たいていのソフトウエアは仮想化環境でも問題なく動作するが,一部に動かないソフトがある。そして,開発元ベンダーの動作保証やサポートを得られないソフトは,たくさんある。仮想化環境に対するベンダー側の対応に遅れが目立つ。

 仮想化ソフトでサーバーを集約したくても、仮想マシン上でソフトが正常動作しなければあきらめるしかない。そして数は少ないが、仮想マシンで正常動作しないソフトは実際に存在する(図1)。

図1●VMware上でのソフトのサポート状況
図1●VMware上でのソフトのサポート状況
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 その代表はオラクルのクラスタリング・ソフト「Oracle Real Application Clusters(RAC)」。日本オラクルでデータベース関連のマーケティングを担当する桑内崇志マネージャは、「サーバー間の同期がうまく取れないためダウンする」と説明する。

 仮想マシンが再現していないハード環境を使うソフトも正しく動作しない。富士通で仮想化ソフトの動作検証を担当した松島秀男プロジェクト課長は「メインフレームの独自プロトコルを使う通信ソフトや、ライセンス確認でRC-232Cインタフェースに特殊な機器を装着するソフトなどは動作しなかった」と証言する。

 このほか実マシンのネットワーク上のアドレス(MACアドレス)をチェックするソフトも仮想マシンでは使えない。カナダのキナクシス社製の営業支援ソフト「RapidResponse」などがこれに該当する。

動作しても自己責任

 システム・インテグレータなどの協力で仮想マシン上での動作を確認できたとしても課題は残る。現時点ではソフト会社の多くが稼動環境として仮想化ソフトを認めていないことだ。

 「実マシンで同じ障害が発生したら対応するが、症状の再現はユーザーの責任」というのが大半のソフト会社の基本姿勢。仮想化ソフトを正式にサポートするのは独SAPや富士通など一部にとどまるし構成も限られる。SAPを例にとるとWindows Serverでは64ビット環境だけだ。

 仮想化ソフトを提供するヴイエムウェアも「障害原因の1次切り分けはインテグレータやサーバー・メーカーの担当。仮想化ソフト側に問題があると分かれば対処する」(名倉丈雄マネージャ)とつれない。インテックの馬場技術コンサルタントは「インテグレータとしては障害発生時の対応は自己責任になることを説明して、お客様に判断してもらうしかない」とこぼす。

 仮想化ソフトの普及に伴い、正式サポートを表明するソフト会社が増えるのは確実だ。マイクロソフトは今夏の出荷開始までにHyper-Vを正式サポートするソフトを100種以上そろえるという目標を掲げている。

ライセンス体系は混迷

 「仮想化の課題の1つはライセンス体系が明確になっていないこと」。三菱電機ビジネスシステムの鞍田英樹主任は指摘する。同氏は昨年9月、家電卸、三菱電機ライフネットワークの仮想化ソフト導入を支援した際、ライセンス体系の確認にてこずった。

 VMwareを使ってブレード・サーバー上に生成した仮想マシンでデータベース・ソフトやビジネス・インテリジェンス(BI)ソフトを新規に動かそうとしたところ、当初はライセンス料が判然としなかった。「ソフト会社の営業担当者に尋ねても明確な回答がなく、確認が取れるまで何度もやり取りを繰り返した」という。

 SAPのERPのようにユーザー数で課金するソフトの場合は、仮想化ソフトを導入してもライセンス体系は変わらない。だが、実際にはソフトを動かすサーバーの台数や搭載CPU数に応じてライセンス料を変える製品が多く、ユーザーの混乱を招いている(図2)。

 CPU数で課金する場合、CPU数を実マシンの搭載数で数えるのか、仮想マシンの割り当て数で数えるのか、ソフト会社によって判断が分かれる。例えば日本オラクルの「Oracle Database」での課金は実マシンのCPU数でカウントするが、日本BEAシステムズのアプリケーション・サーバー「Web Logic」は仮想マシンのCPU数を使う(上限は実マシンのCPU数)。

図2●仮想マシン上で動作するソフトの課金方法の例
図2●仮想マシン上で動作するソフトの課金方法の例
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 インストールしたソフト数の数え方も会社によって異なる。同じソフトをサーバー2台で同時に利用すれば、2本分のライセンス料が発生するのは誰しもが理解できる。だが、1台のサーバーを2台の仮想マシンに分割し、それぞれで同じソフトを動かす場合はどうだろう。Oracle Databaseのように1本分ですむソフトもあれば、NECのアプリケーション・サーバー「Web OTX」のように2台分が必要になるソフトもある。

 Windows Serverは以前は仮想マシン数でカウントしていたが、06年2月から実マシン課金に変わった。混乱の種は尽きない。

 複数台の実マシン間で動作中の仮想マシンを移動させるライブマイグレーション機能を使う場合も注意したい。「移動前と移動後の実マシンでソフトが動く」との判断から、2台分のライセンスを要求するソフトが少なくない。Oracle Databaseやマイクロソフトのデータベース・ソフト「SQL Server」がこれに該当する。

 ライセンス体系の混乱は仮想化ソフトが本格普及する過渡期特有の現象だろう。動作保証の問題と同じく時間が解決するはずだが、しばらくはユーザー企業を振り回しそうだ。

出典:日経コンピュータ 2008年3月1日号 153ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。