第21回参議院選挙が2007年7月29日に行われ,民主党の圧勝に終わった。今回はその選挙報道を実際に視聴して気付いたことを考えてみたい。また,衆議院で継続審議となっている「放送法改正案」についても,今後の動向を述べたい。

 地上波放送事業者の本質は報道制作にあるといっても過言ではない。災害報道と選挙報道は,その最たるものであろう。民放キー局を中心にして各系列の報道協定に基づくニュースネットワークが存在し,各系列局の取材映像がキー局の報道センター(報道スタジオや素材センター)に集まってくる。その映像に全国の選挙区の出口調査結果などのデータと素材映像が組み合わされて,選挙特番が制作される。

自社制作能力が問われる選挙中継

岩手放送(IBC)の本社
写真1●岩手放送(IBC)の本社
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 筆者は今回の参議院選挙の開票速報番組を,岩手県で視聴した。岩手県は民放4局体制の地域であり,小沢一郎・民主党代表の故郷でもある。衆議院・岩手1区の補欠選挙も同時に行われ,どちらも民主党の候補が圧勝した。

 午後11時すぎになると両当選者が,岩手放送(IBC,TBS系列,写真1)や岩手めんこいテレビ(IMT,フジテレビジョン系列)のスタジオに出演した。TBSやフジテレビからのキー局映像に対して,各系列局が割り込みで地元の選挙報道番組を10分以上の長さで放送していた。全国放送の視聴率を考えると,どうしても午後11時をすぎなければ難しいといった事情があるのだろう。当選者の「万歳映像」だけでなく,各地区の当選者のロングインタビューをいち早く視聴者に伝えるといった取り組みがあってもよかったと思う。




「ワンセグ」が威力を発揮した選挙戦

 今年の選挙報道で特徴的なことは,全国すべての都道府県庁所在地で地上デジタル放送が視聴可能となってから初の選挙戦だったという点だ。特に,携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」の速報性が威力を発揮したといえる。

ワンセグによる選挙速報の画面
写真2●ワンセグによる選挙速報の画面
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 投票日に所用で盛岡市にいた筆者は帰京のために,午後7時すぎに列車に乗った。まずワンセグでNHKのニュースを見て,選挙戦の概要を知った。盛岡駅から30kmぐらいの地点までは,ワンセグの電波を発信している盛岡市内の親局に面した窓側の座席に座った。選局したのは,時々ブロックノイズは出たが視聴に耐え得るテレビ岩手(ITV,日本テレビ放送網系列)だった。午後8時少し前には「選挙結果予測」を目にして,ワンセグの速報性の威力を見せ付けられた(写真2)。

 ヤフーのメールニュースやKDDI(au)のEZフラッシュニュースでは,具体的な数字が伝わってきたのはかなり遅くなってからである。移動中に視聴できるワンセグの臨場感は,インターネットとは比較にならないパワーがある。ただし親局からの電波をさえぎるものがほとんどない条件での受信を前提にした話であり,それから10分後には岩手県の系列局のワンセグは全く受信できなくなってしまった。

 岩手県では今回の選挙戦が,束稲山(約600m)の山頂に設置される地上デジタル放送の一関中継局の試験運用期間と重なった。そこでアナログ放送への電波干渉を回避するために政見放送終了後から,アナログ放送と同一の番組を放送(サイマル放送)することになったという。一関中継局の本格運用の開始は,8月20日を予定している。それでも岩手県の地上デジタル放送のカバー率(現在の地上アナログ放送のカバーエリアに対する比率)は,60%程度にとどまる。デジタル放送への完全移行までには,衛星を用いた補完的手段などを講じる必要がありそうだ。

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