長距離化と大容量化を飛躍的に進めてきた光伝送システム。近年では波長間隔を狭めて高密度に多重するDWDM技術が主流です。経済的な光コア網の構成などに応用されています。今回は最新の波長多重システムに使われる,さまざまな技術を解説します。


図1 日本における光伝送システムの変遷
1980年代初頭に再生中継方式(PDH)から始まった光伝送システムは,光増幅技術による光増幅中継方式を経て,現在は波長多重方式による長距離大容量システムが主流となっている。

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図2 光信号の伝送距離を伸ばすラマン増幅技術
励起光を伝送路である光ファイバに入射することで,励起光から約100nm(ナノメートル,ナノは10-9)長波長側の光信号を増幅する技術。信号光の減衰の大きな受信端から励起光を入射することで,より大きな効果が期待できる。

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 光伝送システムは,長距離化と大容量化の二つの課題に挑戦し続けることで発展してきました(図1[拡大表示])。

 光ファイバには伝送損失があるため,光信号は進むにつれて減衰していきます。1980年代初頭に登場した「ディジタル再生中継方式」は,受信した光信号を中継器の内部で電気信号に戻し,増幅した後再び光信号に換えて送信することで,長距離伝送を実現していました。

 ただしこの方式では,伝送速度を変更する場合などに中継装置の取り替えが必要になります。そのため多大なコストと手間がかかっていました。

 90年代早々に登場した光増幅技術が,こうした課題を克服しました。光信号を電気信号に換えることなく増幅できるからです。光増幅技術は長距離化に大きく貢献しました。

 大容量化に向けては,1本の光ファイバの中で複数の光信号を多重して伝送する波長多重システムの登場で,大きな進歩を遂げました。現在は,波長を高密度に多重するDWDM(dense wavelength division multiplexing)*システムが主流です。DWDMシステムは,経済的な光コア網の構築やギガ超の高速サービスを支えるIPバックボーン・システムなどに応用されています。

 波長多重システムは,波長合分波器のAWG(アレイ導波路格子)*や光ファイバ増幅器のEDFA*などにより,伝送容量と伝送距離を急速に拡大してきました。現在では10Gビット/秒を80波多重する伝送システムが実用化されています。

ラマン増幅技術と誤り訂正技術が鍵

 最新のDWDMシステムの鍵となる技術が,ラマン増幅*技術です。これは励起光を伝送路である光ファイバに入射することで,励起光から約100nm(ナノメートル)長波長側の光信号を増幅できる技術です。幅広い波長領域でファイバ損失を補い,光信号のさらなる長距離伝送を実現します。

 実際の利用方法は,信号の減衰の大きい光ファイバの受信端から励起光源を入射し,直接信号の光出力を増幅。到達距離を伸ばします(図2[拡大表示])。EDFAのように特殊な光ファイバを必要としない点もメリットです。

 一方で,波長当たりの伝送信号をもっと高速化することも重要なポイントとなります。システム全体の経済化に大きく貢献するからです。ここで鍵となる技術が,誤り訂正技術です。

 高速信号は,低速信号に比べて雑音に弱く,伝送後にビット誤りが発生する確率が高くなります。そこで誤り訂正技術によって,あらかじめデータに加えておいた冗長符号から元のデータを再現。発生した誤りを訂正します。

 近年では,波長当たり10Gビット/秒の高速伝送を実現しています。今後は波長当たり40Gビット/秒の超高速技術を用いた,Tビット/秒を超えるDWDMシステムも検討されています。

経済化を実現する多重化のノウハウ

 DWDMシステムでは,SONET/SDH*信号,ギガビット・イーサネット(GbE),10GbE信号などを同時に多重して伝送可能です。このためサービスに応じたさまざまなプロトコルや伝送速度の信号を,効率良く伝送できるメリットがあります。

 波長を有効に利用するためのノウハウも増えています。例えば,1Gビット/秒のGbEで1波長を専有するのではなく,電気多重化機能を持つトランスポンダ(MUXポンダ)で8多重したり,SONET/SDHのOC-48/STM-16信号を4多重して伝送するなど,効率的な波長の使い方も出てきています。こうした多重化のノウハウと40Gビット/秒の超高速技術を組み合わせることで,将来的にはさらなる経済化を実現するでしょう。

 次回は,光とIPネットワークの実験環境であるテストベッドについて解説します。


萩本 和男 NTT未来ねっと研究所 所長
松岡 伸治 NTTネットワークサービスシステム研究所 第二推進P 超高速光リンクDP
片岡 智由 NTTネットワークサービスシステム研究所 第二推進P 超高速光リンクDP
出典:日経コミュニケーション 2006年1月1日号 122ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。