互いに理想と現実のギャップがありすぎて、新たな取引関係の構築になかなか踏み出せない──。中堅・中小企業の情報システム担当者とITサービスの営業担当者約4100人を対象に、ITサービスに対する意識や新規取引への意欲などを聞いたところ、ユーザー企業とソリューションプロバイダの間に横たわる意識の溝が鮮明になった。

 互いに理想と現実のギャップがありすぎて、新たな取引関係の構築になかなか踏み出せない──。本誌は10月上旬、中堅・中小企業の情報システム担当者とITサービスの営業担当者約4100人を対象にインターネット調査を実施。ITサービスに対する意識や新規取引への意欲などを聞いたところ、ユーザー企業とソリューションプロバイダの間に横たわる意識の溝が鮮明になった。

 中でも溝が端的に表れたのは、取引実績のない相手との付き合い方。ユーザー企業は「取引実績のないITサービス企業からの提案をどう思うか」という質問に対し、「新たなコンピュータ会社からの提案を積極的に受け入れたい」(9.4%)、「内容によっては提案を受け入れてもいい」(73.8%)の合計が8割を突破(図1-1)。新たなソリューションプロバイダにも門戸を開いている姿勢がうかがえる。

 これに対してソリューションプロバイダには、積極派と消極派が合い半ばしていた。「取引実績のない中堅・中小企業の顧客を開拓するために営業活動をしているか」と聞いたところ、「積極的に営業している」(14.6%)と「まあ営業している」(45.1%)の合計は6割止まり(図1-2)。自由記入欄からは「大手と比べて顧客リスクが高く営業コストもかかる。その割に利益が小さい」とか「商談規模が見込めないため、受注に向けた積極的な営業活動を起こしにくい」という声が多数あった。

図1-1●中堅・中小のユーザー企業(従業員1000人未満、以下同)はソリューションプロバイダの提案を待っている。取引実績のないソリューションプロバイダからの提案について(有効回答267人)   図1-2●取引実績のない中堅・中小企業の顧客を開拓するために営業活動をしているか(有効回答164人)
図1-1●中堅・中小のユーザー企業(従業員1000人未満、以下同)はソリューションプロバイダの提案を待っている。取引実績のないソリューションプロバイダからの提案について(有効回答267人)
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  図1-2●取引実績のない中堅・中小企業の顧客を開拓するために営業活動をしているか(有効回答164人)
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 さらにユーザー企業のITに対する理解の低さも、中堅・中小企業との新規取引に二の足を踏む要因となっているようだ。「担当者が片手間で情報システムを管理しているような企業では、そもそも商談相手がいない」「運用に関する意識が低いIT担当者が少なくない。手離れのよい商材であれば積極的に営業したい」など、ユーザー企業側の人材不足を指摘する声も相次いだ。

図2●Sierよりユーザーの方がWebでの情報収集を重視。ユーザー企業とソリューションプロバイダに聞いた「新たな取引先の探し方」(複数回答)
図2●Sierよりユーザーの方がWebでの情報収集を重視。ユーザー企業とソリューションプロバイダに聞いた「新たな取引先の探し方」(複数回答)
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 とはいえユーザー企業にしても、ソリューションプロバイダに期待したほどのスキルがないことに不満を持つ点は同様だ。「ITサービス企業や、業界に感じる不満な点、提言」という質問に対し、「営業担当がいろいろ訪問してくるが、基本的に勉強不足。表層的な業界用語や流行のコンセプトはそこそこ語れるが、肝心の実務レベルになるとまるで要領を得ない担当者がほとんど。“偉大なる素人集団”の感を禁じえない」といった厳しい意見があった。

 このほか、ユーザー企業とソリューションプロバイダに、「新たな取引先の探し方」について調査した。するとユーザー企業は「インターネットでの検索/Webサイトでの問い合わせ」を重視しているが、ソリューションプロバイダは「セミナーや展示会への参加」「同業者同士の口コミ」、さらに「テレマーケティングや飛び込み営業」を重視していることが分かった(図2)。

 ユーザー企業に2008年度のIT投資動向を聞いたところ、「増やす方向にある」「やや増やす方向にある」との回答が合計で約30%を占めた。「ほぼ同じ程度」は43.6%であり、全体では約7割の企業がITT投資に前向きである(図3-1)。ユーザー企業の年商別にIT投資動向を分析すると、特に年商100億円以上が積極的である(図3-2)。

図3-1●7割以上のユーザー企業がIT投資へ前向き、年商100億円以上が特に積極的。2008年度のIT投資額の傾向(有効回答266人)   図3-2●売上高別に見たIT投資の傾向(有効回答266人)
図3-1●7割以上のユーザー企業がIT投資へ前向き、年商100億円以上が特に積極的。2008年度のIT投資額の傾向(有効回答266人)
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  図3-2●売上高別に見たIT投資の傾向(有効回答266人)
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図4●年商10億円を境にIT専任者が急増。IT専任組織・専任担当者の有無(有効回答267人)
図4●年商10億円を境にIT専任者が急増。IT専任組織・専任担当者の有無(有効回答267人)
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 また、ユーザー企業に「IT専任組織・専任担当者の有無」を聞いた結果、年商10億円を境にIT専任者を置いている企業が多かった(図4)。



アンケート調査について

2007 年10 月4日から15日にかけて、日経BP/日経BPコンサルティングのWebアンケート調査サービス「ITpro Research」の登録モニター4119 人に、専用Web サイト上で「IT投資動向とIT サービスに関する調査」を実施した。対象者は従業員1000 人未満のユーザー企業でシステムを導入・活用する立場の方、および中堅・中小企業を顧客に持つSIerやIT ベンダーなどシステムを提供する立場の方。433 人から回答を得られ、有効回答率は10.5% だった。

出典:日経ソリューションビジネス 2007年10月30日号 35ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。