「パーソナル・コンピュータ」の概念を提唱したとして知られるアラン・ケイ氏に会う機会を得た。同氏は、「Web技術の進化は驚くほど遅い」と喝破する。この言葉には、より高いレベルでの技術進歩を望む同氏の前向きな姿勢がにじみ出ている。Web技術がインフラとして社会に浸透したことによって、新たなイノベーションを短時間で起こしにくくなっているのではないかと危惧する。同氏へのインタビューの連載の2回目をお届けする。

(聞き手=ITpro発行人 浅見直樹,写真=栗原克己)

すべてのアイデアは1960年代に

Alan Kay

 デジタル技術の進歩にはめざましいものがあります。次から次へと新しいイノベーションが起こっているように見えますが。

 大局的にみれば、その質問には「ノー」と答えざるを得ない。今、世の中に普及しているテクノロジーで、1980年後に発明されたものは皆無に近い。アイデアの源泉ははるか昔にある。例えば、パーソナル・コンピュータの原点も40年以上も前にさかのぼる。

 「パーソナル・コンピュータ」の誕生に先駆けて、まず「パーソナル・コンピューティング」のアイデアが生まれた。1960年代に研究者のEngelbart氏が、「シャトル(マウス)」と「スケッチパッド」で操作するというパーソナル・コンピューティングの概念を明確に示している。こうしたアイデアがあったからこそ、その後の技術進歩によって、パーソナル・コンピュータが誕生したわけだ。

 当時のタイムシェアリング型コンピュータは、グラフィカルなコミュニケーションに十分な性能を備えていなかった。そういう時代だけに、パーソナル・コンピューティングのアイデアは斬新だったといえる。コンピュータとグラフィカルに対話したい、それが私たちの望んだことだった。

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