安達一彦
インテリジェント ウェイブ
取締役会長


 日本生まれのソフトウエアを、本場アメリカになんとしても売り込んでみたい。こうした思いから、ニューヨークに現地法人を設立し、その陣頭指揮を執るため、生活の拠点をニューヨークに移して約3年になります。起業する前は、外資系コンピューター会社に務めており、アメリカのことを自分なりに理解しているつもりでしたが、実際に住み、生活し、仕事に取り組んでみると、日々発見があります。本欄を借り、筆者が気が付いた諸事についてお伝えしていきますので、よろしくお願いします。

 5月21日付のニューヨークタイムズに、ニューヨーク市の驚くべき所得格差の実態が書かれていました。ニューヨークには約800万人が住んでいます。その内、約70万人が100万ドル(1.2億円)以上の資産を持っています。ブルンバーグ市長は少なくとも7000億円から最大で2兆4000億円位を持つ資産家だそうです。また、ヘッジファンドのマネジャーの平均年収は400億円を超えると書かれています。もっとも、どのレベルの人をマネジャーというのか不明ですが。

 我社の株主であるニューヨークのA社は約60兆円の資産を運用しています。それでもニューヨークにあるファンドの中にあっては、5位か6位の規模です。日本にあるすべてのファンドを合計しても50兆~60兆円と言われていますから、ニューヨークのファンドは段違いに大きい。こうした巨大資産を運用する人の技術によって、利益に大変な差が出るわけですから、400億円程度の給料は当然なのかもしれません。「給料」という言葉にまったくそぐわない金額ですけれども。

 ファンドマネジャーたちは極端な場合、資産運用のための解析プログラムを毎日、書き換えています。将棋を指すためのコンピュータープログラム同士の戦いのようです。そして情報技術の助けによって、資産の運用技術が非常に発達しているために、世界中のお金がこのマンハッタンやボストンに集まってくるわけです。私が知っているボストンのヘッジファンドのボスは、「私が日本に住めば所得ナンバーワンになりますね」と先日笑いながら話しておりました。ニューヨークタイムズの記事は事実なのでしょう。

 ではニューヨークに住んでいるのは金持ちばかりかというと、勿論そうではありません。ニューヨーク市には五つのボロー(区)があります。マンハッタン、クイーンズ、ブルックリンといった辺りは日本でも良く知られていますが、ブロンクスはあまりなじみが無いと思います。マンハッタンの北に位置していて、ヤンキースタジアムがあるところです。このブロンクスは全米で一番所得の低い街だそうです。

 ニューヨーク市の800万人のうち150万人が、連邦政府の決めた貧困層以下の生活をしています。フードスタンプ(食料品を買うときに割引になったり無料になったりするクーポン券)をもらっている人はなんと100万人。もらってはいないが、受け取る資格のある人が他に70万人もいるそうです。

 ニューヨーク市に住んでいる子供たちは半数しか高校を卒業しません。大学となるともっと狭き門です。アメリカの大学の授業料は日本よりもかなり高く、中間所得の人でも子供を大学に通わせ、卒業させることは大変です。有名私立大学ともなれば、授業料は年間数百万円します。先日、私の友人の御子息がニューヨーク州立大の医学部を無事卒業されました。友人であるお父さん曰く、「卒業までざっと7000万円掛かりました、これで一息つけます」。この方は日本人ですが、マンハッタンのビルのオーナーで資産家です。

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