吉本俊宏
WEBマーケティング総合研究所
代表取締役

 中小企業の経営者の一番の悩みは「人材がいない」ことだろう。「パソコンを活用したいけれど、社内に専門家がいない」。これは多くの経営者に共通する悩みである。社内にコンピューターの専門家がいないと、どのようにパソコン利用を進めていいか分からないだろうから、社長が途方に暮れるのも仕方のない所ではある。

 専門家を雇おうとしても容易ではない。近年、コンピューターに詳しい人材は引く手あまただ。こう言う人材を採用しようとすると結構な人件費を払わなければならない。一般的にシステム系の優秀な人材を採用しようとすると、最低でも年収700万円は用意しなければならない。

社長に贈るPC活用に失敗しない七原則

原則一・社員への投資が最重要
原則二・“キーボード+ディスプレー”は文化の革命
原則三・パソコン導入は2年計画で
原則四・電子メールの活用から入る
原則五・作業効率の向上に取り組む
原則六・目指せ!新規顧客獲得・新市場開拓
原則七・外部の専門家を活用しよう

 しかも、パソコンに詳しいだけの人を、コンピューター利用の専門家と間違えて採用してしまうと後で大変苦労する。コンピューターに詳しい技術者の中には、他人とコミュニケーションを取るのが苦手な人もいる。こうした人は、子供の頃からテレビゲームに熱中し、コンピューターのプログラムを作るのは好きで長けているものの、自分一人で仕事をしたがる。こういうタイプを採用すると、なかなか会社にとけ込まず、社長が気を遣うことになる。

 本当に優秀な技術者というのは、どうすればコンピューターを利用して周りの人の仕事を楽にできるか、売り上げに貢献できるか、といったことを常に考えている人達である。彼らにとってパソコンはあくまでも会社を良くしていくための手段にすぎない。そしてパソコンを利用して会社の事業に貢献するために、積極的に周囲に働きかけ、周りを引っ張っていくことができる。

 中途採用が難しいなら、社員を教育して「優秀な技術者」に育ててはどうだろうか。これはもっとも難しい。社員が50人以上いる会社なら、システムの専門組織を設けて、そこにシステム担当の社員を2~3人配属する事ができるかもしれない。もう少し規模の小さい会社は、社員をコンピューターの専門家に育て上げるのは止めた方がよい。

 そもそも社員に優秀な技術者がいないわけだから、社員を教育できる人がいない。外部の研修を受講させるしかないが、なかなか優秀な技術者は育たない。さらにコンピューター関連技術は変化が大変早いため、技術者としての寿命は何もしないでいると5年前後で終わってしまう。常に技術を追いかける努力をさせないと、せっかく育てても5年位で技術者としての価値は急減してしまう。

 一番の問題は、それでなくても人材に乏しい中小企業で、優秀な人材をコンピューターの専門家にすると言うことは、本来人材を重点配置しなければいけない部門に人が回せないと言うことである。優秀な人材でないとよいシステムは作れないが、数少ないエースを取られてしまうと本業の方が傾いてしまうだろう。

 したがって、社外の専門家を活用するしかない。例えば経理処理や、期末の決算処理をするにあたっては、税理士事務所と契約して、税務相談や決算処理をお願いしているはずだ。経理や税務という、本業ではない部分は外部を活用するわけだ。税務や会計はかなりの専門知識が要求されるが、だからと言って社員に税理士の資格を取らせたり、外部の税理士を社員として採用したりはしないだろう。

 コンピューターも同じである。社内に専門家を抱えなくても、外部を上手く活用すればよい。外部のコンピューター会社と顧問契約をするなり、必要に応じてシステム開発を委託するなりして、なるべく外部の人材を有効活用していく。

 再三述べてきたように、社員のパソコンスキルの向上は必要である。「パソコンを使えること」と言うのはビジネスマンとしての基礎技能になりつつあるのだから。だが「コンピューターシステムを作ること」までは普通のビジネスマンに求められていない。こういう特殊なスキルが必要な部分は、外部に任せればいい。

 経理でいえば、日々の精算や記帳ができる経理担当者は必要だが、毎年の税制改正の内容を熟知して決算処理や税金対策を完璧にこなせる人材を社内に抱える必要はないだろう。パソコン操作ができて、自分の仕事を楽にするアイデアを出すコンピュータースキルは必要だが、自社の販売システムや生産システムを構築する、といったところは外部のコンサルティング会社やコンピューター会社に依頼した方がよい。

 つまり、経営者がよく悩みとして挙げる「社内にコンピューターの専門家がいないので、我が社のシステム活用はなかなか進まない」ということは、正しい悩みではない。社内に専門家を抱えるのではなく、外部の専門家を活用するのである。「社外のコンピューター専門家に仕事を頼みたいが、いい人を知らないだろうか」、「外部のコンサルタントをどうすれば上手く活用できるだろう」いった、悩み方が正しいのである。

 そこで次回は、外部のコンピューター専門家を活用する時のポイントについて述べてみよう。


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吉本俊宏(よしもと としひろ)
株式会社WEBマーケティング総合研究所 代表取締役 ブログdeホームページ経営塾あきばれネット 主催
・1964年神戸市生まれ。1988年一橋大学商学部卒業。三菱東京UFJ銀行入行。約10年にわたり、基幹システムの企画、設計、開発を担当。
・1997年、野村総合研究所に転職し、国内大企業のコンサルティングを数多く手掛ける。
・野村総合研究所時代に、セブン銀行の設立にかかわり、2001年より同社に出向、インターネット戦略を立案。
・2002年、独立し、WEBマーケティング総合研究所を設立。中堅・中小企業がインターネットを簡単に利用できる「ブログdeホームページ」サービスを提供する。
・主催する「ブログdeホームページ経営塾」の会員数は2007年7月現在2万5000人。