世界の主要都市で流行になっている,現代的でポップなクラシック専門のラジオ局が,日本にも登場した。デジタルラジオ推進協会(DRP)の実用化試験放送の枠組みの中で,3月5日からプレ放送を開始した「OTTAVA(オッターヴァ)」がそれだ。TBSラジオ&コミュニケーションズが運営するクラシック音楽を中心とする専門ステーションで,4月1日に開局する。同社取締役 デジタル推進局長の藤井 彰氏に,OTTAVAのサービスおよび開局に向けた意気込みを聞いた。

(聞き手は隅倉 正隆=IT・放送技術コンサルタント



ステーション・ネーム「OTTAVA」の由来を教えてください。

 「OTTAVA(オッターヴァ)」の言葉の意味は,音楽用語の「octave(オクターブ)」のイタリア語です。楽譜で音符の上に書いてある場合,1オクターブ上の音で演奏することを指す記号でもあり,「一つ上の生活を提案する」という思いを込めてネーミングしました。ステーション・コンセプトは,「コンテンポラリー・クラシック・ステーション」です。

 世界のクラシック音楽専門ステーションは,ロンドンにあるクラシック専門のFMラジオ局「Classic FM」からスタートしています。このクラシック専門ステーションは,重厚長大なタイプのクラシック・ステーションではなく,現代的でポップ,かつライブ感があるコンテンポラリー・クラシック・ステーションで,一つの成功事例として語られています。

 Classic FMは,FMラジオ,デジタルラジオの全国放送局であり,イギリス国内では最大級の民放ラジオ局です。イギリス全土で12%の週間リーチ,576万人のリスナーを持っています。ラジオ放送だけではなく,特定の編集方針で楽曲を集めた「コンピレーション」によるCD,雑誌,Classic FM TVなど,多角的にブランドを展開しています。

写真1●「OTTAVA」のスタジオ
写真1●「OTTAVA」のスタジオ
プレゼンター(DJ)がここで生放送の番組を作り出す。
 コンテンポラリーなクラシック音楽を流すということで,非常に多くのリスナーから支持されています。同時に,クオリティが高いリスナーが聴いているため,クライアントである広告主からも高い支持を得ています。つまり,営業的にも大成功しているわけです。

 ロンドンのクラシックFMの大成功以来,ハンブルクとかロサンゼルス,パリといった世界の国際都市で,このようなクラシック専門ステーションが一気に増えてきました。

 TBSラジオ&コミュニケーションズが目指すのは,重厚なクラシックを全曲流して解説者が曲を解説するタイプのクラシック局ではなく,クラシックFMのような現代的でポップなコンテンポラリー・クラシック・ステーションです。今まで日本にはなかったスタイルのクラシック・ステーションとして,2年前から構想を温めてきました。そして,今回ようやくスタートすることになりました(写真1)。

デジタルラジオによる放送のジャンルとして,クラシックを持ってきた理由は?

 近年,男性ヴォーカル・グループのイル・ディーヴォをはじめ,ピアニストのマキシムや女性バンドのワイルドといった,ルックスのいいクラシック系アーティストを各国のクラシックFMステーションが排出し,旧来の音楽ジャンルの枠を飛び越えてヒット曲が生まれています。

 パッケージのCDが売れない傾向にある中,クラシックのコンサートにはお客さんが付いています。クラシック・コンサート市場は近年,規模が拡大する傾向にさえあります。例えば,毎年ゴールデンウィークに東京国際フォーラムで開催されているクラシック・コンサート「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」は,2006年に約70万人の観客を集めたほどです。また,世界中の音楽関係者からは,「日本人は,歌詞のない音楽を理解する能力に優れている。ボサノヴァやエレクトロニカなど洗練された音楽が好まれ,聴かれているのが何よりの証拠」と日本人の音楽的感性が評価されているのです。

 また,世界的なコンピレーション・ブームや,iTune Music Storeの普及などから,音楽リスナーのニーズがアーティストから楽曲志向に変わりつつあると思っています。そこでOTTAVAは,音楽を知っているプロが完成度の高いコンピレーション番組を提供することを目標としています。私たちは,日本でクラシック・ラジオ・ステーションを立ち上げるにあたりロンドンのClassic FMを訪問して,ノウハウを指導してもらうなどの協力関係を作り上げました。

 日本ではこれまで「聴き手はいるのに,発信者がいない」という環境が続いていました。OTTAVAがクラシックを提案していくことで,クラシックが好きな方だけではなく,クラシックに対して身構えてしまう人たちにも聴いてもらって,クラシックを身近に感じる人を増やしたいと思います。

3月5日から92chでプレ放送を開始していますが,既存の「DR@TOKYO92」のほかに新しくOTTAVAが加わったのでしょうか。

 東京エリアで実用化試験放送中のデジタルラジオの92chでは,以前から実用化試験放送を実施している201(9201)ch(FMヨコハマ,TBSラジオ,BayFMの共同チャンネル)のDR@TOKYO92に加えて,3月5日から202(9202)chでOTTAVAのプレ放送を開始しました。

 92chのチャンネル編成は,4月から3つのチャンネル構成になります。201chはFMヨコハマとBayFMが共同で放送するチャンネル,202ch(9202)がOTTAVA,3つ目は現在検討中です。

OTTAVAの番組編成を教えてください。

 非常にシンプルな番組編成を目指しました。1週間に 9つの枠(ワイド番組枠)だけの編成です(図1)。9つのワイド番組枠では,それぞれ早朝,朝,昼,夕方,夜そして深夜と時間帯に合わせた形で編成しています。デジタルラジオ,インターネットともに同じ番組を放送する予定です。

 そして,その大きな番組枠の間に30分の小さな枠がありますが,ここはトークが入らない音楽だけの「インターミッション番組」としています。このインターミッション番組は30分のパッケージ番組として,インターネット経由でダウンロード提供する予定です。通勤の途中などにiPodやMP3 Playerなどのポータブル・プレーヤーで聞いてもらいたいと思います。

図1●「OTTAVA」のタイムテーブル
図1●「OTTAVA」のタイムテーブル
9つの「ワイド番組」とその合間の「インターミッション番組」が中心のシンプルな構成。

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