Part4では,まだ本格的に利用されてはいないが,注目が集まっている最先端のDNS技術を取り上げる。特徴は,従来からのDNSの役割である「ドメイン名とIPアドレスの管理」という枠組みを飛び出して,さまざまな用途でDNSを使う試みが進んでいるところ。ここで紹介する最先端技術を押さえておけば,当分はDNSの話題に乗り遅れることはない。

ENUM
ドメイン名空間とレコード・タイプを拡張

 ここ最近,インターネット電話やIP電話などのニュースで,ENUM(イーナム)という用語を見かけるようになってきた。このため,ENUMは電話用の技術と思われがちだが,実際はそうではない。DNSと強く結びついている。

電話番号をドメイン名にする

 ENUMとは,DNSのしくみを使って電話番号から,さまざまなアドレス情報を引き出す技術である(図4-1)。

図4-1●DNSを使ってさまざまなアドレス情報を引き出すENUM
図4-1●DNSを使ってさまざまなアドレス情報を引き出すENUM
DNSのしくみを使い,電話番号からさまざまな情報を引き出す。

 インターネット上には,メール・アドレス,WebページのURL,IP電話用のアドレスなど,さまざまなアドレス情報が存在する。ENUMを使うと,こうしたアドレス情報を,電話番号をキーにして検索できるようになる。

 ENUMの基本的な仕様が固まったのは2000年9月*1。現在は各国で実証実験を進めているところで,まだ本格的な運用には至っていない。国内では,通信事業者,プロバイダ,機器メーカーなどが参加する「ENUMトライアルジャパン」という団体が中心になって実験を進めている。

 ENUMを実現するにあたって,DNSのしくみを拡張した。拡張した要素は二つ。ドメイン名空間*2と資源レコードである。それぞれを見ていこう。

 まずはドメイン名空間の拡張から。ドメイン名空間の拡張とは,DNSサーバー同士をつなぐ「枝」を1本追加し,使えるドメイン名の範囲を広げることを指す。

ドメイン名の枝を1本追加

 もう少し具体的に説明しよう。DNSの全体像は,ルート・サーバーを頂点にした階層構造になっており,ルート・サーバーの下にはcom,net,orgといったドメインを管理するDNSサーバーがある。

 これらのDNSサーバーと同じように,ルート・サーバーの下に,arpaというドメイン名を管理するDNSサーバーが存在する。このarpaは,逆引きのために用意されたドメイン名である。逆引きとは,通常の名前解決とは逆に,IPアドレスからドメイン名を調べる手順である。

 ENUMも,この逆引き用のarpaドメイン*3を使う(図4-2)。ただし従来からあるドメイン名でなく,arpaドメインからまた一つ枝分かれさせて,e164.arpaという新しいドメイン名空間を作り,このドメイン名空間を使うようにした。

図4-2●ENUM用にドメイン名空間を拡張
図4-2●ENUM用にドメイン名空間を拡張
ENUM専用のドメイン名空間を定義して,すべてのENUM情報をe164.arpaドメインの下位に置くようにした。電話番号をドメイン名に見立ててENUM情報を引き出す。これは,逆引きと同じしくみである。
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電話番号をドメイン名代わりに使う

 ENUMでは,情報検索の基になるのは電話番号である。そこで,電話番号をドメイン名に見立てて,DNSによる検索ができるようにしている。例えば,電話番号が「03-1234-5678」だったら,これを「8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164.arpa」というドメイン名として扱う。

 電話番号をドメイン名にする規則は以下のようになる。まず,電話番号「03-1234-5678」をE.164番号*4という形式に直す。すると,「+81-3-1234-5678」となる。

 次に,これらの中にある数字だけを取り出して,それぞれの数字をドットで区切って「8.1.3.1.2.3.4.5.6.7.8」とする。さらに,並びを逆にして,末尾にe164.arpaを付ける。すると「8.7.6.5. 4.3.2.1.3.1.8.e164.arpa」となる。これがENUM情報の検索キーワードに使うドメイン名になる。

 あとは,通常のドメイン名の検索と同じように,ルート・サーバーからDNSサーバーをたどっていく。リゾルバが8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164.arpaというドメイン名に対するデータを要求すると,ルート,arpa,e164.arpa,8.e164. arpa…という順番に要求を出していき,最終的に8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164. arpaを管理するDNSサーバーにたどり着く。そしてこのDNSサーバーに目的のENUM情報が格納されている*5

 電話番号をあたかもドメイン名のように扱うENUMのしくみは,先駆者がいた。逆引きである。逆引きの場合は,arpaドメインの下にあるin-addr.arpaというドメイン名空間を使う。例えば,10.20.30.40というIPアドレスを逆引きするときは,40.30.20.10.in-addr.arpaというドメイン名に対して情報を問い合わせる。

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