米国「Windows IT Pro Magazine」の名物ライターであるPaul Thurrott氏が振り返る「Windows Vista開発史」の最終回。機能の搭載を2006年1月までに終了したMicrosoftは,2006年の大半を製品のチューニングに費やした。ついに5年に渡る製品開発も,佳境に入った。

 いよいよ最終回だ。筆者がこの原稿を執筆している間(2006年11月5日)も,MicrosoftはWindows Vistaの最後の仕上げに取り組んでおり,まもなくWindows Vistaが製造段階(RTM,Release To Manufacturing)に入ったことが発表されるだろう。Windows Vistaの開発におけるこの5年間に,数え切れないほどリリースが延期され,いくつもの約束が反故にされ,たくさんの機能が削られた。さらに最近始まったWindows部門の整理は,この記事が発表され,Windows Vistaがリリースされた後も続くだろう。

 筆者が思うに,次のWindowsとその次のWindowsは,もっと厳しく管理され,Windows Vistaのように混乱に巻き込まれることなく市場に登場するはずだ。ただし,Windowsの今後登場するバージョンがWindows Vistaほど人々の興味を引き付ける製品になるかどうかは,現時点では不明だ。

2006年7月:Basic UIの使い勝手が改善される

 2006年7月初めに,何人ものMicrosoft社員ブロガーが,MicrosoftによってWindows Vista Basicユーザー・インターフェースの外観が改良され,特にローエンド・ハードウエアを使用するユーザーの使い勝手が大幅に強化された--という記事を書いた。

 これは一見ささいな変更のように思えるが,Windows Aero(いわゆるAero Glass UI)を実行できるハードウエアを持っていないユーザーにとっては,非常に大きな意味がある。この変更を伝える記事を書いた当時は,実に素晴らしいことだと喜んだものだ。

 7月17日,Microsoftはテスター向けにWindows Vistaの「ビルド5472」を配布した(写真1)。これはベータ2以来の2つ目の暫定ビルドであり,その変更点のほとんどは,以前から約束されていたVista Basic UIなど,バランスと仕上がりに関する改良だった。Microsoftからは,このビルドは一般公開されないので,正式なレビューの発表は控えるようにと要請された。この時点でWindows Vistaは新しいビルドが出ても特に新しい機能が追加されることはなく,着実に仕上げを進めているだけだったので,元々筆者もレビューを書くつもりはなかった。

写真1●Windows Vistaの「ビルド5472」
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 7月後半になるとMicrosoftからWindows Vistaのアップグレード要件が発表され始めたので,筆者はWindows Vistaにアップグレード可能なWindowsのバージョンをまとめたガイドを作成した。予想通り,Windows XPは完全にサポートされているが,Windows 2000は完全にはサポートされていない。ただし,Windows 2000ユーザーは少なくともアップグレード価格で購入できる。

 Microsoftは,7月後半に開催された財務アナリスト向けミーティングで,Windows Vistaの宣伝に非常に長い時間を費やした。CEOのSteve Ballmer氏は,「ようやくWindows VistaとOffice 2007を販売できるところまでこぎつけた。実際のところ,自分はこの製品のどちらもが,恐らくかつてないほど,少なくともWindows 95を発売してからの10~11年間の中では確実に,最も期待できるリリースだと思っている。これはMicrosoft Corporationの新しい時代の幕開けを告げるリリースだ。Windows VistaとOffice 2007を中核に据えることで,われわれは市場の関心を引き付けたり,それらをプラットフォームとする商談を行ったり,アドオン製品を販売したりできる。どちらも信じられないほど刺激的な製品で,市場に投入されると同時に興奮を巻き起こすだろう。Windows VistaとOffice 2007が消費者の手元に届けられるのは来年(2007年)初めだが,製品自体に対する期待はもちろん,当社の顧客だけでなく株主にもたらされるメリットに対する期待の大きさも感じることになるだろう」と語った。

 Microsoftのプラットフォーム&サービス部門の共同プレジデントであるKevin Johnson氏は,MicrosoftがWindows VistaのRC1.0を間もなく出荷することを発表し,11月と1月の出荷に向けて予定通り作業が進められていることを繰り返し強調した。「当社が売り出そうとしているWindows Vistaは,非常に中身の濃い製品だ。Windows Vistaを市場に投入すれば,世界中の人々が驚き,興味を引かれ,感嘆することは間違いない。Windows Vistaを使う人は誰でも,必ず自分の役に立つ機能を見つけられる。それがユーザーであろうと,ITプロフェッショナル,開発者,インフォメーション・ワーカーであろうと,それぞれに役立つ機能が搭載されている。もう1つ,そのようなエキサイティングな製品を出荷すると同時に,当社のプレミアム製ラインアップの優れたバリュー・プロポジションについてもアピールし,宣伝する予定であることも付け加えておく」(Johnson氏は宣伝がうまい)。

 Ballmer氏はその日の締めくくりに,Windows Vistaに関する度重なる延期について謝罪し,Microsoftは今後のWindows製品の出荷に際して二度とこのような遅れを発生させることはしないと語った。「今回Windows Vistaで経験したようなことは二度と繰り返さない。フラグシップ製品のメジャー・リリースの間隔を5年間も空けることは決してしない」(Ballmer氏)

2006年8月:Windows Vistaは出荷できるのか?

 製品候補版(RC1,Release Candidate 1)のリリースを目前に控え,Web界隈のアナリストや専門家は,非常に分かりやすいテーマ,すなわちWindows Vistaは完成したのか,Microsoftはその時点で最新のコードベースに基づいて製品を出荷し,Windows XPよりも大幅に機能強化されていると主張できるのか,という点について議論を始めた。その時点では,答えは誰の目にも明らかだった。筆者は,何か辛口にならないようユーモアを交えた文章を書けるんじゃないかと思い,軽くジョークを交えた記事「Is Vista Ready?」を書き上げた。果たしてジョークを楽しんでもらえただろうか。

 つまり,MicrosoftがまもなくWindows Vistaを出荷するかどうかについての議論はあまりにも明白であり,筆者はそれらをまとめてから,Windows Vistaの欠点をまとめた記事「Is Windows Vista ready?」を発表した。「もう勘弁してほしい。Windows Vistaの最近のビルドを使うとイライラさせられどおしだ。ウソじゃない。文字通り来る日も来る日もずっとこの厄介者を使い続けた。そうして,全身全霊を傾けてWindows Vistaを使った結果受ける仕打ちを,身をもって体験するはめになった。以前SuperSiteで『悲鳴が聞こえる』というフレーズを使ったと思う。ある日,妻が筆者に向かってそのフレーズを使ったので何のことかと思ったら,何度も何度もWindows Vistaがつまらないところでスローダウンやクラッシュ,ハングアップを起こすのに堪忍袋の緒が切れた筆者が,デスクトップPCに向かって太古の呪いの言葉を叫んでいたというのだ」

 「MicrosoftがWindows Vistaを完成させるのにあとどれだけの年月が必要なのか,筆者には皆目見当が付かない。いま望んでいるのは,最終的にきちんと完成させてほしいということだけだ。それが2007年の1月か,5月か,あるいは8月になってもかまわない。しかし実際のところ,誰が筆者の意見など気にするだろうか。筆者も単なるテクノロジおたくのオンライン専門家であり,ベータ・テスターの1人にすぎないのだ」。別の言葉で言えば,誰が筆者の意見など気にするだろうか。誰が他人の意見など気にするだろうか。Microsoftは,自ら準備は整ったと判断すればWindows Vistaを出荷する。それだけだ。オンライン専門家がどれだけ歯ぎしりしたところで,それが変わることはなかった。誰の目にもそれは明らかだった。

2006年8月:品質が突如高まる

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