フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄

今回は今年最後の連載ということもあってAsteriskの設定に関する解説はお休みさせていただき、今年一年を振り返ってAsteriskの動向などを解説することにしよう。

・日本におけるAsterisk元年

 何より一番大きなニュースは今年は日本でのAsteriskの知名度が一気に上がったことであろう。Asteriskそのものは正式なリリース(1.0.0)は2004年なので、オープンソースとしては若い部類に入るものの、日本での知名度が高くなったのはまさに今年であろう。筆者が「AsteriskでつくるIP電話システム」を上梓したのが2005年の8月と正式リリースから1年ほど後になっている。

 Asteriskが日本で大ブレイクしたのは、4月に開催された日経コミュニケーションのセミナーによるところが大きい。当日は実に沢山の参加者に恵まれ、筆者もスピーチをさせていただいた。その後、「Asterisk」という言葉をよく目にするようになったのは皆さんもご存知の通りである。おかげ様で筆者もAsterisk関連であちこちから、お声がけいただいており,忙しくしている毎日である。筆者のVOIP-Info.jp Wiki(http://voip-info.jp/)も多数のアクセスをいただいており、これもAsteriskがいかに知られてきたかを表していると言えよう。

・Asteriskバージョンの変遷

 Asteriskは先述の通り2004年9月に1.0.0という最初の正式リリース版が世に放たれた。しかしながら、この1.0.0ではまだ多数の不具合や機能不足などがあったため、新たなバージョンが望まれた。

 次の大きな変更となったのがバージョン1.2である。Asterisk1.2のリリースは2005年11月と1.0.0から実に1年以上経過してからとなった。この後、本来ならば今年(2006年)の10月にAsterisk 1.4がリリースされる予定であったが本稿執筆時点ではAsterisk 1.4は未だβ3の段階にあり、おそらくは年内リリースは無理ではないかと思われる。

 ここで面白いのはAsteriskのバージョンは1.0、1.2、1.4と偶数番号を取る点である。1.1や1.3は開発バージョンで扱われているようなので、今後も正式リリースは1.4、1.6と続くのではないかと思われる。

 Asterisk 1.0から1.2では大きな変更がいくつかあったものの、移行時のインパクトを小さくするため互換性を保ちながら実装されたものが多い。例えばAsterisk 1.0で多用されていたn+101ジャンプ(エクステンション内の条件分岐)はAsterisk 1.2では基本的には廃止方向になってはいるが、設定ファイル内のオプションおよび、各種アプリケーションのオプション指定によって1.0系と同じ動きをさせることが可能だ。この部分につては1.4でも継承されている。

 大幅に整理が行われたのがSetCIDnumやSetCIDnameのような「Set系」の機能で、これらは従来の「アプリケーション・コマンド」の実装から「ファンクション(関数)」と呼ばれる実装方法に変更がなされた。移行期間を設けるという意味でAsterisk 1.2ではこの両方が実装されているが、Asterisk 1.4では廃止予定となっていたものは、きれいさっぱり廃止される見込みであるので1.0系から設定ファイルを引き継いでいる場合には注意が必要であろう。Asterisk 1.4がリリースされた際には、本連載でも詳しく取り上げたいと思う。

 1.0から1.2にバージョンが上がって良くなった点の一つはSIPの実装レベルがかなり上がったことだ。未だに日本で使うには若干のパッチなどが必要なものの、かなりの数のIP電話サービスとの相互接続性が確認されてきており、結構「まとも」に使えるようになった。この他にもAsterisk 1.2ではエクステンションの記述方法が簡単かつ便利になったなど、実装レベルはかなり満足度の高いものとなっている。

 Asterisk 1.4が今後どのような動きを日本国内で見せるかは注目に値する。例えばファクスのT.38サポートや、GoogleTalkとの連携などの新機能を使ってみたいというユーザも少なくないであろう。

・「小さな」Asteriskを求める動き

 日本国内でここ最近、活発化してきているのがAsteriskアプライアンスをビジネス化しようという動きだ。AsteriskはフルセットのPBXであるため、どちらかといえば大企業向けと思われていたフシがあるのだが、現実にはパーソナルあるいはSOHO/スモールビジネス向けのソリューションとして、かなり適している。というのも、Asteriskを使ったIP電話システムはこれら小規模なユーザこそが望んでいるコスト・コンシャスなソリューションだからである。

 ただしビジネスとしてこのマーケットが少々厳しくなるのは「PBXにお金をかけられない」ユーザーが多いこと。パーソナルやSOHO/スモール・ビジネスでは当然だが、PBXにかけるコストは出来るだけ抑えて、なおかつ通信コストも下げたいというユーザーが多いからである。

 Asteriskは不要な機能を「落とす」ことで、かなりコンパクト化することもできる。しかもLinux上で動作するIPアプリケーションとしては、それほど重いものではないためコンパクト・サーバー類上でも、小規模なシステムならば十分実用に耐えるという現実がある。

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