筆者はこれまで,無線アクセス・ポイント(AP)の機能を強化するサード・パーティ製ファームウエアである「DD-WRT」と「OpenWRT」を紹介してきた。これらはどちらも,米Linksysが公開したオープン・ソース・コードから派生した「Alchemy」をベースにしたものである。今回もAlchemyをベースとしたソフトウエア「Talisman」を紹介しよう。このソフトウエアの特徴は,有償だということだ。

 Talismanは米Sveasoftが開発した製品で,同じく同社が開発したAlchemyから派生している。Talismanの登場以来,ある論争が活発化している。Sveasoftはオープン・ソース・コードを手に入れて改善と変更を加え,その結果完成したものTalismanとして販売しているというが,これが議論を呼んでいるのだ。筆者の理解が正しければ,SveasoftはLinksysが公開したコードのライセンス要件を満たすために修正コードを迅速に公開する必要があったのに,それをしなかったと考えている人もいるようだ。

 当然のことながら,オープン・ソース支持者のコミュニティはこうした行動を忌み嫌う。だが筆者の意見を言わせてもらうと,Sveasoftは必ずしも悪いことをしたわけではない。結局のところ,Talismanは非常に優れたソフトウエアなのだから。

 現時点でTalismanは,ASUSとBelkin,Buffalo Technology,Linksysのアクセス・ポイントで動作し,4種類のバージョンが用意されている。Micro,Hotspot,Basic,VPNの4つだ。Micro以外の3つはまだ開発段階にあり,正式版はリリースされていないのだが,ベータ版をダウンロードできる。

 Microは,搭載するフラッシュ・メモリーの容量が2Mバイトしかないアクセス・ポイントでも動作するエディションである(最近のアクセス・ポイントの多くは,これよりも多くのメモリーを搭載している)。さらにMicroは,Basicで利用できる機能のサブセットのみをサポートしている。Basicについては,後で紹介する。

 Hotspotは,公開無線ホットスポットを簡単に構築するために設計されたエディションだ。ホットスポットは完全に公開することもできるし,ログオン認証を要求するよう設定することも可能だ。従ってホットスポットを完全に公開するよう設定している場合,ユーザーはアクセス・ポイントに接続して,インターネットを自由に閲覧できるようになる。ログオン認証を要求するよう設定している場合だと,カスタマイズしたスプラッシュ・スクリーンを表示して,ユーザーにログオンを求められる。さらにHotspotは,ネットワーク・アクセスに課金する必要が生じた場合に備えて,請求書作成機能も搭載している。

 Talisman Basicには,Wi-Fi Protected Access (WPA)やWPA2といった暗号化機能,Secure Shell (SSH),PPTP VPN,Remote Authentication Dial-In User Service (RADIUS)認証,ポート・トリガ,仮想LAN(VLAN),VoIP,ipchainベースのファイアウオール,Quality of Service (QoS)帯域コントロールなどの,多くの機能が搭載されている。

 OpenWRTと同じく,Talismanの製品群には,管理用に使いやすいWebベースのインターフェースが用意されている。そしてもちろん,IPv6に対応したシステムの自動設定を容易にするルータ通知デーモン(RADVD)などのツールやパッケージを追加できる。このほかのアドオンには,SNMPデーモンや,IPアドレスと国名の相互参照を容易にするGeoIPパッケージなどがある。この相互参照機能をQoS機能と組み合わせて使うと,フィルタを設定できる。

 Talisman VPNは,非常に便利かもしれない。複数の事務所を接続する必要に迫られている方にとっては,とりわけそうだろう。VPNはBasicの機能に加えて,Advanced Encryption Standard (AES)に対応したIPsecやDES,Triple DES (3DES)暗号化機能,MD5やSecure Hash Algorithm 1 (SHA1)ハッシュ,そしてWeb管理インターフェース内に設けられたIPsecトンネル設定用の特別な項目などをサポートしている。

 Talismanを利用するには,年間20ドルの利用料が必要だ(過去のバージョンであるAlchemyを無料でダウンロードすることもできる)。利用料を払うと,Talismanファームウェアとサポートフォーラムへのアクセス権が与えられる。Talismanは商用ソフトウエアなので,特定のMACアドレスに固定されている。従ってファームウェアをダウンロードするときに,自分のルータのMACアドレスを入力しないといけない。

 入力すると,ファームウェアはこれら特定のルータでのみ作動するようになる。MACアドレスは最大5個まで入力可能だ。このことを考慮すると,年間利用料が20ドルというのは決して高くないだろう。Talismanについてもっと詳しく知りたい方,あるいはTalismanを購入したい方はSveasoftのWebサイトを参照して頂きたい。

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