VistaはWindowsの最新バージョンで,もちろんWindowsネットワークの機能を装備している。今後は,WindowsネットワークにVistaがどんどん参加することになるだろう。既存のWindowsネットワークにVistaが加わると,どういったことになるのか。今回ではVistaがWindowsネットに与える影響について見ていこう。

NetBIOSはこれまで通りサポート

 最初に結論を言ってしまうと,Vistaが参加しても既存のWindowsネットワークに問題はまず発生しない。新たに参加するVistaからはネットワーク上のWindowsサーバーをWindows XPと同じように利用できるし,すでに存在するWindowsパソコンやWindowsサーバーもまったく影響を受けずにこれまで通りに使い続けられるはずだ。

 では,VistaのWindowsネットワーク機能が,Windows XPとまったく同じかというと,決してそんなことはない。むしろ,かなり大幅に変わっているといってよい。そのキーワードとなるのは,IPv6とNetBIOSである。

 Windowsネットの最大の特徴は,その使いやすさにある。それを実現しているのが,(1)コンピュータの一覧表示(ブラウジング),(2)名前解決,(3)ファイル共有──の三大機能だ(図2-1)。

図2-1●VistaでWindowsネットが大きく変わる
図2-1●VistaでWindowsネットが大きく変わる
Windowsネットの三大機能のうち,小規模ネットワークでブラウジングと名前解決にNBT(NetBIOS over TCP/IP)を使わないしくみがVistaで加わった。すでにファイル共有ではWindows 2000以降からNetBIOSが不要になっているので,これと合わせるとVistaではついにNetBIOSを一切使わずにクライアントだけで三大機能を実現できるようになった。
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 例えば,「マイネットワーク」(Vistaでは単に「ネットワーク」になる)を開くとコンピュータの一覧が表示され((1)ブラウジング),その中の一つをマウスでクリックするとそのコンピュータのアドレスを調べて((2)名前解決),相手とファイルをやりとりできる((3)ファイル共有)のだ。

 この三大機能を支えてきた中核となる技術がNetBIOSである。NetBIOSは,Windowsネットワークの前身であるMicrosoftネットワークの時代から使われてきた技術。その後,TCP/IPが標準になっても,TCP/IP上でNetBIOSを実現した「NetBIOS over TCP/IP」(NBT)と形を変えながら,今でもWindowsネットワークの中核技術として使われ続けてきている。

 このNetBIOSは,Vistaでももちろん健在である。だからこそ,既存のWindowsネットワークにVistaを追加しても問題なく使えるのだ。ただし,実はそれはあくまでIPv4に限定した場合のこと。VistaのIPv6上では,このNetBIOSを使っていないのだ。

IPv6対応に合わせ脱NetBIOSを実現

 では,IPv6を使う環境でWindowsネットワークらしい“使いやすさ”が利用できないのかというと,そんなことはない。マイクロソフトでは,NetBIOSを使わずに三つの機能が実現できる手段をVistaに用意した。

 例えば,(1)のブラウジングの代わりとなるのが,Part1で紹介したLLTDを使う「ネットワーク・マップ」である。(2)の名前解決については,後述するマルチキャストを使った新しいしくみを用意した。(3)のファイル共有は,すでにWindows 2000からNetBIOSを使わなくても実現済みである

 つまり,VistaではじめてWindowsネットワークの三大機能すべてについて,NetBIOSを使わなくても実現できるようになったのだ。

Vistaが混乱を引き起こす可能性も

 Vistaでは既存のWindowsネットワークとの互換性を確保しながら,いくつかの変更を加えている。このため,場合によっては新たなトラブルを引き起こすことがありえそうだ。

 このPartの最初に,Vistaは既存のWindowsネットワークに同じように参加できると説明したが,それはあくまでIPv4とIPv6の両方を動かした状態の話。この設定を変えると話は違ってくる。例を挙げて説明しよう(図2-2)。

図2-2●Vista導入によってブラウジングがらみのトラブルが増える可能性がある
図2-2●Vista導入によってブラウジングがらみのトラブルが増える可能性がある
Vistaでは,LLTDやNetBIOSなどさまざまな手段で集めた情報をごちゃ交ぜにしてコンピュータの一覧として表示する。このため,IPv6だけを使うように設定したVistaパソコンのマップ上に,実際には通信できないIPv4のみを使うVistaパソコンが表示されたりする。
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 IPv4とIPv6の両方が有効になっているVistaは,いわばマルチリンガルなWindowsである。NetBIOSを使ってマスター・ブラウザから一覧をもらう従来の方法と,Vistaの新機能であるLLTDを使って自分で調べる方法の両方で,情報を集める。このため,ネットワーク内にあるすべてのWindowsパソコンが見つけられ,それらと通信することが可能だ(図2-2のVISTA1)。

 ここに,もしIPv4を無効にしているVistaがあったとする(VISTA3)。このパソコンではNetBIOSは使えないため,他のパソコンの情報はLLTDで調べるしかない。LLTDが話せないWindows XPに関しては,いくらそばにあっても気づかず,画面に表示されない。

 さらに,IPv6を無効にしたVistaパソコン(VISTA2)もあったとしよう。このパソコンはNetBIOSを使った従来のWindowsネットに参加すると同時に,他のVistaパソコンからのLLTDメッセージにも応える。このため,VISTA3の画面にはVISTA2のアイコンも表示される

 だが,アイコンをクリックしてアクセスしようとしても片方はIPv6しか話せず,もう片方はIPv4しか話せないのでつながるわけがない。つまり,「見えるのにつながらない」というWindowsネットワークにありがちなトラブルが発生する新しい原因になるわけだ。

 ちなみに,このネットワークにあるWindows XPパソコン(XP1)は,IPv4ベースでNetBIOSを使う従来と同じWindowsネットしかわからない。このため,IPv6しか話せないVISTA3とはまったく通信できないし,その存在さえも表示しない。

 当面はIPv6のみを使うVistaというのはほとんどないだろう。このため,すぐに現実的な問題になることはあまりないかもしれない。だが,もしIPv6が順調に普及すれば,どこかの時点でこうしたシチュエーションになりうる。Vistaでは再起動をしなくても簡単にIPv4やIPv6をオン/オフできるから,そうした状況が生まれやすい。

マルチキャストで名前解決を実現

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