テスト管理ツールを導入する際には主に二つの課題がある。一つは「テストプロセスの整備」,もう一つは「価格」だ。導入に当たっては,こうした課題を解決するための工夫が必要である。

[使う]現場を混乱させない,テスト手順に工夫が必要

 例えば,日立製作所は1999年からテスト管理ツールを導入し,すでに450のプロジェクトで利用実績がある。利用するのは「QE-EXPERT」と呼ぶ同社製のテスト管理ツール。リポジトリ機能や自動テストの実行管理機能は持たないが,多様な集計/分析機能を備える。

 導入過程で特に問題だったのは「テストプロセス」の確立だった。メンバーがテスト情報をいつどのような形で入力するか。それを明確にしなければ,集計結果の信憑性が失われる。そのため「テスト担当者はテスト実施後に確実にテスト結果を入力するようプロセスに明記した」(金融システム品質保証部 担当部長 大石晃裕氏)。

 大石氏は,テスト情報を入力するメリットを現場で共有することも重要だと指摘する。「管理ツールはどうしてもトップダウン的な導入になる。ツールを根付かせるには,ドキュメント作成が楽になるとか,仕様変更時の影響範囲が特定しやすくなるといった開発側のメリットを共有する必要がある」。

 2005年末,日本IBMのテスト管理ツール「IBM Rational TestManager」を導入したテンアートニの山崎氏も,テストプロセスの重要性を訴える。「自動テストの実行管理機能を利用して毎晩機能テストを実施するには,開発者が毎日決まった時刻までにビルドする必要がある。開発作業の手順や出勤形態も見直さなければならない」。現場での混乱を避けるために山崎氏は,あえて従来のテストプロセスを大きく変えず,テストスクリプトの生成とテストの実行という二つの作業を自動化し,テスト管理ツールはテスト情報の一元化とレポート作成のみに利用した。

 その上で,ツールの利用方法を指導する専任のサポート担当者を置いた。サポート担当者は,約80人いる開発者に対して,自動テストツールやテスト管理ツールの利用法などを支援する。「今後は要件定義ツールを連携させたり,国内や海外に分散する開発拠点に対してテスト管理ツールの実行管理機能を使って統合的に自動テストを実施したりしたい」(山崎氏)という。

 「価格が高い」という問題はどうか。最大シェアを持つMercury Quality Centerのライセンス価格は,最小構成(5ユーザー)で480万円。これにサーバーやRDBMSも必要になる。プロジェクト単体での導入は,採算が合わない場合が多い。このため現状ではユーザー企業が複数プロジェクトを統合的に管理するために導入するケースがほとんど。

 投資対効果については,テスト管理ツールの様々な利点を引き出してこそ見合ってくる。中には,e-Manager Enterpriseのように,不具合管理機能に絞ったライセンス体系を用意し,通常の6割弱の価格で利用できる製品もある。また,IBM Rational ClearQuestやQADirectorのように,最小構成が1ユーザーからという製品もある。こうしたライセンスを上手に組み合わせることで,全体のコストを抑えられる。

出典:日経SYSTEMS 2006年9月号 107ページより
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