Webサーバー・ソフトのApache(アパッチ)やWindowsサーバーを構築するSamba(サンバ)のようなフリーソフトは,企業でも当たり前に使われています。このような高品質なソフトがなぜ無料なのでしょうか。

ソフトの価値の源泉は開発者の「知恵」

 ソフトウエアを一言で説明すると,コンピュータで処理する何らかの手順とノウハウをまとめたものです。したがって,ソフトの価値の源泉は開発者の「知恵」だと言えます。

 ただし,実用的なソフトを開発するには知恵そのものだけでは足りません。知恵をソフトという形にまとめる手間が必要です。こうした手間にはコストが発生するのが普通です。

 商用ソフトはソフトに込められた知恵を利用する権利を販売して,開発にかかるコストを回収し,同時に開発者やソフトを販売する企業が利益を得るという考え方で成り立っています。しかし,フリーソフトはこれとは異なる考え方で成立しています。作り方の代表的な例を見てみましょう。

 まず,ソフト開発のコストを別の所から回収することがあります。例えば,大学などの研究プロジェクトの一環として開発されるケースです。この場合,開発コストは研究資金として提供されます。

 また,開発プロジェクト自体を多くの人たちのボランティアで運営するケースもあります。こちらは建前上,開発コストが発生しません。冒頭で説明したApacheやSambaはこうした方式で開発されました。

 どちらのケースも利用者から料金を回収しなくてもソフト開発が成立しています。そのため,無料で使えるソフトとして公開できるわけです。

フリーソフトの背景には哲学がある

 とはいえ,同じような方式で開発されていてもフリーではないソフトもあります。つまりフリーソフトは,開発者側の意志で無料になっているのです。この背景にはいろいろな哲学があります。

 おそらく一番よく知られているのは,ソフトとしてまとめ上げた知恵は人類共有の資産だから,だれかが営利のために独占すべきでないという考えです。

 ボランティアで成立しているソフトの場合は,商用ソフトに負けないソフトを思い通りに開発したい,あるいはインターネットをより使いやすくしたいといった開発者個人の欲求や情熱が,開発プロジェクトの継続を支えているケースが多いようです。

 フリーソフトの課題は,ソフトが完成したあとのメンテナンスにかかるコストを負担するしくみです。研究プロジェクト型にせよ,ボランティア型にせよ,ソフトがある程度形になると,開発プロジェクトを継続する根拠がなくなってしまうからです。

 いくつかの試みはあります。例えば,完成したソフトを企業が引き取って,メンテナンスを求める利用者からは対価を取るといった方法です。しかし,そうした企業は経営が難しいという問題があります。

 フリーソフトの影響で,最近は商用ソフトのあり方も従来とはかなり変わってきています。こうした中から課題を解決する答えが出てくるかもしれません。

出典:日経NETWORK2005年3月号 95ページより
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