JFEスチールは、2000万ステップ規模の新基幹業務システム「J-Smile」を、3年がかりで開発した。競争が激化するなか、機能の追加や修正が柔軟にできるシステムで経営を支えるのが狙い。M&A(企業の合併・買収)では、システムの統合が大きな課題となる。同社はゼロからの再構築という新機軸に挑んだ。

IT Japan Award 2007

 川崎製鉄とNKKが経営統合してJFEスチールが誕生したのは2003年4月のこと。2006年度の粗鋼生産量は世界4位の3283万トン、売上高は2兆9251億円と、好業績を維持している。

 この成長を支えているのが、経営管理、購買、販売、生産、物流といった基幹業務を支援するシステム「J-Smile」だ。本稼働を始めたのは2006年4月。新システムの導入によって業務効率は格段に向上した。「営業部門の粗鋼当たりの生産性が1.5倍に向上するなど、J-Smileは当社の継続的な業務改革を支える基盤となっている」と話すのは開発プロジェクトの陣頭指揮を執った菊川裕幸システム主監だ。

 管理指標データの一元化によって、経営判断の迅速化も実現。ROS(売上高経常利益率)が3.5%から15.5%(2006年度)にまで改善したことの一翼を担ったとする。

写真●2002年5月、「経営統合契約書締結」の記者会見に臨む半明正之 NKK社長(左)と數土文夫 川崎製鉄 社長(肩書きは当時)
写真●2002年5月、「経営統合契約書締結」の記者会見に臨む半明正之 NKK社長(左)と數土文夫 川崎製鉄 社長(肩書きは当時)

 企業の合併によってシステムを統合する場合、一般には旧2社のどちらかのシステムをベースに片寄せすることが多い。だが、JFEスチールは、あえてゼロから開発し直すという道を選択した。

 なぜか。鉄鋼業界は世界規模での統合や再編が進み、競争が激化している。高付加価値商品の開発・提供などを加速させる一方で、財務状況を把握しながら即断即決の意思決定が不可欠となる(図1)。経営陣からは「ビジネスの変化に応じて、素早く修整できるシステムが必要」という要請が上がった。こうした状況下、旧2社のシステムはいずれも20年以上が経過しており、どちらかに片寄せして再構築するのでは効果は薄いと判断。システムの柔軟性を最優先して、ゼロから新規開発することを決断したのだ。

図1●“フットワークの軽い”重厚長大産業を目指す
図1●“フットワークの軽い”重厚長大産業を目指す

 「変化に強いシステム」をどう実現するか。JFEスチールがここで打ち出したのが、DOA(データ中心アプローチ)を徹底するという方針だ。「システムの根幹はデータ設計にある。ここがしっかりしていないと、業務プロセスが変わるたびにデータ構造にも手を加えなければならず、修整に時間がかかる。結果として経営の足かせになってしまう」(菊川主幹)。さらに、Javaによる開発、徹底した部品化などの基本方針を策定した(図2)。

図2●柔軟性の高い情報システムを実現するため、ゼロからの開発に踏み切った
図2●柔軟性の高い情報システムを実現するため、ゼロからの開発に踏み切った

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