写真●吉本 和彦氏 理事 常務執行役員
写真●吉本 和彦氏 理事 常務執行役員  (写真:佐藤 久)

 郵政公社は、グローバルかつベストなソリューションを求めている。

 公社は職員数25万人の巨大企業。しかし全員が国家公務員のため、民間企業の仕事を全く分かっていない。職員は収入印紙を販売するけれど、実際の実務でそれをどう使うかは理解していない。交際費がゼロの職場環境では、営業の経験もない。

 本来ならシステムを導入するよりも先に、民間企業の仕事を覚えるところから始めるべきだろう。しかし、そこから始めていては10月の民営化に間に合わない。職員の意識改革とシステムの導入を同時並行で進める必要があるのだ。

 そこで既に出来上がっているシステムをそのまま導入し、その使い方に沿って民間の仕事を覚えてもらうのが最善策だと考えた。郵政公社の財務システムに SAPのパッケージ製品を採用し、郵便局の窓口業務でセールスフォース・ドットコムのASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスを採用したのは、そういう考えがあったからだ。SAPのパッケージ製品とセールスフォースのASPサービスは一切、カスタマイズを加えていない。

 ただし、出来合いのソリューションなら何でもいいというわけではない。私は「民間企業に追い付け」と言っているけれど、本心では「追い抜いてやろう」と思っている。民間の業務を何も知らないゼロの状態からスタートしてトップを狙うには、「グローバル」で「ベスト」なソリューションをそのまま使うことが手っ取り早いはずだ。

 もちろん、それが国産ベンダーでも構わない。最近、7万ページにも及ぶ事務手続きのマニュアル検索システムを国産ベンダーのソリューションで構築した。特許庁への導入実績を持つソリューションだが、一番いいと判断したから採用を決めた。

 グローバルでベストなソリューションを、ITベンダーだけに求めるつもりはない。例えば、ゆうちょ銀行の基幹システム。今回は旧UFJ銀行のシステムの使用許諾権を持つ日立製作所から購入すると決めたが、仮に他の銀行が直接売ってくれるということであれば、そちらから購入してもよかった。

 つまり、いいソリューションを持つところと付き合いたいということ。霞が関にやってくるITベンダーの営業は「言われた通りに作ります」と言う担当者が多い。はっきり言って、そんな担当者は相手にしない。

 今後は、郵便局の運営会社や郵便物を集配する郵便事業会社のIT化を進める。その中で関心を持っているのはSOA(サービス指向アーキテクチャ)。郵便局では今後、窓口で扱う金融商品がどんどん増えていく。将来は自治体の窓口業務も代行したい。こうした業務の変化に応じて、いいソリューションをタイムリーに取り入れていくには、基盤がSOAになっていないと実現できない。

 実際にいろいろと検討している。大手ITベンダーも製品を提供しているが、それを採用するとソリューションの選択肢が狭まってしまうのではないかと危惧している。(談)

出典:日経ソリューションビジネス 2007年7月30日号 9ページより
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