橋本市民病院(和歌山県)は、電子カルテ・システム導入を機に、院内業務の標準化を進めている。医師、看護師、検査技師、薬剤師、事務員といった職員全員の意識改革・情報共有が進み、地域医療を支えるチームとして運営が軌道に乗り出している。

IT Japan Award 2007

 「電子カルテ・システムは安定稼働しているが、当院における“医療のあるべき姿”への取り組みは、ようやくヨチヨチ歩きを始めたばかりだろう」――。

 和歌山県・高野山の麓にある橋本市民病院で医療情報システム管理者を務める西口孝副院長は、こう謙遜しながらも、電子カルテ・システムを基盤に、院内業務の標準化への取り組みが根付き始めたことに嬉しげだ。

 実際、電子カルテ・システムやPDA(携帯情報端末)を使った患者照合システムなどを導入した2004年以後、橋本市民病院では患者の取り違えや投薬ミスといった医療事故は全く起こっていない。

 また06年には、「災害医療派遣チーム」(DMAT:ディザスタ・メディカル・アシスタンス・チーム)に登録した。DMATは、大規模災害時などに、被災地の医療機関だけでは対応し切れない負傷者の治療を支援するために、医師や看護師、薬剤師などからなるチームである。西口副院長は、「職員がチームとして自発的に動くようになってきた。院内業務の標準化が進み、互いの仕事の中身を共有できるようになってきたことが背景にある」と説明する。さらに07年には、「地域ガン診療連携拠点病院指定」を受けるなど、少子高齢化が進むなかで、地域の命を守る拠点としての機能を高めつつある。ガン治療においても、医師や看護師、薬剤師、放射線技師などによるチーム連携が不可欠だ。

図1●橋本市民病院は、電子カルテを核にチーム医療を推し進める
図1●橋本市民病院は、電子カルテを核にチーム医療を推し進める
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リアルタイム性を求めバージョンアップ

 橋本市民病院が電子カルテ・システムを最初に導入したのは、2004年11月のこと。NEC製パッケージ・ソフト「MegaOak-BS」を使い、診療の予約・受付から、診察、検査、治療、調剤、会計・財務までを総合的に管理。院内においてはほぼ100%に近いペーパレス化、フィルムレス化を実現してきた。

 そのシステムを同院は06年10月に、同じNEC製の「MegaOak HR-BS」にバージョンアップした。MegaOak-BS導入後も、システムに詳しいスタッフと業務に詳しいスタッフが参加する「電子カルテ運営委員会」を2週間に1度開催。加えて個々の問題点を現場にヒアリングしながら掘り下げる「合同ワーキング」を月に1回のペースで開催し続けたところ、「2年間に1140件に上る改善要求が上がってきた」(西口副院長)からだ。

 改善点で最も重要視されたのが、リアルタイム性の向上である。電子カルテ・システムでは、すべての業務が電子カルテ上で進行する。医師が患者に薬を処方するのも、看護師がその薬を患者に投与するのも、電子カルテを開くことで指示し確認する。

 しかし、旧システムでは、医師が出した指示が、指示された側がみずから患者の電子カルテを表示させるまで知ることができなかった。例えば、薬剤を処方した場合、その情報は薬局には伝わるものの、他部署では当該患者の電子カルテを見るまで、その指示が出ていることは分からない。

 そこで新システムでは、「指示出し・指示受け」機能を導入した。サーバー側で集中処理する仕組みに切り替えることで、医師が出した指示を、看護師や医療技師などが了解したのかどうかが、医師側でも把握できるようになった。診療棟と病棟とに分かれて働く医師と看護師らをリアルタイムに結ぶことで、従来にも増して医療の品質を高められたわけだ。

 指示出し・指示受けの機能は、院内のペーパレス化にも貢献している。旧システムでは、病棟に出した指示がリアルタイムに伝わらないため、医師が電子カルテ画面のハード・コピーを打ち出し、病棟に新たな指示が発生したことを知らせる手段に用いていた。

 紙を使っていると、その指示書がいつ出されたかという発生時刻を十分に管理しないと、更新あるいは変更された情報が正しく伝わらない。最悪のケースでは医療事故を引き起こす原因にもなりかねない。新機能によるペーパレス化の追求は、医療の安全の観点からも重要である。

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