神戸・三宮近くにある,ソフト開発会社アイクラフトの本社オフィス。毎週火曜日と金曜日の午前11時になると,会議室の一つが急ごしらえのフィットネス・ジムに変貌する。

 隅に追いやった会議テーブルの代わりに真ん中に置くのは,フィットネス・ベンチとバーベル,ダンベル。そして,そのかたわらには,派遣されてきた筋骨隆々のプロのトレーナー。

 この急造ジムに,ITエンジニア3~4人が1組となって入室していく。

 「刈込さん,最初に背中の筋肉を鍛えるベント・オーバー・ローイングをやりましょう。イチ,ニ,サン,シ…。はいっ,もう一丁…。はいっ,もう一丁…」。

 こんなトレーナーの指示を受け,「ううっ,きつい~」という声を漏らしながら,1人ずつ1分ほどのトレーニングを順繰りに何回かこなしていく。1組当たりの所要時間は約15分だ。

 多少の筋肉痛は免れないハードさだが,やっている当人たちは楽しげである。「全力を出し切ったあとは,不思議と爽快になる。それに体力がついたのか,風邪を引かなくなった」(システム開発部の刈込匡人さん)。「一緒の組になった人とワイワイ雑談できるので,いい気分転換になる」(顧客サービス部 主任の平馬典昭さん)。そんな声が口々に聞かれる。

 代表取締役の山本裕計さんは,「オフィスに1日中いて,張り詰めて仕事をしていると,どうしてもストレスがたまる。そこでストレス対策になればと,約3年前に始めた」と経緯を語る。当初は強制してもやりたがらないエンジニアが少なからずいたが,今では本社オフィスに勤める40人あまりのエンジニアの大半が進んでトレーニングに参加するようになったという。「みんなが楽しんでやっている様子が,ストレス対策になっている証拠」と,山本さんは笑顔を見せる。

ストレス対策はITエンジニアに必須

 みなさんはストレス対策として,日ごろからどんなことをしているだろうか。「自分はストレスがたまらないから不要」という人も,図1のストレス・レベル診断テストを試してほしい。自分に当てはまる項目が少なからずあり,たまったストレスがいろんな形で表れていることに気付かされるはずだ。

図1●ストレス・レベル診断テスト
図1●ストレス・レベル診断テスト
自分自身の最近の変化として,上記の各項目が,どの程度当てはまるだろうか。1~5の5段階で答え,全項目の回答の合計点を算出し,今のストレス・レベルを確認してほしい
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 企業向けにストレス対策などのコンサルティングを行うライフバランス マネジメントの渡部卓さん(代表取締役 社長)は,「ITエンジニアは,他の職種と比べて突出してストレス・レベルが高い」と警鐘を鳴らす。ギリギリの期間と人員で,「ユーザーが納得するシステムを作れるか」「納期に間に合うか」という重圧を受けながら長時間勤務を続ければ,ストレス過剰になるのは必然。放置すれば,思考力ややる気を損なうばかりか,うつ病などの様々なストレス性疾患にかかりかねない。ITエンジニアは,健康を維持し仕事のパフォーマンスを高めるため,自分でストレスを解消していく必要がある。

 時間がなくても大丈夫。ストレス対策には短時間で行えるものもあるからだ。ただし一つだけでは効果が薄いので,いくつも積み重ねたい。

 そこでこの記事では第2回と第3回で,現場のストレス解消法を紹介する。内容は様々だが,いずれもR(Recreation:娯楽,Relaxation:くつろぎ,Rest:休息)またはP(Positive Thinking:前向き思考)に関係するものだ。さらに第4回で,ストレスとそれを解消する仕組みを理論的に解説し,第5回で医学的に有効性が実証されている三つの主要なリラックス法を取り上げる。

出典:日経SYSTEMS 2008年2月号 46ページより
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