ニッコウトラベルの会社概要
ニッコウトラベルの会社概要
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東京国際フォーラムでの旅行説明会。この日は久野木和宏社長自ら壇上へ
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ニッコウトラベルは3期連続の増益を見込む
ニッコウトラベルは3期連続の増益を見込む
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顧客の平均年齢は71歳という、海外旅行を企画するニッコウトラベル。社員のほとんどは顧客と接する添乗員だ。新入社員の採用では最終面接を顧客に任せるという顧客重視ぶり。売上高の3分の1近い14億円をかけて河川客船を就航させた。偶然行き着いたシニアマーケットで顧客至上主義を貫き、高い支持を得ている。

 団塊世代の定年を見据えて様々な企業がシニアマーケットの開拓に乗り出すなか、ニッコウトラベルはその一回り上の世代まで顧客に取り込み、成長を続けている。企画する海外旅行の顧客平均年齢は何と71歳。2006年3月期の売上高は前年度比6%増の50億500万円、経常利益は同32%増の4億円を見込む。

 高齢者を対象にしたサービスや製品の市場は有望だ。平均の貯蓄額が2000万円以上といわれる60歳以上の世代は、同時に自由な時間も多い。企業は満足してもらえるサービスや商品を提供できれば大きな利益を上げることができるが、同時に難しい市場でもある。

 人生経験が豊富な彼らは、厳しい視線を持った消費者でもある。生半可なサービスや製品では通じない。シニアマーケットの開拓に求められるのは、顧客至上主義を徹底して貫き通すことだ。

広告から旅行へ

 旅行代理店としては後発のニッコウトラベルがいかにしてシニアマーケットを開拓したのか。

 創業は1976年。新聞社で広告営業に携わっていた久野木和宏社長が独立、広告代理店を立ち上げた。当初は外国政府の観光局が主なクライアントで、観光客誘致のプロモーションを引き受けていた。

 あるとき、なかなか広告の効果が上がらないある外国の観光局に対して久野木社長が自ら旅行を企画したところ、これまでにない反響を呼んだ。

 提案したのは、オフシーズンの平日に出発して平日に帰って来るという旅行企画だった。お盆やゴールデンウィークといったピークの期間、すなわちメジャーな市場は大手の旅行代理店が既に支配していた。しかも、行き先は有名な観光地ではなく、旅慣れた人が好みそうな場所を回るツアーだった。例えば、台湾の旅でいえば、台北ではなく田舎を回るといった具合だ。当時はまだ珍しかった。

 オフシーズンの旅行というアイデアは苦肉の策だったわけだが、300人の募集に対して、2000人以上が応募してきた。そのほとんどが夫が定年を迎えた夫婦。お金と時間に余裕のあるシニアマーケットの一端を垣間見た瞬間だ。

 それ以降、旅行代理店に鞍替えし、シニアをターゲットにサービスを展開することになった。決して市場の潜在性や将来性を買ってのことではなかったのだ。

採用面接を顧客に頼む

 ニッコウトラベルは顧客至上主義ともいえそうな高品質のサービスでシニア市場の開拓に挑んできた。その1つが人材の強化だ。「どんなに楽しいツアーでも添乗員の質が悪ければ途端に評価が落ちる」と話すのは白川直樹副社長。添乗員の採用と教育は同社の特色となっている。

 新卒の採用では、通常、最終であるはずの役員面接の後に、「お客様面接」がある。リピーターの夫婦2組が、役員面接をくぐり抜けた学生をさらに半分にしてしまう。「入社させたいと思う学生を落とされることだってある」(久野木社長)。

 お客様面接では、「集団で移動している最中に急にトイレに行きたくなりました。どう対応してくれますか」といった具体的な質問が出される。旅行に参加する顧客の視点で添乗員としてのセンスを試される。結果、リピーターが認めた「旅行に連れて行ってもらいたい人物」だけが晴れて内定をもらえる。

社員のほぼ全員が添乗員

 いざ添乗員になってからも気は抜けない。顧客の満足度アンケートの結果も、昇進や昇給に関連してくるからだ。

 旅行代理店では添乗員を外注したり、契約社員でまかなったりすることが少なくない。ニッコウトラベルでは添乗員は全員が社員だ。というより、社員のほとんど全員が添乗員なのである。

 通常、旅行代理店には添乗員以外にも手続きや旅行企画などの担当者もいるが、同社では間接部門を除く全員が添乗員。手続きや企画などの担当者も専任になることはない。「お客様に選ばれて入社し、お客様に給料を頂いているということを忘れないようにするため」と久野木社長は説明する。

後編に続く


出典:日経情報ストラテジー 2006年1月号 228ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。