番号ポータビリティでは,電話を中継する仕組みも変わる。従来はCDEコードを見て事業者を識別し,その事業者の網に呼をルーティングしていた。ユーザーが番号ポータビリティで別の事業者に移行した場合は,以下の二つの方法のどちらかで対処する。一つは,移行元事業者から移行先の情報を取得し,発信側で移行先事業者につなぎ直す「リダイレクション方式」。もう一つは,移行元から移行先の事業者に呼を転送する「転送方式」である(図3)。

図3●番号ポータビリティの実現方式は2種類の組み合わせ
図3●番号ポータビリティの実現方式は2種類の組み合わせ
従来と同じCDEコードでルーティングした上で,移行先へのつなぎ直しを依頼する「リダイレクション方式」と,呼を転送する「転送方式」がある。携帯電話事業者各社といくつかの固定系事業者は前者,それ以外の事業者は後者の方式を利用する。[画像のクリックで拡大表示]

 このうち回線の利用効率が高いのは,移行先の情報を取得して呼をつなぎ直す「リダイレクション方式」。「転送方式」はユーザーが通話している間,発信元から移行元事業者までの回線と,移行元から移行先事業者までの回線の両方を占有するからだ。しかし,「リダイレクション方式」は,発信側の交換機を改修する必要がありコストがかかる。この方式だけにすると,携帯電話事業者に接続するすべての事業者が交換機を改修しなければならなくなる。このため,その費用を負担したくない小規模事業者からの発信は,携帯電話事業者側の変更だけで対処できる「転送方式」を採用。一方,改修費用を負担できる大規模事業者や,もともと改修が必要な携帯電話事業者からの発信は,回線の利用効率を優先して「リダイレクション方式」を利用する。

 なお,ユーザーが事業者を2回以上変更した場合は,呼の転送やつなぎ直しを複数回繰り返すと,回線の利用効率の面で問題がある。特に「転送方式」は呼を転送した回数分だけ回線を占有することになり,無駄が増える。そこで,CDEコードを割り当てられている移行元事業者は移行先を常に把握し,呼の転送やつなぎ直しは1回だけで済むようにした。例えばユーザーが事業者Aから事業者B,事業者Bから事業者Cに移行した場合は,事業者Cから事業者Aに「ユーザーが自社に移行した」旨を通知。事業者Aがデータベースの移行先情報を書き換えることで対処する。

 移行先の情報は,既存の番号体系と異なるルーティング番号を利用する。固定電話で提供されている一般番号ポータビリティ*2は,従来の電話番号を使いながら,新たな電話番号(裏番号と呼ぶ)を割り当てることで実現していた。従来の電話番号にかかってきた場合は,NTT東西地域会社の交換機で裏番号に変換してルーティングする。この仕組みを二重番号と呼ぶ。しかし,二重番号にすると,1人のユーザーが二つの電話番号を消費することになり,番号の利用効率が悪くなる。多くの需要が見込まれる携帯電話の場合,番号の枯渇問題に発展しかねない。二重番号ではなく,ルーティング番号を利用することになった。

吉田 宏平(よしだ・こうへい) 総務省 前・番号企画室課長補佐

1994年に郵政省入省。電子署名法,電波開放戦略,携帯電話の新規参入などに従事。2006年7月31日まで総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課番号企画室の課長補佐。現在は行政管理局で国の組織・定員などの査定を担当する。

出典:日経コミュニケーション 2006年9月1日号 86ページより
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