前編で紹介したリアルタイム日記と並んで,女子高生の間で大流行している「プロフ」。かつての出会い系サイトのように性犯罪の温床となることを懸念する声も聞かれるが,その実態はどうなのか。後編では,このプロフを中心に,少女達のコミュニケーション上の問題点や,ソーシャル・メディア全般に指摘される反社会的な傾向について考えてみる。


 リアルタイム日記と並んで少女たちの間で流行しているのが「プロフ」である。といっても,プロフは既に2005年頃から使われ始め,2006年に一気に広まって,今や彼女たちの間では「持っているのが当たり前」という存在のようだ。女子高生のライフスタイルを専門に調査するブームプランニングによれば,日本の女子高生の6割近くがプロフを所有しており,首都圏では実に7割以上にも達するという。ちなみに全く同じ名称ではないかもしれないが,プロフと似たようなものは韓国や北欧をはじめ,諸外国でもよく使われているようだ。

 
写真1●プロフの画面
プロフとは「プロフィール」の略で,経歴など自己情報を載せる携帯ホームページのこと。写真提供はブームプランニング。
 プロフとは「プロフィール」の略で,その名の通り,経歴など自己情報を載せる携帯ホームページ(HP)のことだ。誰でも登録して使うことができ,以前の利用者は圧倒的に女子高生が多かったが,最近は中学生にまで下りてきている。プロフはいずれも中小の業者が提供しているサービスだが,その中でも「前略プロフィール」や「マイプロフィール」などが,よく知られている。そこには氏名,年齢,住所から「好きな食べ物」や「好きなタレント」まで,多種多様な質問事項が用意されている。

 これらの中には「手の長さは?」といった奇妙な質問や,「喫煙の有無」など高校生には不適切な解答欄もある。こうした質問は40~100項目にも及ぶが,彼女たちの多くが几帳面にも,それら全てに答えを書き込む。中には「好きなものは?」という質問に,「焼酎」などと回答する少女もいる。またプロフのトップにはたいてい,当人の顔写真が掲載される(写真1)。

 その結果,ある女子高生の実に詳しい自己PRページが出来上がることになる。彼女たちはそのアドレスを,クラス替えのときなどに,携帯電話の赤外線機能を使って,お互いに交換する。ちょうど会社員が名刺交換するようなものだが,彼女たちが交換するものは,名刺とは比べ物にならないほどの大量の個人情報を含んでいる。その潜在的な危険性については「高校3年生にもなれば,ある程度は理解しているが,それを知らない1年生だと,ありのままの自分を(プロフ上に)出してしまうケースもある」(ブームプランニング代表取締役の中村泰子氏)という。

出会い系サイトのような性犯罪までには至らないが,親たちの不安は募る

 プロフは個人に割り振られたHPアドレス上に記載されているので,それを知ってさえいれば,物理的には誰でも見ることができる。基本的には女子の間でアドレスを交換するが,合コンなどでは男子とも交換する。また,ときにはゲストブックも見せ合うので,友達の友達も分かってしまう。それが男女交際までつながることもあるし,いわゆる出会い系サイトのように使われるときもある。従って,ある少女に関する詳細な個人情報が,第三者の手に渡る危険性は当然ある。このため,プロフの使用を禁止する高校もある。しかし意外にも,プロフが出会い系サイトのように,性犯罪の温床と化している様子は今のところない。その理由を中村氏は次のように見ている。

 「プロフが使われるのは,高校生に限られている。彼女たちはそれを,親にも教師にも,アルバイト先の店長にも教えない。あくまでも同世代の子供同士の,手っ取り早いコミュニケーション・ツールとして使われている。つまり完全に閉じたネットワークを形成しているので,見知らぬ大人の介在する余地がない。それでも万一,おかしな人からメールが来るようになると,彼女たちは素早くメール・アドレスを変えてしまう。その辺の回避術,処世術には長けている」。

 とはいえ,最近はプロフに掲載した写真が「2ちゃんねる」に勝手に転載されたり,プロフのレスポンス欄に中傷が書き込まれることもあるという。また,誰かが別人になりすましてプロフを作成し,わざと周囲の恨みを買うような虚言を書き込んだり,あるいはプロフから「学校裏サイト」にリンクを張られてネット上でイジメに遭うといった問題も発生している。さらにはヒット数を稼ぐために,セミヌードなど際どい写真を掲載するプロフもある。このように,やや評判が悪くなったせいか,プロフが始まった当時は載せるのが当然だった顔写真も,今の掲載率は6割程度に落ちたという(図1)。

図1●プロフへの顔写真の掲載状況(N=90)
約6割がプロフに自分の顔写真を載せている。「以前は載せていたが今は載せていない」との回答は2割程度。2007年5月に女子高生を対象に調査。ブームプランニング調べ。

 また当初はプロフの存在を知らなかった大人たちも,最近はそれが新聞やテレビなどで取り上げられる機会が増す中で,何だかよく分からないけれども,漠とした不安感を募らせている。たとえば最近,ある父親が新聞に書かれていたプロフの記事を読み,「どうやらウチの娘もやっているようだ」と心配して,ブームプランニングに問い合わせの電話をかけてきたという。しかし,この男性は記事で紹介されていたプロフのことが全く理解できなかったので,そもそも何を質問したらいいのか分からなかった。このため「娘に向かって(プロフの)何を気をつけろと言えばいいのか。それさえも分からないので不安で仕方がない」と同社スタッフに訴えたという。物事の実態が分からないと,人は余計に不安になるようだ。

 さらに,娘がプロフやブログなどにうつつを抜かす余り,学力低下を懸念する親もいる。もっとも,その点はそれほど心配することはないと専門家は見ている。

 「確かに手で書く機会は減っているので,漢字が書けなくなっているかもしれない。しかし逆にメールを出したりWeb上で日記を書いたり,文章を書く機会はむしろ増えている。ブログで叙情的な文章を書く子らをターゲットに,携帯小説をメインにしてサイトの売り上げを伸ばしている業者もある。とにかく自己表現に関しては,これまでの大人がやらないことを今の高校生はやっている。ネットワークを広げることを最優先し,自分のホームページも競うように回している。そんなことにばかり時間を取られていいのか,という批判もあるだろう。しかし大人が思うほどに,携帯の操作には時間がかかっていないので,学業の妨げにはなっていないと思う」(中村氏)。

人付き合いをショートカットする

 実際,携帯の操作には熟達しているので,メール・アドレスを頻繁に変更することなど,最近の少女たちは何とも思わないようだ。むしろ,それによって友達の整理やあいさつができるので好都合と見ているのだという。操作が速いので,一気に300通くらい「お知らせメール」を出すことはほとんど気にならない。また嫌な人からメールが来るようになると,アドレスどころか携帯電話を買い換えてしまう。こうして人脈を整理する一方で,プロフの内容はこまめに更新している。

 「今のヴィヴィッドな気持ちを表すのが基本なので,一回(プロフを)作ったら,そのままにしておくことはない。その内容を見ると,『今,こういうことを感じ,こういうことで悩んでいるな』というのが手に取るように分かる。いきなり『好きな男の子は』という項目の文章が全部消えていたら,『ああ,別れたんだな』ということまで分かる」(中村氏)。

 このように,最近の少女たちのITリテラシーは大人以上に高いが,一方で対人コミュニケーションの能力は低下しているという。プロフに問題があるとすれば,むしろその点を助長していることではないか,と中村氏は指摘する。「塾やおけいこごとで忙しい彼女たちにとって,プロフで手っ取り早く相手を理解しようとするのは,ある意味で合理的かもしれない。しかし,そんなものだけで人を判断し,付き合う相手を限定するのはどうかと思う。人付き合いの方法をプロフでショートカットしているとも言え,このまま大人になるのはちょっと心配だ」(中村氏)。

 中村氏によると,実際,彼女たちと話してみると誰かと面と向かってのコミュニケーションが極めて苦手だという。たとえば叱られたり,注意されたりするのを極端に嫌がる。携帯で相手との間に,ワンクッション置くことに慣れているからだ。

 またプロフを使う少女たちの中には,違うものを何種類か用意し,付き合う相手によって使い分ける子もいるという。「こっちのグループに対しては,自分のこういう面を見せる」という姿勢だ。自分という人格の多面性を理解し,異なる人間関係に応じて,その中の一面を押し出して行く。このように自己表現には腐心する一方で,相手にはあまり関心を示さないという。

 「今の少女たちの会話を聞いていると,自己中心的で自意識過剰の面を強く感じるときがある。たとえば会話の中でキャッチボールがない。自分を見せるだけで,相手の話を聞こうとしない。そうした中でプロフが登場し,彼女たちに受け入れられたのではないか」(中村氏)。

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