一言にエンタープライズ・サーチといっても製品によって機能が異なる。製品の選択ポイントは,大規模システムに対応できるか,エンドユーザーの使い勝手を高める仕組みがあるかなどである。製品によって異なる検索技術を採用しているため、これが使い勝手に影響する。

 ここまで見てきた機能は,現在市場にあるエンタープライズ・サーチ製品の多くが備える。ただ,製品によってアーキテクチャや細かな機能に違いがあり,対象ユーザーも異なる(表1)。具体的には,導入の容易さを重視する製品,数千万超の文書を扱える大規模指向の製品,キーワードと完全には一致しない単語を含む文書を検索する「あいまい検索」を特徴とする製品,ほかのユーザーが使ったキーワードの組み合わせを参照できるなど「検索ノウハウを共有」できる製品,といった具合だ(図7)。

表1●主なエンタープライズ・サーチ製品
表1●主なエンタープライズ・サーチ製品
製品名のバージョンは2007年3月現在。
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図7●エンタープライズ・サーチ製品の分類
図7●エンタープライズ・サーチ製品の分類
設計思想の違いから大きく4タイプに分類できる。
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 導入の容易さを全面に押し出す製品の代表格は,ハードウエアと一体提供するアプライアンス型の製品(写真2)。「Google検索アプライアンス」や「Google Mini」,「QuickSolution Express」がこれに当たる。特に薄型サーバー1台で最大30万文書まで検索できるGoogle Miniは,エンタープライズ・サーチの認知度を一気に引き上げた。

写真2●グーグルの「Google検索アプライアンス」と「Google Mini」
写真2●グーグルの「Google検索アプライアンス」と「Google Mini」
導入の容易さを全面に押し出すアプライアンス製品の先駆けとなった。

 全社導入はもちろん,試験的に導入して使い勝手を試す用途にも有用だ。「文書を“捨てる”ために導入するユーザーもいる」(住友電工情報システム システム営業部の伊藤彰康チーフマネージャー)。利用価値がなくなった文書や重複ファイルが散在しているような場合に,検索結果を基に無駄なファイルを削除していく。エンタープライズ・サーチ製品の多くが文書数やサーバー数に応じて課金するライセンス体系を採っている。このため検索したい文書を絞り込むことで,本格導入時の費用も下げられる。

拡張性を考えるなら大規模指向

 Google Miniなどの対極にあるのが,IBMの「OmniFind」,オートノミーの「IDOLサーバ」など大規模指向の製品である。クローラ,インデクサ,サーチャーを独立させられるなど,全社,あるいは企業グループ全体への導入を視野に入れている。

 「この1~2年で対象が数億文書という大規模な案件が増えてきた」(日本IBM ソフトウェア事業インフォメーション・マネジメント事業部ECM営業部の田中良幸部長)というように,最近はエンタープライズ・サーチを大規模展開する例が徐々に出てきている。ストレージの容量に換算すると,「10Tバイト,20Tバイトはザラ」(サイバーソリューションズの秋田健太郎社長)である。導入時には小規模展開でも,将来的に拡張する可能性があるなら,こうした大規模指向の製品を選ぶ方がよいだろう。

 なお,アプライアンスであっても小規模向けとは限らない。Google検索アプライアンスはラックごと提供するタイプ。1ラックに収まるサーバー台数でカバーできる3000万文書が仕様上の上限だが,「サーバー台数を増やすことで3000万以上の文書にも対応可能」(グーグル エンタープライズ セールスの大須賀利一マネージャー)だ。

エンドユーザーの習熟度見極めも重要に

 エンドユーザーの多くが「検索時のキーワード選定でキーボードを打つ手が止まる」(ジャストシステム システム営業推進グループの高瀬雅利グループマネージャ)というような場合は,検索のノウハウを共有できる製品が便利だ。ジャストシステムの「ConceptBase !)」は,検索条件を利用者間で共有する機能を持つ。

 人づての情報を探せる製品もある。マイクロソフトの「Microsoft Office SharePoint Server 2007」は同製品のSNS機能が持つプロフィール欄の情報を検索できる。「特に大企業では人を検索するニーズがある」(インフォメーションワーカービジネス本部の昇塚 淑子エグゼクティブプロダクトマネージャ)。

 ウチダスペクトラムも,2007年第2四半期に出荷を予定する「SMART/InSight」次期版にブログ連携の機能を追加する(写真3)。検索結果の一覧に,ブログやソーシャル・ブックマークへの連携ボタンを配置。ユーザーが「役立った」と判断したデータをブログやソーシャル・ブックマークに備忘録として記録できるようにする。

写真3●ブログの記事作成やソーシャル・ブックマークへの登録ボタンが検索結果に
写真3●ブログの記事作成やソーシャル・ブックマークへの登録ボタンが検索結果に
ウチダスペクトラムが開発中の画面。

 こうした機能を必要とするかどうかは,エンドユーザーのパソコンやインターネットに対する習熟度などによって異なる。使い勝手に関するエンドユーザーのニーズを見極めることが肝心である。

出典:日経コミュニケーション 2007年4月15日号 58ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。