ジャッキー・フェン氏  
米Gartner
バイスプレジデント ガートナー フェロー
ジャッキー・フェン氏

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はすっかり定着した感があるが、それでも相変わらず話題であることは間違いない。「SNSは社内外のコミュニケーションといった業務用途にマッチしている。プロジェクト・ベースの仕事が増えている今ならなおさらだ」。「ITのコンシューマライゼーション」を指摘したガートナーで先端技術の動向を見るアナリスト、ジャッキー・フェン氏はこう強調する。同氏に、SNSの動きとエンタープライズITへの影響、そして注目すべき先端技術の動向について尋ねた。(聞き手・構成は高下 義弘=日経コンピュータ)


Webの世界は相変わらず激動が続いています。2007年はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「Facebook」が話題になりました。2008年はどんな動きに注目が集まりそうですか。

 「MySpace」や「Facebook」といったSNSは一般消費者に広まっていますが、2008年にはビジネス用途にもSNSが広がると見ています。SNSの機能は、プライベートだけでなくビジネスの世界でも大きな力を発揮します。

 その理由は、従来型のコミュニケーション手段に比べて、ちょうど良いサイズの人的ネットワークにメッセージを伝える仕組みとして大変優れているからです。SNSを社内の情報共有手段として使い始めたユーザー企業が少しずつ増えていますが、このメリットに気付く企業はますます増加することでしょう。

「ちょうど良い範囲」で情報共有

 いま企業ではプロジェクト・ベースの仕事が増えています。部署あるいは企業横断型のプロジェクト、ある先端的なテーマについて調べる非公式の社内グループ、小さなプロジェクトのために立ち上げた部署内数人によるグループ、といった形です。

 これらのグループに求められる情報流通のあり方や共有手段を考えてみましょう。限られたグループ内に閉じた情報もあれば、広く社内外に公開した方が良い情報もあります。クローズドな情報とオープンな情報の間に、その公開範囲について様々な“濃度”の情報があるわけです。こうした条件を考えていくと、実はSNSが適した機能を持っているのです。

 多くの一般消費者にSNSが広がっている理由を探っていくと、それがよく分かります。SNSの機能は、自分の思いや意見が家族や友人、あるいは趣味でつながっているグループなど、特定の範囲内に収まっている多数の人々に、一度に効率的に伝わるようになっています。かといって従来型のWebサイトやblogのようにオープンを前提としているわけでもなく、SNSは情報を公開する広さや深さをユーザーごとやグループごとに調整できる機能が備えられています。

 つまり、SNSは従来使われてきた電子メールよりも数多くの人に、かつ効率的にメッセージを伝えられます。また従来のWebサイトやblogに比べると、そのメッセージを共有する範囲をグループという単位で調整しやすくなっているのです。こうしたサイズ感がSNSの魅力です。

 同じオフィス内にいる社員同士はもちろんですが、複数の企業からなるプロジェクト内、あるいは物理的に離れているグループ同士でコミュニケーションを深めるためのツールとしてもSNSは非常に有効です。社横断型のプロジェクトが増える傾向にある今、ますますSNSのメリットは際だってくることでしょう。

史上でも指折りのコミュニケーション・ツール

 最近、社会の様々な要請から、ビジネスの可視化を進めていく必要性が高まっています。そうした面からも、SNSをビジネスに使う局面が増えてくるはずです。

 通常、一緒に仕事をしている特定のグループ内では、情報はパブリックにする方が自然です。絶対にプライベートにすべきメッセージは、そこまで多くはありません。そう考えると、これまでビジネスで使われてきた電子メールや電話といった1対1のコミュニケーション手段は、一緒に仕事をしている周囲のメンバーには見えず、プロジェクトの不透明性を高めてしまうという問題があります。これはプロジェクトを首尾良く成功させる上での障害にもなりかねません。

 そもそもSNSはコラボレーション・ツールとして優れたものですから、積極的、消極的な理由を含めて、SNSはよりビジネスの現場に入り込んでいくことでしょう。もちろん、セキュリティやアクセス管理といった面を強化する必要はありますが、しばらくすれば、これらの機能が付与された製品が登場してくるでしょう。

 MySpaceやFacebookは,おそらく地球上で最も成功したコミュニケーション・ツールの一つではないかと見ています。ITを使ったコミュニケーション手段としては長く電子メールが使われてきましたが、人々は電子メールから少しずつ離れ始めています。SNSを活用している若者は,電子メールは私のようなおばちゃんとコミュニケーションを取る時ぐらいしか使わないのではないでしょうか(笑)。SNSの展開は、そう思わせるほどです。

電子メールの利用頻度は今後大きく減っていくトレンドにあるのでしょうか。ユーザーからは不要な電子メールのやりとりが増えてしまい、逆に生産性を下げているという意見が聞こえてきています。

 ビジネス領域では、「電子メール離れ」はそれほど顕著ではありません。電子メールは相変わらず有効なツールです。ただおっしゃるように、必ずしもベストではない方法論を人に強制している面があるのは事実でしょう。業務のスピードがアップし、業務のスタイルが変わる中、電子メールの非効率性が目立ってきているのは間違いありません。

 一昔前は、ミーティングをセッティングする際にも、電子メールを何度も何度もやりとりしていました。それを解決したのがグループウエアです。電子メールを介在させずに会議ができるような形にしました。SNSやblogがビジネスの現場にもっと入り込むことで、電子メールのあり方は変化していくかもしれません。

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