

出典:日経コミュニケーション 2008年4月15日号 18ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。