「地上デジタル放送の次世代コンテンツ保護技術では,チューナーを内蔵したDVDレコーダーなどで番組を録画した後に,最大9回まで番組をコピーできるようにすることが適当である」──。総務省は2007年8月2日,デジタルコンテンツの流通の促進に関する中間答申を,情報通信審議会から受けた。情通審は今回の中間答申に,現行の「コピーワンス」方式に代わるコンテンツ保護技術として,録画番組のコピーが9回まで可能な「コピーナインス」方式を提案した。今後,放送事業者はこの方式に対応した地上デジタル放送の準備を,家電メーカーはこの方式に対応した受信機の開発を,それぞれ進める見通しだ。

 これまで情通審は,地上デジタル放送の次世代保護技術についての議論を,情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」で行ってきた。今回の中間答申には,同委員会で出た意見の内容が明記された。例えば地上デジタル放送のコピー制御の在り方については,「デジタルコピーは画質が劣化しないためコピー制限を設けることが不可欠」といった意見が盛り込まれた。これまでの検討経緯が掲載された背景には,コピーナインス方式の導入によって実演家などの権利が侵害される事態が発生した際の備えをしておきたいという権利者団体の意向があるようだ。権利者団体の関係者もコンテンツ流通委員会にメンバーとして参加し,これまでの会合で権利者を保護する視点から次世代コンテンツ保護技術に関する意見を述べてきた。2007年7月12日の第19回会合では,村井純主査がコピーナインス方式の導入を提案したのを受けて,権利者団体関係の委員は「村井主査の提案を尊重する」という趣旨の発言をしている。

 ただ権利者団体は,今回のコピー回数はあくまで暫定的なものと受け止めている。コピーナインス方式を受け入れるには,楽曲や動画などのコンテンツをデジタル方式で保存できる記録媒体やデジタル機器の購入者に補償金の支払いを義務付ける制度である「私的録音録画補償金制度」の存続などが前提条件になるとしているからだ。これらの前提が崩れた場合は,コピー回数について議論する場を再び設ける必要があるという姿勢を示している。

 権利者団体の関係者も参加したコンテンツ流通委員会の意見を反映させた情通審の中間答申に,「デジタル放送の次世代保護技術にコピーナインス方式を採用する」という結論だけが書いてあれば,権利者団体は自らが容認した方式を覆したと判断されかねない。このためコピーナインス方式が,権利者団体の関係者の譲歩によって打ち出されたということを示す必要がある。このため権利者団体はコンテンツ流通委員会を通じて,情報通信審議会の中間答申にこれまでの検討経緯を掲載させた。このような背景を考えると,権利者団体が存続を主張する「私的録音録画補償金制度」の不要論が浮上した場合に,コピーナインス方式が見直される可能性がありそうだ。