電話だけで数百万~数千万円もするITソリューションが売れることはない。一部のBtoC(企業対個人)商材の売り込みで電話のイメージが悪いこともある。しかし今後、BtoB(企業間)のマーケティングにおいて、電話によるテレマーケティング活動は欠かせざる仕組みになる。

 「SI(システムインテグレーション)やXXソリューションの営業活動に、電話を使いましょう!」と提案しても、ほとんどの方のお返事はこうです。
「いや、うちの商材は複雑だから、とても電話で営業できるものじゃないよ」。本当にそうでしょうか?

 これは、某大手電気機器メーカーのグループ会社に当たる中堅システムインテグレータの例です。弊社の担当窓口は営業推進部の方々。といっても、これまでは親会社が受注した案件を回してもらっており、自社で直接開拓した顧客の比率は極めて低いのが実状です。

 営業推進部といっても、その役目は商材パンフレットの作成や各営業部からの数値を集めて上に報告するといったもので、どちらかというと営業アシスタント的な位置付けです。親会社が直接SE部門に電話をかけてくるので、特別に営業活動を推進する必要などなかったわけです。しかし、ご多分に漏れず“独立独歩を目指すべき”という声が、特に社内の若手から聞こえてくるようになってきました。

 さて、このような会社が、いざ新しいことに取り組もうとすると初めて、これまで新規営業をやってこなかったことのツケが想像以上に大きいことに気が付くのです。冗談ではなく、担当者からは「新規のお客様は、一体どこにいるんでしょうか?」といったストレートな質問をいただくケースもあります。

 これまで営業する必要などなかったわけですから、見込み顧客リストがありません。“電話でアポイントを取る”とは聞いたことはありますが、どこに電話をすればいいのか分かりません。頑張って電話したところで、なんと言ったら顧客に会ってもらえるのかも分かりません。そのため、いつも挫折してしまい、結局は必然的に親会社頼みでやっていく日々が続きます。「電話では売れない」のではなく「電話での売り方が分からない」のです。ドキッとされる読者も少なくないのではありませんか?

電話から資料送付の15%弱のアポイント獲得率

 では実際のテレマーケティングの進め方を、弊社が別の中堅システムインテグレータ様とともに取り組んだ例を基に紹介します。この中堅システムインテグレータも、基本的には強力なパートナーシップを組んでいる大手電気機器メーカーからの案件がほとんどでした。しかし、大手の業績悪化の影響を受けた経験から、自社独自の顧客を持つことの必要性を強烈に感じていました。

 まずは営業がきちんとフォローアップできるエリア(ここでは東京都と、その近隣)に絞り込み、開拓したいターゲットのリストを約3000件購入しました。

 ここに対して、テレマーケティングを実施していきます()。実際に電話を掛ける作業はテレマーケティング会社が代行しています。最初は市場ニーズが顕在化しているセキュリティを切り口に、情報システム部門にアプローチしました。すると、全体の約60%に当たる1800社弱の情報システム部門にコンタクトすることができました。そのうち24%に当たる430社ほどが「セキュリティ強化の具体策を検討中」だということが分かりました。

図●テレマーケティングにおける新規開拓アプローチの歩留まり例
図●テレマーケティングにおける新規開拓アプローチの歩留まり例  [画像のクリックで拡大表示]

 この430社のうち60%強に当たる270社に対し、自社の会社案内とセキュリティソリューションを紹介する資料を郵送します。後日、改めて電話したところ、15%弱に当たる38社からアポイントを取ることができました。この際、電話では、次のような内容をヒアリングしています。

●現状の最優先課題は何か?
 ○ウイルス対策
 ○人的情報漏洩対策
 ○セキュリティポリシーに則ったシステムの見直し
 など

●現在の検討ステータスは?
 ○解決策に関する情報収集
 ○各ソリューションの比較検討に必要な情報収集
 ○社内で予算取りするための説得材料収集
 など

●他社とのコンタクト状況
 ○まだどこにも相談していない
 ○決まった取引ベンダーがあり、そこに相談している
 ○決まった取引ベンダーはないが、ベンダーには相談している
 ○既にいくつか提案をもらっている
 など

●送付資料の中で興味を持った点があるか?

 まだ取引のない見込み顧客から、これらの情報を聞き出すためには、いくつかのコツがあるのは事実です。それは、またの機会に紹介するにしても、これだけの情報が社外のテレマーケティング機能だけで聞き出せてしまうことのほうが驚きではありませんか?

 新規に営業を始めたにもかかわらず初期段階に顧客から拒否された経験があると、新規開拓に慣れていない営業担当者はどうしても腰が引けてしまいます。しかし、テレマーケティングを利用すれば、営業担当者は顧客の検討項目や自社に興味を持っているかどうかなどを、あらかじめ把握してから客先を訪問することになるので、新規の顧客でもスムーズに商談を開始できます。

 電話がつながらなかった顧客やセキュリティには関心を示さなかった顧客に対しては“Next action”としてIP電話を切り口にアプローチしてみました。すると、こちらからの継続的なコンタクトを了承してくれ、かつ「オフィス移転の予定がある」「PBX(構内交換機)のリースアップの予定がある」「IP電話導入を検討している」のいずれかに該当する顧客層が、リスト総数の18%に上りました。

 このような“検討のタイミング”にある顧客をいかに早く捕まえるかが重要です。これを見逃していては、コンペにすら参加できません。また、検討のタイミングにある顧客から、より多くの情報をヒアリングし“訪問しても無駄足に終わる客”を選別したうえで“今、行くべき顧客”に注力できるための仕組みが必要なのです。

 「是非、提案してください」と言ってくれる顧客にだけ訪問できるのなら、営業ほど楽しい仕事はありません。そうした環境を生み出すのが、テレマーケティングを中心とした施策であり、そこでの顧客のスクリーニング(絞り込み)です。

今、訪問できない企業の中にも顧客はいる

 さて、セキュリティソリューションに関する資料を送付したもののアポイントが取れなかった390社ほどの企業はどんな状況だったのでしょう。そこで「なぜ、訪問させてもらえないのか?」という理由を聞いてみます。こんな結果でした。

(1)既存の取引ベンダーに相談している=20%
(2)まだ情報収集段階なので、営業に来てもらうまでもない=45%
(3)既に対策は決定している(資料請求したのはあくまで参考まで)=26%
(4)特に興味を引くものがなかった=9%

 意外と(1)の割合が少ないと感じませんか? 同時に「今すぐではないが、近々商談が期待できる顧客」に相当する(2)が多いとも思いませんか?この層をいかに顧客化していくか=取引開始に持ち込むかが、新規開拓の勝敗を握ります。そのためには、継続的にコンタクトし、商談発生のタイミングを確実に把握する必要性が出てきます。

 これらの活動で得られた顧客それぞれの情報をきちんと管理していけば、低いコストで安定的な見込み顧客発掘を実現することが可能になります。さらに、弊社からの提案としてはまだ、いくつかの企業で始めたばかりですが、顧客の声を反映した商品・サービスの開発も期待できるようになります。

 次回は“ターゲット管理で効率的な新規開拓を実現する!”です。無理なくできる顧客管理方法と、それにより実現できるスマートな営業をご紹介します。

加藤 麻衣子 SPO-Groupグループマネジャー
ベンチャーリンクを経て2001年、メンバーズ入社。SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)事業を立ち上げる。2004年末からは「デジタルハリウッド大学院」で教壇にも立つ

出典:日経ソリューションビジネス 2004年11月30日号 96ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。