モバイルWiMAXの料金は月額2000~3000円--事業者の間でこのようなシミュレーションが進んでいる。

 といっても,これは固定系地域バンドの話。2.5GHz帯には移動利用を想定した全国バンドだけでなく,固定通信用の地域バンドが用意されている。免許方針案では10MHzの帯域幅を市区町村ごとに割り当てる方針である。第3世代携帯電話(3G)事業者とそのグループ会社を対象外とする方針は全国バンドと同じ。通信方式はモバイルWiMAXと次世代PHSの2種類が対象となっている。

 総務省はこの固定系地域バンドを,デジタルデバイドの解消や地域公共サービスの向上に役立てる狙いがある。免許の交付に当たっては,「デジタルデバイドの解消や地域の活性化に貢献できる事業者を優先する」(基幹通信課)方針だ。同じ区域で複数の申請があった場合は「関係する地方公共団体の意見を参考にした上で,固定系地域バンドの目的により合致した事業者に免許を付与する」(同)と,用途を重視する。

 この背景には,総務省が2006年8月に打ち出した施策「次世代ブロードバンド戦略2010」がある。同施策では,2010年度までに「ブロードバンド・ゼロ地域の解消」や「超高速ブロードバンドの世帯カバー率90%以上」を実現するとぶち上げたものの,2006年12月末時点でブロードバンドを全く利用できない地域は30町村,一部利用できない地域にいたっては580市町村も残っている。

 これらの地域は有線ブロードバンドを敷設できない,あるいは敷設できる場合も高コストで実現が難しいというのが実情。有線ブロードバンドに代わる手段として,2.5GHz帯無線ブロードバンドに強い期待がある。本命はモバイルWiMAX(IEEE802.16e)*1。今後の展開を考えると,他の無線通信方式に比べて端末や基地局を低コストで導入できる可能性が高いからだ。

CATV同時利用で月額500円のシミュレーションも

写真1●総務省が2006年12月に開催したBWAカンファレンスの様子 免許取得を希望する14の企業・自治体などが計画中の事業内容を公表した。
写真1●総務省が2006年12月に開催したBWAカンファレンスの様子 免許取得を希望する14の企業・自治体などが計画中の事業内容を公表した。

 固定系地域バンドを巡る事業者の動きも進んでいる。総務省が2006年12月に実施した「BWAカンファレンス」(写真1)では,IRIユビテックやアライドテレシスホールディングス,ドリームダイレクト,新潟県,日本ケーブルテレビ連盟,三菱総合研究所がデジタルデバイドの解消や固定通信の用途を提案した(関連記事)。

 今後の動きでカギを握るのはケーブルテレビ(CATV)事業者。CATV事業者はもともと地域に密着した事業展開を進めており,地域バンドの免許方針にフィットする。対抗のNTT東西地域会社が免許方針案で対象外(ただし,3分の1未満の出資による参入は可能)となれば,CATV事業者が中心的な役割を担っていくのは間違いない。嶺南ケーブルネットワークや飛騨ケーブルテレビ,福井ケーブルテレビなど既に実証実験を実施している事業者もある(関連記事)。

 日本ケーブルテレビ連盟は2007年4月,モバイルWiMAXの事業化などを推進する「ケーブルテレビ無線利活用促進協議会」を設立した(関連記事)。同協議会では事業化の課題とその解決策,設備を導入する際の技術的な課題などを検討し,事業者間で情報共有を図りながらWiMAXの導入を促進していく。既に約180の事業者が参加しており,「3年以内にWiMAXの事業化を予定している事業者が90社ほどある。このうち,数十社は今秋の事業化を予定している」という。

 2007年6月5日には参入を検討する事業者を対象にセミナーを開き,事業収支のシミュレーションを披露した。これによると,4万世帯が居住する約10km四方のエリアを想定した場合の設備投資額は,基地局(10局)や中継回線,センター設備など約9800万円。ユーザー料金をCATV同時利用で月額2000円,WiMAX単独利用で月額3000円とした場合,3年で単年度黒字,4年で累積損失を解消できるとする。ユーザー料金をCATV同時利用で月額500円,WiMAX単独利用で月額2700円としても4年で単年度黒字,5年で累積損失を解消できるという。あくまでシミュレーションに過ぎないが,月額2000~3000円の料金イメージが見えてきた。