写真1●津山高専の発表の様子。教室のような部屋で学会風の発表をする。発表時間は8分,質疑応答が4分
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写真2●鳥羽商船高専の3D DA.netを操作するための手袋。ボールの位置を認識して画面上の3Dキャラクターを動かす
写真2●鳥羽商船高専の3D DA.netを操作するための手袋。ボールの位置を認識して画面上の3Dキャラクターを動かす
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写真3●詫間電波高専のチームが開発したUSBそろばん。そろばんの下に光センサーがあり,玉の動きを読みとる
写真3●詫間電波高専のチームが開発したUSBそろばん。そろばんの下に光センサーがあり,玉の動きを読みとる
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写真4●金沢高専のHealth me!!。両手両足に加速度センサーを取り付けてプレイする。結構激しい運動に見える
写真4●金沢高専のHealth me!!。両手両足に加速度センサーを取り付けてプレイする。結構激しい運動に見える
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 2005年の「全国高等専門学校 プログラミングコンテスト」(以下プロコン)は,鳥取県米子市で開かれました。米子市は東に大山,北に日本海,そして西には汽水湖の中海という豊かな自然に囲まれています。こうした観光名所に後ろ髪を引かれつつ,私たちは会場の米子コンベンションセンターへ。決戦の時は10月9,10日の2日間。今年は昨年のような台風の接近もなく,穏やかな秋晴れに恵まれました。日本全国59の高専と,ベトナム,モンゴルの二つの大学から,多くの学生たちが集結して,自由部門,課題部門,競技部門の3部門で,熱い戦いが繰り広げられました。

完成度の高い作品が並んだ自由部門

 さすがに4回目の観戦ともなると,会場を効率よくまわる要領が自然と身に付きます。まずはプレゼンテーション会場で,何チームかの発表を聞くことにしました。おっ,自由部門で最初に発表するのは津山高専ですね。昨年,パソコンの画面がつながるWindWorksで最優秀賞を受賞したチームが,今年も本選に登場しています。さて,今年は何を見せてくれるのでしょうか。

 「今,このとき,この瞬間,全世界で何千,何万という人間がインターネットにアクセスしています。しかし今日までのWebブラウジングでは,同時にインターネットへアクセスしているはずの他者を感じることはできませんでした」。

 チームリーダーの井上恭輔くんが,映画のナレーションのようなフレーズで発表を始めます(写真1[拡大表示])。孤独で冷たく,無機質なインターネットの世界で“人のぬくもり”を感じられたら——と開発したのが,「Antwave—超次元コラボレーションブラウザ」です。本システムを一言で言うと,Web閲覧の履歴共有システム。ログインしてWebブラウジングすると,閲覧したページの履歴が記録されます。その履歴は,たくさんのユーザーが通った「道」は太い線で,レアな「通り道」は細い線で,まるでアリの巣のような「エクストラリンク」と呼ばれるチャートで視覚化され,他のユーザーがWebブラウジングするときに参考にすることができます。「みんなが見ているこのサイトには一体何があるんだろう」「アニメに精通した彼がのぞいたページだから期待できそう」といった具合です。匿名で利用することもできるため,見たページが必ずしもあからさまにはなりません。

 「この作品はすべてPHPのスクリプトで記述していて,Webサーバーさえあればどこでも動きます。学校,サークル,コミュニティといったグループ活動のインフラに使ってもらえればいいなと思って作りました」と井上くん。確かに濃いコミュニティで利用するとよさそう。相変わらず,津山高専はソフトウエア・ベンダーのようにターゲットが明確です。

 実機でのデモンストレーションも自由部門から見てみましょう。公式ガイドブックで概要を見ると,おもしろそうなものが目白押し。今年はどうやら豊作のようです。

 パソコン画面の中で,かわいらしいアニメーション・キャラクターがコトコト動いているソフトウエアがありました。背景もあいまってなんだか動く絵本のよう。そばには暗幕のようなものがあって,学生の一人が片手を入れ,画面をじっと見つめています。ひょっとして,このキャラクターは彼が手を使ってリアルタイムに動かしているのかな? と思ったら,やはりそうでした。

 これは鳥羽商船高専が出品した「3D DA.net —3D人形アニメーション作成システム—」。初心者には難しく,熟練者でも手間のかかる3Dアニメーションの作成を簡単に行えないかと,お笑い芸人のパペットマペットを見ながら思いついたのだそうです。球状マーカーをつけた手袋をはめた手の動きを,2台のカメラでパソコンに読み込み,3次元の座標データを取得。これをサーバーに送信し,アニメーションに仕立てます。

 実際に操作させてもらいました。手袋をはめた手を暗幕の中に入れて,指人形を操作するように動かします(写真2[拡大表示])。中指の動きはキャラクターの頭,親指と小指の動きはキャラクターの手の動きになって,すぐさま画面上のアニメーションに反映されます。接続するカメラの台数を増やすことでネットワークごしにコラボレーションすることも可能なのだとか。人形劇の作法で作る3Dアニメーションです。おもしろーい。「モーション・キャプチャー」として知られる既存の技術ですが,パソコンと手袋で実現できる気軽さと,なにより実際に作って動くのが素晴らしいです。

USB対応そろばんで「ご名算!」

 詫間電波高専は「ひゃくmath.ネット」というタイトルのソフトウエアでエントリー。最近,小学生用の計算ドリルを使って脳力トレーニングすることが流行していますが,これはまさにそれをITで実現しようというものです。しかも,単純な計算ソフトとは一線を画する秘密兵器がこの作品にはあります。それはUSBそろばん!(写真3[拡大表示]) 百ます計算,フラッシュ暗算などといった機能のほかに,そろばんを使った読み上げ算ができます。具体的には,合成音声で「ご破算で願いましては~」と読み上げられる数字を,USBで接続されたそろばんを使って計算。合っていれば「ご名算!」と言葉を返してくれます。市販のそろばんの玉を白く塗り,下に光センサーを敷くことで実現しました。製作期間は1週間。

 会場では照明が明る過ぎて認識力が弱いため,こうもり傘で光を遮る必要がありました。でも私は,市販されるなら買いたいぐらい,このUSBそろばんを気に入りました。だって大人は考えないですよ,そろばんのUSB接続なんて。今どきの学生がそろばんで計算することの大切さを認識してくれていたことにも感激です。

 毎年大作で出品し,大きな話題を集める金沢高専。見た目のインパクトは重要と考えているようで,今年はキックボクシングの動きを採用したトレーニング・マシンを作ってきました。その名も「Health me!! —効っくボクサーへの道—」。食事を抜いたり,サプリメントだけでダイエットする現代人の風潮に危機感を覚え,ゲーム感覚で全身運動ができたらという発想から生まれたものだそうです。

 ユーザーは両手両足に加速度センサーを取りつけ,スクリーンの前に立ちます。的が次々に現れるので,それをパンチしたりキックしたりすると,加速度センサーが動きの向きと速さを計測,そのデータでパソコン側で的に当たったかどうかを判定します(写真4[拡大表示])。初心者モード,エキスパート・モードなど,四つのモードがあるのですが,トライした学生に聞くと,思っているよりもハードで疲れるみたい。「やりませんか」と誘われましたが,丁重に辞退しました。それにしても,金沢高専の作品はいつも完成度が高いなあと感心します。これだって,ゲームセンターに置かれていても全然違和感ないと思います。

 こうした作品以外にも,これはと思うものが自由部門にはたくさんありました。昨年までは正直いって「やろうとしたことはよくわかるんだけど…」といった作品もあったんですが,今年は「こういうものを作りたい」と最初に考えたときの機能が,途中で挫折することなく,かなりの割合で実装できている感じ。いや,皆さん腕を上げていますよ。


名 称:全国高等専門学校 第16回 プログラミングコンテスト
開催地:米子コンベンションセンター(鳥取県米子市)
URL:http://www.procon.gr.jp/16th/


学生向けソフト開発イベント特集

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出典:日経ソフトウエア 2006年1月号 34ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。