パネリスト
杉村 領一 氏
エスティーモ副社長 (前,パナソニック モバイルコミュニケーションズ 技術部門 モバイルシステム開発センター 所長)

小泉 忍 氏
日立製作所 モノづくり技術事業部 組込みシステム改革戦略センタ 主管技師

村山 浩之 氏
デンソー 電子機器事業グループ 電子PF開発室 室長

モデレータ:浅見直樹(ITpro発行人)


本記事は,2006年11月17日に,組み込み機器の展示会「ET2006」の会場において開催されたパネル討論会「ソフトウエアものづくり論」の内容をまとめたものである。
 
図1●携帯電話のトレンドと要素技術
出所:パナソニック モバイルコミュニケーションズ
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 組み込み機器向けソフトウエアの規模が指数関数的に増えている。ソフトウエア規模の増大に対応すべく,先進的なソフトウエア開発方法論を取り入れる先進企業が現れている。「ケータイ」「デジタル家電」「クルマ」などの先進事例を取り上げながら,上流設計から下流のテスト・検証工程に至るまで,組み込みソフトウエア開発の現状を浮き彫りにした,パネル討論会「ソフトウエアものづくり論」を4回に分けてレポートする。本記事は,その第1回である。


携帯電話やデジタル家電,車載用電子機器において,組み込みソフトウエアの規模が激増しています。この傾向は今後も続くのでしょうか。

杉村氏:携帯電話のトレンドを説明しましょう。携帯電話には毎年,多種多様な機能が新たに実装されます(図1)。最近では,ワンセグの表示機能も搭載されました。今後も,通信の高速化と相まって,さらに新しいサービスが導入されるようになるでしょう。いずれは,「ケータイでハイビジョン」なんていう話も出るだろうし,デジタル家電と連携することもあり得る。

 通信の高速化と,ケータイの多機能化は,まさに車の両輪のように相乗効果をもたらし,携帯電話を進化させる原動力となっている。ソフトウエア規模の増大は加速することはあれど,減速することはない。しかも多機能化の一方で,消費電力への配慮も欠かせません。特に,携帯電話を小型化するためには,むやみに消費電力を増やすわけにはいかない。こうした背景から,ソフトウエアの開発体制を抜本的に見直す時期に差し掛かっています。

小泉氏:日立製作所は,デジタル家電だけではなく,医療診断システムあるいは交通システム,自動車機器と,非常に幅広い事業を手がけています。その経験からいえば,組み込みソフト危機というのは,新しくて古い問題だと言える(図2)。

図2●組み込みソフト機器は,新しくて古い問題
出所:日立製作所

 実は20年くらい前から,数年おきに,いろいろな分野でソフトウエア危機が問題になっている。新しい製品分野が誕生し,急速に市場が立ち上がると,必ずソフトウエア開発にしわ寄せが来る。あるいは,電子機器がネットワークにつながるようになると,ソフトウエア開発体制の問題が顕在化してくる。今後,ロボットのような新事業領域が生まれたり,あるいはユビキタス社会に向かっていろいろな電子機器が相互につながるようになれば,改めて組み込みソフト危機の問題が表面化することだろう。

 なぜ,この歴史は繰り返されるのか。それは,製品分野あるいは事業領域が異なるがゆえに,過去の経験が伝承されていない。ここに問題の本質があるのではないでしょうか。

村山氏:自動車のソフトを俯瞰したお話をしたいと思います。まずは歴史です。自動車の電子化が始まったトリガーは,1970年に米国でマスキー法という排ガスの規制法案が出来たときまでさかのぼる。これを機に,マイコンのソフトウエアによってエンジンを制御し,排気ガスを低減する動きが活発になった。それ以後は,ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)などの安全製品だとか,ラジオをはじめとした情報機器が車に持ち込まれるようになった。現在はさまざまな装置がクルマに搭載されている。「環境」「安全」「快適」「利便」というキーワードを実現する上で,組み込みソフトウエアは欠かせない存在となっている。

 その歴史を振り返れば,まず,システムの大規模化という問題に直面した。最近では,単なる大規模化にとどまらず,個々のシステムを統合したり,あるいは相互に連携させるようになった。いずれ,車内のみならず,車外のシステムともつながるわけで,今後もソフトウエア規模の増大が続くかと聞かれれば,クルマの場合,「続かないわけがない」というのが私の答えですね。「環境」「安全」---これを実現する上でソフトウエアは欠かせない(図3)。加えて,クルマと人のインタフェースが今のままでいいわけもない。「快適」という側面からも,ソフトウエアによって,ヒューマン・インタフェースを改善していきたい。

図3●自動車エレクトロニクスの歴史
出所:デンソー
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