インターネット上の広告も,雑誌やチラシなどによる広告と同様,法律により不当表示が禁止されている。BtoCのECサイトを構築する際は,「景品表示法」や「特定商取引に関する法律」が定める規制を,正確に理解しておかなければならない。

 2000年にゴルフクラブ・メーカーの本間ゴルフが,インターネット上のショッピングモール「Yahoo!SHOPPING」と「楽天市場」に掲載したゴルフクラブの広告で,「HONMA BIG-LB NTCM40 定価380,000円 特価138,000円」と記載するなど,「定価」と称する価格と実際の販売価格とを併記する2重価格表示を行っていた。

 しかし,「定価」と称するものは,販売開始当時における自社の直営店での販売価格であって,最近はこの価格で販売した実績がなかった。

 このため公正取引委員会は,「本間ゴルフの2重価格表示は特価が著しく安いものであるように見せかけるために行ったものであり,景品表示法が禁止する『有利誤認表示』に該当する」と判断,同社に今後同様の表示をしないよう命じた。(公正取引委員会2001年2月28日排除命令,公正取引608号61 頁)

 前回は,電子メールを使った広告・宣伝を規制する法律を取り上げた。今回は,インターネット上の広告・宣伝に対する法律の規制について解説する。

 特にBtoC(企業対個人)のECサイトを構築する際には必須の知識なので,正確な知識を身に付けておいて欲しい。

不当表示の禁止

 1990年代後半から,「Yahoo!SHOPPING」や「楽天市場」などのインターネットを使った通信販売用ホームページやショッピングモールが急速に普及した。それに伴い「誇大広告」や「虚偽広告」による被害も増大した。

 このため公正取引委員会は,1999年2月に「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」を改正。インターネット上の広告・宣伝も,景品表示法の規制の対象とした。景品表示法は,商品やサービスに関する不当表示や過大な景品の提供による顧客誘引行為を規制することで,一般消費者を保護するための法律である。

 広告・宣伝の不当表示に関しては,(1)商品・サービスの内容が著しく優良であると一般消費者に誤認される「優良誤認表示」,(2)商品・サービスの取引条件が著しく有利であると一般消費者に誤認される「有利誤認表示」,(3)商品・サービスの取引関連事項について消費者を誤認させる恐れがあると公正取引委員会が指定する表示――が禁止されている(4条1項)。これに違反した事業者に対しては,公正取引委員会が違反行為の差止めや再発防止措置などの「排除命令」を発することができる(6条)。

 冒頭で紹介した本間ゴルフの事件は,インターネット上の広告・宣伝に対して,公正取引委員会が景品表示法に基づく排除命令を出した初めてのケースである。

BtoC取引の解釈を明確化

 しかし,その後もBtoC取引における消費者の被害が後を絶たなかったため,公正取引委員会は2002年6月に,BtoC取引に関する景品表示法の運用指針である「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」を公表。BtoC取引に関する景品表示法上の解釈を明確にした。

 留意事項ではBtoC取引を,(1)インターネットを利用して行われる商品・サービスの取引(通信販売用ホームページやショッピングモールでの取引),(2)インターネット情報提供サービスの取引(ディジタル・コンテンツのダウンロード・サービスにおける取引),(3)インターネット接続サービスの取引(ADSLや CATVインターネットなどのブロードバンド・サービスの購入)の3種類に分類し,それぞれのケースにおける景品表示法上の問題点,問題となる事例,表示上の留意事項をまとめている(図1)。

図1●「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」が定める表示上の留意事項
図1●「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」が定める表示上の留意事項
図2●「特定商取引に関する法律」が義務付けている通販の表示事項
図2●「特定商取引に関する法律」が義務付けている通販の表示事項

 例えば,インターネット接続サービスの取引では,(1)ブロードバンド通信の通信速度が通信設備の状況や他回線との干渉などで低下する場合があることや,(2) サービス提供開始時期が回線の接続工事等の遅れで予定時期より遅れる恐れのあることなどを,正確かつ明瞭に表示しなければならない,としている。その後インターネット接続サービスの取引に関しては,2003年8月,さらに詳細なガイドラインを公表している。

 インターネット上の通信販売については,景品表示法のほかに「特定商取引に関する法律」による規制も受ける。この法律は,商品・サービスの価格などを明確に表示しなければならない,と定めている(11条,図2)。さらに,インターネット上で販売する商品・サービスの種類によっては,「古物営業法」や「貸金業法」,「薬事法」などの法律の規制を受けることにも注意しなければならない。

辛島 睦 弁護士
1939年生まれ。61年東京大学法学部卒業。65年弁護士登録。74年から日本アイ・ビー・エムで社内弁護士として勤務。94年から99年まで同社法務・知的所有権担当取締役。現在は森・濱田松本法律事務所に所属。法とコンピュータ学会理事
出典:日経ITプロフェッショナル 2003年11月号 148ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。