今回のフィールド・トライアルで使われるNGNのネットワーク構成は,図6のようになっています。この図は取材時の聞き取りを基にして,推定を交じえて作成しました。

図6●NTTのNGNフィールド・トライアルのネットワーク構成
図6●NTTのNGNフィールド・トライアルのネットワーク構成
取材内容を基に,本誌が推定した。3階層のルーター・ネットワークとさまざまな制御を担うサーバー群で構成されている。 [画像のクリックで拡大表示]

 NTTのNGNは,3階層のルーター・ネットワークと,それを制御するためのサーバー群で成り立っています。

 まずルーターについて見ていきましょう。一番低い階層のルーターは,「サービス・エッジ」と呼ばれています。アクセス回線を直接収容します。サービス・エッジは,QoSなどのNGN特有の機能を提供する要となるネットワーク機器です。基本的には,NTTの各収容局に設置されます

 中間の階層にあるルーターは,「エッジ・ルーター」と呼ばれ,サービス・エッジを束ねて,バックボーンにつなぎ込む役割を果たしています。最上位の階層にあるルーターは,「コア・ルーター」と呼ばれ,NGNのバックボーンを構成します。エッジ・ルーターとコア・ルーターは,機能自体あまり変わらないので,まとめて「中継ノード」と呼ぶこともあります。

 サーバー群には,いろいろなタイプがあります。NGNで最も重要なサーバーは,SIPサーバーです。SIPサーバーの主な機能は電話機の間でセッションを確立させることで,従来のIP電話サービスでも広く使われています。NGNでは,電話以外にもさまざまな場面でSIPサーバーが活躍します。

 このほか,帯域制御の情報を管理する「帯域管理サーバー」や認証情報を管理する「認証サーバー」などがあります。

回線認証で安全性を高める

 NGNのしくみを理解するため,端末をネットワークに接続する手順を見てみましょう(図7)。この手順は,取材や公表されたインタフェース仕様に基づいて,本誌で推定したものです。

図7●ユーザーがNGNに接続する手順
取材内容を基に,本誌が推定した。ユーザーと回線をセットで認証し,認証に成功したときのみ,その回線を専用のVLANに収容して通信できるようにする。 [画像のクリックで拡大表示]

 まずブロードバンド・ルーターを起動すると,PPPoEによって,接続を要求します。それと同時に認証を要求します。認証情報は,RADIUSというプロトコルを使って,バックボーンにある認証サーバーに送られます。ここで正規のユーザーかどうかを認証します。

 NGNで特徴的な点は,単純なユーザー認証だけではなく,「回線認証」と呼ぶしくみを組み合わせて,より強固なセキュリティを確保していることです。これは,回線ごとに識別情報を割り当て,特定の回線につないだ端末だけに通信させるしくみです。

 認証に成功すると,今度は端末にさまざまな情報を割り当てます。端末がIP通信できるように,NGNのDHCPサーバーから端末にIPアドレスが配布されます。こうしてユーザー端末はIP通信ができる状態になります。

SIPサーバーが帯域割り当てを指示

 今度は,電話機から電話をかける手順を追ってみましょう(図8)。

図8●NGNで呼を設定する手順とQoSのしくみ
取材内容を基に,本誌が推定した。SIPサーバーがサービス・エッジに対して割り当てるべき帯域を指示する。サービス・エッジのところで厳密に帯域を割り当てるので,NGN内部ではふくそうが発生しない。 [画像のクリックで拡大表示]

 発信側のユーザーが電話機で着信側に電話をかけると,IP電話アダプタはSIPを使って,SIPサーバーに呼設定を要求します。呼設定とは,発信側と着信側の間に通話用のセッションを確立する作業のことです。IP電話アダプタが送信するSIPメッセージには,通信のタイプと符号化方式が書き込まれています。

 SIPサーバーは着信側のIP電話アダプタともSIPを使って情報をやりとりし,発信側と着信側に通話用のセッションを確立させます。ここまでの作業は,従来のIP電話のしくみと同じです。

 SIPサーバーは,サービス・エッジのルーターに対して,通話に必要な帯域を割り当てるようにSIPを使って指示を出します。サービス・エッジは,指示に従って,その通話に対して帯域を厳密に割り当てます。このように,サービス・エッジは,SIPサーバーとSIPを使って通信するという,一般のルーターにはない特徴を持っています。

 IP電話アダプタから送り出された音声パケットは,サービス・エッジで帯域制御を受けつつ,優先的に転送されます。一方,中継ノードは,帯域制御は施さずに,簡単な優先制御のみで音声パケットを転送します。NGNのコアの手前にあるサービス・エッジで帯域を厳密に保証することで,コアではIPパケットのふくそうが発生しないので,優先制御だけで十分というわけです。

 なお,今回のフィールド・トライアルの目玉の一つは,SIPによるQoS制御機能や回線認証の結果をSNIを通して外部に提供する機能です。NTTのNGNについて技術面全般を受け持つ雄川 一彦氏によれば,「そうしたサービスを提供するしくみはすでに用意しています。ただ,セキュリティへの配慮や準備の遅れなどの理由から,公開資料には載せていません」とのことです。

さまざまな工夫で遅延を抑える

 IP電話の大敵は,IPパケットの遅延です。遅延が大きくなると通話品質が落ち,会話が不快になります。特に,従来の固定電話と同じレベルの通話品質を維持するためには,IPパケットの遅延を抑える必要があります。

 このため,さまざまな工夫を積み重ねて,遅延時間を削減しています。まず,NGNのルーターの階層構成を3階層にまで減らすことで,遅延を減らしています。従来の地域IP網は,ルーターの段数がもっと多いため,遅延が大きくなっていました。そこで,現在提供しているIP電話サービス「ひかり電話」では,遅延の少ない専用のIPネットワークを使っています。

 今回のNGNは,先ほど述べたように,各ルーターでの優先制御によって遅延時間を削減しています。さらに,サービス・エッジでの厳密な帯域割り当てによってふくそうを防ぐことで,遅延時間を保証しています。

 こうした工夫によって,今回のフィールド・トライアルでは,電話向けの最優先クラスの転送遅延として70ミリ秒を保証しています。これは,通信事業者のIP通信サービスが満たすべき国際標準規格の基準である100ミリ秒に収まっています(表2の下)。

表2●NTTのNGNが提供する通信品質保証と満たすべき国際標準規格
今回のNTTのフィールド・トライアルでは,ネットワークの品質規定条件を提示している。これらの値は,ITU-Tが定めたIPネットワークの標準規格「Y.1541」を満たしている。 [画像のクリックで拡大表示]

【Answer
3階層のルーター・ネットワークとSIPサーバーで構成しています。SIPサーバーとルーターが通話ごとに帯域を割り当てます。

出典:日経NETWORK 2006年12月号 74ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。