主流となったUTPケーブルは,イーサネットの高速化に応じて改良されていきます。


図4 より対線を使ったイーサネットでは差動信号で伝送する
基準電位からの電圧差ではなく,2本の信号間の差で表現することで信号の減衰やノイズに強くなり,遠距離でも安定して伝送できるようになる。
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図5 ケーブル内のより対線間で流れる電流がノイズや減衰の要因になる
高い周波数になるほど電流が流れやすくなり,その影響は大きくなる。
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図6 光ファイバのケーブルは石英ガラスなどを使ったコアとクラッド,それらを覆う被覆で構成している
光の信号が送られるのはコアの部分で,マルチモードとシングルモードの2種類がある。
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より対線では差動信号で情報を伝送

 10BASE-Tをはじめとする,より対線を使ったイーサネットの信号は,基準電位(グランド)を使ったシリアル伝送ではなく,1組の信号線でプラスとマイナスの2本の差動信号を使った伝送方式で駆動します(図4[拡大表示])。これは,遠距離で通信すると送信装置と受信装置の間で同じ基準電位を保つことが難しいからです。

 基準電位の送信側と受信側を接続するケーブルには抵抗があるため,これらの間に電位差が生じます。このため,送信側から受信側に電流が流れてグランド線を戻ってくると受信側の基準電位が相対的に高くなる一方で,信号は抵抗で減衰し電圧レベルは小さくなります。距離が長くなるほど,判定基準となる電位のレベルまで信号の電圧が到達せずに,情報が正確に伝わらない可能性が高くなります(図4のa)。

 これに対し,差動信号はプラスとマイナスの2本の信号に差がないときは「0」,差があるときは「1」と判断します。基準電位を使う必要はなく,送信装置と受信装置の間で基準電位がずれていても問題ありません。

 差動信号には,外部からのノイズの影響を受けにくいというメリットもあります。両方の信号線はすぐ近くにあるため,外部からのノイズがあったときには,2本に同じようにノイズが影響します(これをコモンモード・ノイズと呼びます)。このとき,2本の信号を比較することで,ノイズの影響を無視できます(図4のb)。

線のよりを工夫することで高速通信に対処

 問題となるノイズは,外部からのものだけではありません。

 10BASE-Tと100BASE-TXは1本のケーブル内にある2組のより対線を利用しています。1組が送信用で,もう1組が受信用のペア線です。この2組のケーブル同士はすぐ近くにあります。つまり,絶縁体をはさんで二つの電気伝導体が存在する形になり,簡易的なコンデンサ*が形成されます。このため,信号を流すと電圧がかかって電気エネルギーが蓄積され,電圧が変化するたびに相互に電流が流れ込んで,ノイズの原因となります(図5[拡大表示])。

 この簡易コンデンサはケーブルのいたるところに発生します。そして,伝送速度を速くするために周波数を高くすればするほど,形成されたコンデンサを介して多くの電流が近くのケーブルに流れ込みます。周波数が高い,つまりビット・レートが高いほど,電流が漏れにくい高品質なケーブルが必要になります。

 10BASE-Tは信号の周波数が10MHzと比較的低かったため,グレードの低いカテゴリ3*のケーブルで100mの伝送ができます。しかし,100BASE-TXは周波数が31.25MHzと高くなり,よりグレードが高く電流が漏れにくいカテゴリ5のケーブルが必要になります。ケーブルからの電流の漏れを小さくするために,各ケーブル・メーカーが最も工夫したのは線のより方です。

 より対線は,線をより合わせることで一方の信号線が出した電界を他方の信号線が吸収し,外に漏れる電界を小さくする効果があります。このシールド効果は,基本的により合わせる密度を高くするほど大きくなります。カテゴリ5ではカテゴリ3に比べ,よりの密度を高くすることでノイズの影響を小さくしています。さらに最近では,十字のしきりを入れてより対線の間隔を一定に保つようにしたカテゴリ6や,一対ごとにシールドした上で全体もシールドしたカテゴリ7などのケーブルも登場しています。

長距離の通信には光ファイバを利用

 イーサネットではより対線を使った場合の最大長を100mと規定しています。規格によっては,STPケーブルを使用して,最大120mまで通信可能な場合もあります。逆に,通称「きしめんケーブル」と呼ばれる薄く平たいUTPのフラット・ケーブルでは10m程度までしか扱える能力がないケースもあります。

 これは,より対線の通信ではケーブルに抵抗成分があり受信端の信号レベル(電圧)が送信端に比べ,どうしても小さくなるからです。各メーカーは少しでも長距離を伝送するために,抵抗成分が小さく電圧降下の少ないケーブルを開発してきました。しかし,しょせんはかなりの抵抗成分を持つ銅でできているため,より対線での長距離伝送はできません。

 100mを超えるような長距離を伝送するためには,より対線のような銅線ではなく光ファイバが必要となります。

信号を通すコアを工夫する光ファイバ

 光ファイバ1本の太さは約3mmで,コア/クラッド/被覆の三つの部分で構成されています。コアは光を通すガラス,その光を閉じこめるクラッド,これらを守る被覆というのが,それぞれの基本的な役割です。

 イーサネットが登場したころの光ファイバは価格が高く,折れやすいという問題がありました。このため,あまり使用されませんでしたが,価格が下がって品質も向上してくるにつれ,最近では広く使われています。

 イーサネットで使用する光ファイバには,マルチモード・ファイバとシングルモード・ファイバの2種類があります(図6[拡大表示])。モードとは,光が外部に飛び出さずに伝送できる入射角度の種類です。シングルモード・ファイバは直進のみの光を受け入れるファイバです。信号はコアを直進するため,拡散がほとんどなく高速・長距離伝送に向いています。

 一方,マルチモード・ファイバは,光が反射を繰り返しながら複数の経路をたどり出口に到達するものです。このため,到達時間に差が発生し,高速伝送や長距離伝送には向きません。

 なお,マルチモード・ファイバには,ファイバ内の伝搬速度がどこでも同じステップ・インデックスと,伝搬距離が長くなる外周に近い部分ほど伝搬速度を速くして到達時間の差を小さくするグレーデッド・インデックス(GI)の2種類があります。基本的には,コアの直径が太いほど入射角度の自由度が大きくなりモードの数が増えます。

 実際のケーブルにおけるコアの太さは,マルチモード・ファイバで62.5μm,シングルモード・ファイバで9.2μmというのが標準です。シングルモード・ファイバの方が細く作る必要があるためコストは高くなります。ちなみに,クラッド部分の径はいずれも125μmが標準です。

 イーサネットの光ファイバで使用する光源の波長は,一般的に850nm,1300nm,1550nmの3種類です。減衰が比較的大きい850nmは,最初に開発され安価なため1000BASE-SXで使われています。

 残りの1300nmと1550nmはシングルモード・ファイバでの減衰が少ない波長で,1000BASE-LXは1300nmを使用しています。1550nmは,さらに長い距離の伝送が必要な場合のための超長距離用1000BASE-X向けデバイスで使われています。


●筆者:岩崎 有平
アンリツ
IPネットワーク事業推進部 副事業推進部長
●筆者:福井 雅章
アンリツ
システムソリューション事業部 第1ソリューション開発部 プロジェクトチーム課長

出典:日経NETWORK2006年3月号 122ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。