複数の企業と個別に業務委託契約を結び、専門性の高い仕事をこなすプロフェッショナルを「インディペンデント・コントラクター(IC)」と呼ぶ。企業はICを使うことで、専門家を必要とする仕事を効率よく進められる。企業には、優れたICを見つけ、契約し、成果を出す力量が求められる。


 プロフェッショナルとして委託された仕事に注力し、必ず成果を上げる。雇われない(サラリーマンではない)、雇わない(起業家ではない)働き方を追求する。これがインディペンデント・コントラクター(IC)である。社内にあらゆる人材を抱え込み、固定費を高める代わりに、外部のプロであるICを“期間限定のビジネスリーダー”として活用し、社員の教育にも結びつけていく。これは1つの人事施策にほかならない。

 インディペンデント・コントラクター協会は、ICを支援する特定非営利活動法人である。協会に所属するICたちの意見を基に、企業がICを使いこなす勘所をまとめてみた。最初に、ICの働き方を紹介し、概要をご理解いただこうと思う。

 ブランド・プロデュースや人材育成を手がけるICの鴫原弘子氏は、婦人向けに靴の販売を手がけていた企業と業務委託契約を結び、同社の「企画室長」に就いた。任務は若い女性向けのカジュアルブランドのプロデュースである。市場調査、商品選び、独自商品の開発など、ブランド確立に必要な仕事をすべて手がけたが、企画室の部下は全員女性の正社員で、鴫原氏だけがICだった。

 契約条件は「数字を確実に上げる」という1点だけで、詳細はすべて任された。出社日の細かい制約はなく、鴫原氏が出社するのは週1日程度。「部下に指示を出したり、案件を取りまとめたりする仕事は自宅でもできる。子育てと両立しながら、他社の仕事も請け負えた」(鴫原氏)。

 その企業は鴫原氏に他部門の責任者と同等の権限を持たせ、鴫原氏が幹部として各種の会議に出席し、各部門と連携を取れるようにした。社内の問題点や改善点に対する鴫原氏の提案についても、幹部が柔軟に受け入れる素地があった。「忘年会や新年会にも参加して、現場の社員と交流できた」と鴫原氏は言う。

ICとは「短期間の即戦力」

 その企業は新ブランドの年商を5年間で30億円規模に拡大、2007年2月には株式の公開に漕ぎ着けている。鴫原氏は既にその企業から離れているが「当時の部下から今でも連絡があることが嬉しい」と語る。

 この事例から分かるように、ICは2つの特徴を持つ。1つは仕事を選ぶ裁量権があり、仕事を受けるかどうかはIC自身が判断する。もう1つは複数の企業と仕事をする点で、1社とだけ契約を結んで仕事をしている場合は「インディペンデント」とは呼びにくい。

 企業がわざわざ個人と契約を結ぶのは、ICが何らかの専門性を持っているからである。ICの形態で仕事ができる領域は、営業、マーケティング、人事、財務、法務、購買、株式公開、IT(情報技術)など、企業が必要な機能のすべてに及ぶ。

 情報システムの保守サービスを提供するICの柄本和夫氏は、企業がICと契約する利点を「短期間、プロフェッショナルを確実な戦力にできること」と指摘する。「短期間」には2つのケースがある。1つは、正社員を抱えるほどの仕事量がなく、専門家に週1日あるいは月に1~2日だけ来てほしい、というケース。パソコンやコンピューター機器の設定支援、データのバックアップといった保守サービスが該当する。

 もう1つは、株式公開や人事採用のように、一定期間だけプロを集中的に必要とするケースだ。人事制度の設計や能力開発、研修業務まで、「人」に関する仕事を専門とする木村英一氏は毎年、ある大手企業の新人研修を3人のICで実施している。毎年一定期間だけ実施するために、ノウハウが蓄積されて、毎年何らかの改善を加えていけるという。

 従来の顧問や嘱託契約、コンサルタント利用とどこが異なるのか、という疑問を抱かれるかもしれない。我々がIC協会を作り、ICという言葉を打ち出したのは、弁護士や会計士など“士”がつく専門職種の人たちに加え、若手を含む幅広い職種の人々が個人事業者として仕事を請け負う動きが活発化していることを、世に広めたかったからだ。

 例えば人事専門のICである田代英治氏は20年間勤続した会社を退職した後に、元の会社と契約して専用のデスクとメールアドレスをもらい、同じ情報を共有している具体例である。古巣の会社には週3回ほど出社して、残りの時間で他社の仕事を手がけているという。このケースなど、従来にはないICの働き方と言える。

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