地上デジタル放送の1種類であるデジタルラジオは,2006年12月に受信機能を備えた携帯電話が発売されてようやく一般のユーザーが聴取できるようになった。デジタル方式による音声に加え,静止画や簡易動画などのデータ放送も可能なサービスである。

 デジタルラジオは,一時期は2006年内に本放送が始まる予定であった。マルチプレックス方式(ワンセグの理解を深めるキーワード解説:「マルチプレックス事業者」)による本放送が計画されていたが,その開始は延期された。しかし,社団法人デジタルラジオ推進協会が免許人となり,実用化試験放送の枠組みの中で東京と大阪で“本格的放送”が始まった。そのタイミングが,デジタルラジオの市販受信機発売に合わせた2006年12月だった。まずはTOKYO FMにより本格的放送が始まり,さらに2007年4月には数局が本格的放送を開始する。

 ここでは,めまぐるしく状況が変わってきたデジタルラジオをめぐる動向を整理する(図1)。

図1●地上デジタルラジオをめぐる動向
図1●地上デジタルラジオをめぐる動向
[画像のクリックで拡大表示]

2003年10月,デジタルラジオの実用化試験放送開始

 デジタルラジオは正式には「地上デジタル音声放送」と呼び,地上デジタルテレビ放送開始よりも2カ月早い2003年10月に実用化試験放送が東京と大阪で始まった。現在まで引き続き,東京と大阪で放送されている実用化試験放送は,地上アナログテレビ放送のVHF帯7チャンネル(188M~194MHz)の6MHz帯域のうち,隣接する現地上アナログテレビ放送の影響を与えないように,ガードバンドを設け,4MHz帯域を8つのセグメントに分割し,1セグメントをNHK/VICS,その他の7セグメントを民放が利用している。

 デジタルラジオは実用化試験放送と言うこともあり,試験放送開始当時から市販の受信機が発売されていなかった。各種展示会やイベントでの紹介があった程度であり,認知度が低い状態が続いた。

 デジタルラジオは,現行のAM/FMラジオを停波せず,オプションサービスとして提供される。ここが地上アナログテレビ放送から地上デジタルテレビ放送への移行との違いである。地上アナログテレビ放送は2011年7月に停波し,地上デジタルテレビ放送に置き換わる。そのためデジタルラジオは,地上アナログテレビ放送が停波した2011年7月以降に,空きとなるテレビチャンネル(1ch~12chのVHF帯域)を利用して本放送を開始する予定だった。

 しかし,海外ではデジタルラジオ放送がすでに開始されていることや,国内でも携帯機器向けの地上デジタルテレビのサービスである「ワンセグ」が2006年4月に始まることになった。このため,日本におけるデジタルラジオの普及を懸念し,総務省は2004年9月に「デジタル時代のラジオ放送の将来に関する懇談会」を開催した。

 そして,2005年5月に懇談会の中間答申として報告書がまとめられ,2011年7月からの本放送開始を前倒し,2006年秋にマルチプレックス方式による本放送を開始することになった。

2005年7月26日,マルチプレックスジャパン設立を発表

 この中間答申の報告書では,本放送の開始時期を大幅に前倒し,全国放送を主とするマルチプレックス事業者の設立と,2006年度中に東京と大阪,2008年に札幌,仙台,静岡,名古屋,広島,福岡で本放送を始めることが明記されていた。そして,2011年7月以前を「先行普及時期」,以降を「本格展開時期」として位置づけていた。さらに,この2011年以降の方針には,全国放送サービスとして最大2つの民間事業者,地域放送サービスとしてNHKと最大2つの民間事業者の新規参入を認めていた。

 中間答申を受け,2005年7月26日に東京の民放ラジオ局5社(TBSラジオ&コミュニケーションズ,文化放送,ニッポン放送,TOKYO FM,J-WAVE)は2006年秋の開局を目標に,全国で地上デジタルラジオ放送を提供するマルチプレックス事業会社マルチプレックスジャパン(事業企画会社)を設立した。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら