写真 グーグルのアンジェラ・リー シニアインターナショナルプロダクトマネージャー
写真 グーグルのアンジェラ・リー シニアインターナショナルプロダクトマネージャー

 動画共有サービス「YouTube」買収劇でまたもや注目を集めたグーグル。最近は新サービスを立て続けに投入している感がある。Webブラウザで使えるオフィス・アプリのサービス「Google Docs&Spreadsheets」や,企業が自社ドメインで使えるアプリケーション群「Google Apps for Your Domain」などだ。こうしたサービスを生む源泉となっているのは何か。サービスの開発スケジュール管理や開発チームのまとめ役を務めるアンジェラ・リー シニアインターナショナルプロダクトマネージャー(写真)に聞いた。

グーグルを意識する競合ベンダーが多い。

  グーグルの強みはユーザー・フォーカスであること。例えば無料のプロダクト(サービス)が多いが,有料では使ってもらえる人が限られる。当社の歴史を振り返ると,いずれのプロダクトもまずアイデアありきで,もうけ話は最初は出ない。ユーザーが付いて便利に使ってもらえれば,それは後から追いついてくる。

  情報を広くとらえていることも強みといえる。Webからはじめメール,デスクトップ検索とサービスを広げてきた理由をよく問われるが,情報を扱うという点では同じ。書籍検索,ビデオ,広告,いずれもひとつの情報。ハワイ旅行に行きたい人が「ハワイ旅行」のキーワードで検索すると,ハワイ旅行の情報ページや広告を出したECサイトが見つかる。広告も有意義な情報源だ。

多様なサービスはどういう視点で考案するのか。

  「便利であり,ユーザーが不便に感じることを解消したい」と考える。Google Docs&Spreadsheetsは次のような発想から生まれた。当社では複数人でコラボレーションしながら,文書や表計算のファイルを完成に近づけていくことが多い。表計算の文書をメールに添付して送り合っても,各人が返したコメントを誰かが全部まとめなくてはならず,大変な労力となる。コメントが重複するかもしれない。それを同時に,Webを使ってできたらどれほどよいか。

  電子メール・サービス「Gmail」も,当社自身が膨大なメールの量で困っており「ほかに困っている人がいるだろう」と考えたことが発端。Gmailのディスク容量は少しずつ増やしている。ユーザーを煩わせたくないからだ。昔のWebメールは容量がいっぱいになると「早く対処して」と通知され,大事だから残してあった情報も削除しないといけなかった。それはユーザーにとって不便なことだ。

グーグルには利用者のデータを預かるサービスが多い。それで囲い込むという意図はあるのか。

  利用者はsticky(そのサービスにのめり込んだ状態)になる。つまり集まったデータをほか(他サービス)に移しにくくなる。ただそれは「結果そうなる」わけで,データをたくさん預かるサービスを考えたわけではない。

  Gmail やGoogle Talk,Googleカレンダーは連動しており,同一アカウントで使用できる。それも利便性を考えてこうした。さまざまなサービスに逐一ログインするのは大変だ。それを囲い込みと考える向きもあるかもしれないが。グーグルのサービスが他社に劣っていれば,そちらに移行してしまうのは仕方がない。

最近は企業向けにも訴求できる「Google Apps for Your Domain」を出し,日本語化した。

  これは,ドメインを持つ企業や教育機関などの団体が便利に使えるアプリケーションを提供する無償サービスだ。自分で取得したドメイン下でGmail,Google Talk,Googleカレンダー,Google Page Creator(Webページ作成ツール)を使える。Gmailを例にとると,これをASP(application service provider)のようにドメイン・オーナーに提供すると考えればよい。このサービスを導入した団体の社員や生徒は,「ユーザー@自ドメイン名」のアドレスでサービスを使える。管理者にある程度のスキルがあれば,社員や生徒がログインした先のページにロゴを入れたり色を変えるといったカスタマイズも利く。SaaSの定義はよく分からないが,近い内容である気もする。このサービスには今後,(企業向け)機能がさらに加わる可能性もある。

  企業向けとしては,米イントゥイットの中小企業向け会計ソフトとの連携を発表している。イントゥイットの「Quickbooks 2007」を使うと,Adwordsに広告を出したりGoogle Mapsにビジネスの住所や情報を登録できる。

開発スケジュールを管理したり開発チームをまとめていく立場から,いま気になることは。

  個人的には,便利になる一方で情報も氾濫(はんらん)している状況にあって,その情報を整理するにはどういうプロダクトが必要かということが気になる。ユーザーが情報の所在をできるだけ覚えずに済むことが理想だろう。

  コミュニケーションに関しては,今まではユーザーがどの手段を使うかを選択しなくてはいけなかった。GmailにGoogle Talkを統合したことで,メッセージを送ろうとした際に「この人はいまチャットできる」と分かる。システムが適切なコミュニケーション手段を提示してくれる環境が望ましいと思う。

出典:日経コミュニケーション 2006年12月1日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。