三井 英樹@日刊デジタルクリエイターズ

 実は多くの人が,「色」の扱い方――色の選び方,色の作り方,色の使い方など――を不得意に感じているようです。かくいう私も決して得意ではありません。そこで今回は,そういった色コンプレックスを克服する方法を取り上げてみましょう。

▼原因を知る(自分に能力がないわけではないと知る)

 全くの個人的意見ですが,多くの人が色にコンプレックスを持つ理由は,小学校教育にあるのではないかと疑っています。もう少し具体的に書くと,「12色の絵の具」です。


12色の絵の具

 中でも「緑=ビリジアン」が一番罪深い存在だと私は思っています。誰でも,野外の風景を描かされた記憶はあるでしょう。しかし,木々の緑や小さな野の花を描こうとしたときに,ある「壁」にぶつかったことはないでしょうか。

 それは,自分の見ている「緑」と,パレットで作っている「緑」とのギャップです。ビリジアンに様々な色を混ぜ合わせて試してみるのですが,自然界の「緑」には程遠い色にしかならないのです。ここで多くの人が,自分には色を「調合」する能力に欠けていると思い込んでしまう気がしてなりません。

 しかし,実際ビリジアンを基調にして,自然界の美しい緑を描けるのは,おそらく非常に優れた抽象画家だけだと私は思っています。ビリジアンは,自然の緑を描くための緑ではないのです。画材屋に行けばすぐにわかることですが,自然の緑を描きたければ,「サップグリーン」という色があります。これを使えば,ほとんど何の苦労もなく草原や木立の色を描けます。そのために作られた色だからです。

 人は,与えられたものの中から選択することを刷り込まれています。ですので,12色の絵の具が与えられたとき,その中の組み合わせで何とかなると思い込んでしまいがちです。でもそれは間違いです。与えられたものが,すべてではないのです。

 例えば,Microsoft Officeのカラーパレットを見てみましょう。下図のような3種の画面が存在します。しかし,一般的に使われるのは,左端の「色のショートカット」のような画面ではないでしょうか。


Microsoft Officeのカラーパレット

 しかし,この左側のカラーパレットだけでは,下図のようなExcelの表は描けません。中央や右側のパレットで色を選択をして,カラーパレットをカスタマイズしておかなければならないのです。


Excelで描いた色による関連付け

 このExcelの表の配色が優れているかどうかは置いておいて,標準のカラーパレットでは作れないという点に注目してください。そうすると,カラーパレットの「作り」にも興味がわくかもしれません。下図は,デザインツールで有名なAdobe製品(IllustratorとPhotoshop)のカラーパレットです。


Adobe IllustratorPhotoshop のカラーパレット

 基本的には,Officeの右側と同じ構成ですが,選択した色をいくつでも「スウォッチ」という名で保存して使えるようになっている点が違います。これは,いわば「お気に入り」の色をどう頻繁に使えるようにするか,という点が大切だと考えられているからです。

 全く異なるアプローチも存在します。今まであまりなかった新しいユーザー・インタフェースのパレットや,現実のパレットを画面上で再現するアプローチがあります。


新しい形態(Microsoft ExpressionCorel Painter

 様々なインタフェースが現れるということは,まだ決定打がないということでもあります。いつも使っているアプリケーションのカラーパレットでは適切な色を選べないとしても,それは「あなた」のせいではなく,ツールのせいかもしれないのです。

▼なじんでみる

 どんなものであっても,“なじむ”のは大切なことです。データベースであっても,ログ解析であっても,プログラミングであっても,対象に慣れ親しむからこそ,勘が働くようになり,最小のステップでよいものを作り上げることができるようになります。

 「色」も同じです。常に色に意識をしている人は,意識していない人よりも鋭い感性を持つことができます。色の感性を持ちたければ,例えば下図のようなサイトで微妙な色の違いを眺めたり,どんな色が効果的かを考えてみるなど,毎日の積み重ねが大切です。


Color Codes Matching Chart HTML

▼使ってみる

 次のステップとしては,色を使って何かを作ってみる,何か見えるモノを作ってみることが必要です。Excelのカラーパレットをカスタマイズしても良いでしょう。様々なツールを使ってみるのも良いですし,下図のようなサイトで擬似的に想像してみても良いでしょう。


カラーパレット(JISの慣用色名)

 Webサイト構築の現場にはよくあることですが,日頃全く色に触れない状態にある人が,ある日突然,色を決定する立場になるのは,かなり危険です。その日の気分によって色が変わるようでは,仕様が次々と変わってしまいます。色に関する決定を行う人は,ある程度,色に対してトレーニング経験を積んでおいたほうが良いでしょう。

 「色」は誰にでもわかりやすい情報だからこそ,気後れしたり,妙なコンプレックスを持ったりしやすいものです。でも,避けていてはいつまでたっても変わりません。ご自分でも,クライアントにでも,少しでも色に触れる機会を増やせば,色への理解が深まると思います。


三井 英樹(みつい ひでき)
1963年大阪生まれ。日本DEC,日本総合研究所,野村総合研究所,などを経て,現在ビジネス・アーキテクツ所属。Webサイト構築の現場に必要な技術的人的問題点の解決と,エンジニアとデザイナの共存補完関係がテーマ。開発者の品格がサイトに現れると信じ精進中。 WebサイトをXMLで視覚化する「Ridual」や,RIAコンソーシアム日刊デジタルクリエイターズ等で活動中。Webサイトとして,深く大きくかかわったのは,Visaモール(Phase1)とJAL(Flash版:簡単窓口モード/クイックモード)など。