自分自身の好みに合うLinuxを作ることは,決して難しくない。フリーソフトを手順よく組み合わせていくことで,ごく普通のユーザーであっても自分だけのLinuxを作成できる。本講座を読みながら,Linuxの仕組みを理解して『自分Linux』を完成させよう。

 自分が必要とする機能だけを盛り込んだ,オリジナルLinuxを作れないものか──このような要望を持ったことはないだろうか。

 一般的なLinuxディストリビューションでは,GUIインストーラにより導入し,再起動後に起動したウィザードで多少の設定を施すだけで,Webブラウザやメール・クライアント,ワープロ,表計算などのパソコンとして必要な機能が一通り使えるようになる。Linuxを初めて使う人や初級者にとっては,それら機能が使えれば,ある程度満足できるだろう。しかし,使い続けていくうちに,Linuxディストリビューションには不要なソフトウエアや不要な機能が多数あることに気づく。

 Linuxディストリビューションは,自由に使えるオープンソースのソフトウエアの集まりなのだから,不要なソフトウエアや機能を排除した自分自身のLinux,『自分Linux』を作ることだって可能である。

 本講座では,Linuxを多少なりとも使ったことがあれば,自分Linuxを作成できるよう,極力分かりやすく手順や仕組みを解説していく。

自分Linuxの仕様を決める

 前述した通り,一般的なLinuxディストリビューションは多機能であり,Windows並(あるいはそれ以上)に多くのハード・ディスク容量を必要とする。さらにメモリー資源も大量に消費する。

 このような豊富な機能が本当に必要かといえば,サーバーやクライアントなどの用途に分けて考えた場合,真に必要な機能は思いのほか少ないものである。汎用のディストリビューションを使うことは,ハードウエア資源を無駄使いしていることにほかならない,といっても過言ではない。


写真1 コンパクトフラッシュ
デジタルカメラやPDA(携帯情報端末)用に販売されている。今回,256Mバイトのものを用いる。

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写真2 USBメモリー
パソコンのデータを持ち運ぶために利用されている。こちらも256Mバイトのものを用いる。

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図1 自分Linuxが起動する仕組み
メモリー上にルート・ディレクトリを読み込んで動作させる。

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写真3 写真3 IDE CF変換アダプタ
写真は,「ドラゴン“直”-Cyoku-」というIDEインタフェースのコネクタに直接接続できるタイプだ。

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 Linuxといえば,組み込み機器向けに代表される,限られた資源の中で特定の機能だけを提供するものも存在する。軽量かつ小型なLinuxは問題なく作れるはずだ。こういったことも考慮しながら,まずは自分Linuxの仕様を決定しよう。

(1)何に使うのか

 ファイアウオールやWebサイトなどの特定機能だけを提供するサーバーを作成するのか,それともシステム復旧用の特別なLinuxを作成するのか,あるいはメモリー上で動く小型なLinuxを作成するかなど,目的・用途は人それぞれ違うだろう。

 そこで今回は,まず最低限の機能だけを有する土台を作り,必要なアプリケーションをその上に追加していくことにする。そうすれば,読者の皆さんが土台を用いて,所望するアプリケーションを組み込んだ自分Linuxを作成できることだろう。

 ちなみに,最低限の機能とはログインしてbashが使え,ネットワークに接続できることだ。一方,追加するアプリケーションとしては,例えばWebサーバー・ソフトやファイル共有サーバー・ソフトなど,Linux上で広く利用されているサーバー系アプリケーションを考えている。余力があれば,デスクトップ・アプリケーションまで広げてみたいと思う。

(2)どのように実装するか

 ハード・ディスク装置(HDD)上に導入する,一般的なLinuxディストリビューションと同様の自分Linuxを作成してよい。しかし前述した通り,Linuxなら軽量かつコンパクトに仕立てることも可能だ。

 そこで,自分Linuxをコンパクトフラッシュ(写真1[拡大表示])またはUSBメモリー(写真2[拡大表示])に格納し,PC起動時にメモリー上にすべて読み込ませて動作させる仕様にした(図1[拡大表示])。

 ちなみに,自分Linuxを構成するソフトウエアと主要なアプリケーションの容量を考慮し,256Mバイトというある程度容量に余裕があるものを選定する。以下には,自分Linuxで両者の記憶媒体を使う際の注意点をまとめた。自分の環境に合わせて,どちらかを選択していただきたい。

(i)コンパクトフラッシュ

 コンパクトフラッシュには「TRUE IDE」*1というモードがあり,IDE(Integrated Drive Electronics)/ATA(AT Attachment)互換の記録媒体,つまりHDDの代わりとして動作できる。ただし,IDEのインタフェースと接続するには,専用の変換アダプタ(写真3[拡大表示])が必要になる。

(ii)USBメモリー

 USBメモリーは,PCが備えるUSBインタフェースに挿すだけで,LinuxからはSCSIで接続したHDDのように扱える。しかし,USBメモリーからOSを起動できないPCも数多い。そのようなPCの場合は,記録媒体にコンパクトフラッシュを選択するしかない。ちなみに,筆者が日常使用している,日本IBMのノートPC「ThinkPad T30」では,USBメモリーからのOS起動が可能であった。

 どちらの媒体を利用したとしてもHDDのような駆動音がしない。どうせなら,PC自体を静音化してみるのも良いだろう。別掲記事「静音PCを選定する」には,筆者が自分Linuxを動作させた静音PCのハードウエア仕様を示した。残念ながら,BIOSの問題でUSBメモリーからの起動はできなかった。もし,USBメモリーから自分Linuxを起動したいのなら,256Mバイト以上のメモリーを搭載可能な比較的新しいノートPCを用いると良いかもしれない。

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出典:日経Linux 2005年5月号 137ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。