ソリューションプロバイダの人材育成担当者から大きな支持を集める公的/非ベンダー系資格だが、営業効果の面ではすべての資格で評価が高いわけではない。調査ではそれぞれの資格について営業効果の有無を尋ね、「営業効果あり」の回答比率から「営業効果なし」の回答比率を差し引くことで営業効果を数値化した(表1)。

表1●営業効果の高い上位20資格(公的/非ベンダー系)
営業効果の高い上位20資格(公的/非ベンダー系)

 営業効果が高い資格と技術職に取らせたい資格は、傾向がほぼ一致する。営業職に取らせたい資格は逆で、取らせたい資格ほど営業効果は低くなる傾向がある。例えば、今回最も営業効果が高かった情報処理技術者試験プロジェクトマネージャは、技術職に取らせたい資格でも首位。一方、営業職に取らせたい資格で首位だった情報処理技術者試験基本情報技術者の営業効果は、20位に沈んでいる。

 基本情報技術者はプログラミング言語や開発手法に関する内容が出題されるなど、営業活動とは直接的なかかわりが少ない。それでも、「新人なら取得して当たり前の資格」(TDCソフトウェアエンジニアリングの田辺茂雄人事部人材開発課課長)というのが、ソリューションプロバイダが共通して持つ基本情報技術者に対する“レベル感”。このため、各社は「営業であってもプログラミングや開発手法の知識をベースとして持つべき」(情報技術開発の仁科昌治人事本部人材開発部部長)との方針で同資格の取得を促しているようだ。

ITCの営業効果が大幅に下落

 大半の公的/非ベンダー系資格の営業効果が、前回調査からポイントを押し上げている中、PMPと「ITコーディネータ」(ITC)の“停滞”が目立つ。実は、前々回の調査でこれら二つの資格は、情報処理技術者試験プロジェクトマネージャと並んでトップ3を占めていた。ところが直近2年で評価が分かれ、今回の調査でポイントが急伸した情報処理技術者試験プロジェクトマネージャに対してPMPはやや下落、ITCは2年前の80ポイントから63ポイントへと急落してしまった(図1)。

2005年10月の調査でトップ3だった資格の営業効果の推移
図1●2005年10月の調査でトップ3だった資格の営業効果の推移

 背景にあるのは、費用対効果に対する見直し機運の高まり。5100円の受験料だけで済む情報処理技術者試験に比べると、ITCとPMPの取得にかかる費用の大きさが際立つ。ITCの場合、受験料は2万1000円かかる。ただし、認定を受けるには試験の合格後、受講料52万5000円の研修を受講することが前提条件になる。PMPも、受験前に所定の研修か教材で35時間の学習が義務付けられている。さらに、どちらも3年おきに更新手続きをしないと消滅してしまい、手続きには手数料がかかる。これらの費用は、会社で実費を負担するケースがほとんどだ。

 見直し機運は、特にITCで強い。もともとITCは、中小企業を上流工程から囲い込むうえで効果が高いと見られていた。しかし、大企業を中心にIT投資が活発化している現在、中小企業市場の開拓に関心を持つソリューションプロバイダは少なくなり、結果としてITCの費用対効果が問われ始めた可能性がある。

 当初の期待が大きすぎたことも、見直し機運を高める背景となったようだ。アイエックス・ナレッジの子会社でグループ企業の人材育成を一手に担うIKI アットラーニングの松井睦子教育ソリューション事業部事業部長は、「ITCで勉強したことは顧客の要件整理に有効だが、それは営業活動のほんの一部でしかない」と指摘する。

 アイ・ティ・フロンティアの倉持康明人財グループ人財マネジメントユニット長兼人財育成セクション長は、「中小企業をターゲットにするなら、ITCよりも中小企業診断士の方が役立つ」と話す。今回の調査で中小企業診断士の営業効果がITCを上回ったのも、こうした認識が業界で広がっているからだろう。

 一方、PMPは前回調査と比較すると5ポイント減少。しかし、前々回調査とほぼ同じ水準を維持している。プロジェクトマネジャー育成の具体的な目標数値として、PMPの資格取得者数を掲げるソリューションプロバイダは多い。年1回しか受験機会がなく、論文形式が中心となっている情報処理技術者試験に比べると、PMPは年間を通じて受験できるうえ、回答も選択方式。PMPの方が比較的取得しやすいからだ。

 費用面の負担が大きいためか、営業効果で情報処理技術者試験プロジェクトマネージャに水をあけられたPMPだが、依然として一定の評価があるのは間違いない。

新たに追加した資格もランクイン

 公的/非ベンダー系資格では、今回の調査で新たにITPS、ITIL資格、「SEA/J情報セキュリティ技術認定」「ISMS審査員」「ITSMS審査員」の計5種を新たに追加した。このうち営業効果の上位20位にランクインしたのは、56ポイントのITIL資格、52ポイントのISMS審査員、28ポイントのITSMS審査員だった。

 ISMS審査員は、情報の管理体制を整えたり、それを支援したりする人材の育成を目指した資格。上位20資格にランキングした理由は、内部統制がらみの案件が増加したことで必要とされる機会が増えたからと見られる。

 ITIL資格とITSMS審査員は、いずれもシステムやサービスの運用管理者や、それを支援する人材を育成するための資格。運用体制の改善支援など新たなサービスを提供する人材の育成に好都合なほか、ユーザー企業側でも認知度が向上していることが営業効果を高めたものと見られる。

 ITIL資格とITPSは、営業職に取らせたい資格にもランクインし、それぞれ9位と5位に付けた。ITPSについては、「ソリューション提案型の営業担当者を育成するには、有効な教材になりそうだ」(TDCソフトウェアエンジニアリングの田辺課長)という意見もある。次回の調査で営業効果の上位にランキングする可能性は高そうだ。

出典:日経ソリューションビジネス2007年11月15日号 24~34ページ
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