◆ポイント(2):データ転送速度

 テープ・ドライブは,HDDと比べて速度が遅いと一般に思われているだろう。テープの入れ替え時間やランダム・アクセス性能を問えば,確かにその通りだ。しかし,最新のテープ・ドライブでは,データ転送速度そのものはHDDに引けを取らないことがある。テープ・ドライブの現在の性能はどれほどなのか確認してみよう。

 図3[拡大表示]は,代表的なテープ規格のデータ転送速度を世代ごとにまとめ,HDDの年代ごとのデータ転送速度と比較したものである。この図が示すように,テープ・ドライブのデータ転送速度は,各規格の世代が進むにつれて急速に伸びている。LTO Ultriumの第3世代(LTO Ultrium3)の性能を見ると,テープ・ドライブのデータ転送速度(非圧縮時,最大80Mバイト/秒)が5400回転/分のHDDを上回り,1万回転/分の高速HDD(データ転送速度は約90Mバイト/秒)に迫っている。

 しかも,HDDのデータ転送速度は最外周のトラックを読み込むときの「最大サステインド転送速度」の値なので,ディスクの最内周のデータを読み込む場合はその58%程度に減少する。

 容量単価が劇的に低下しているHDDをバックアップ用途に利用する動きはあるが,上記の結果を見る限り,テープ・ドライブもいまだ重要な選択肢であることが分かる。

複数トラックを同時読み書きするヘッド技術

 テープ・ドライブの高性能化を支えている技術の1つは「マルチチャネル・ヘッド」である。データ読み取り用のリード・ヘッドと書き込み用のライト・ヘッドを複数個用意し,複数のトラックを同時に読み書きする技術だ(図4[拡大表示])。例えばLTO Ultrium3では,2分の1インチのテープ幅にトラックが704本あり,16トラックずつ同時に読み書きする。1つ前の世代のLTO Ultrium2は8トラックの同時読み書きだったため,データ転送速度を2倍以上にするのに,大きく寄与している。

 また,1チャネルに対してライト・ヘッドとリード・ヘッドを用意しているため,ライト・ヘッドで書き込んだデータを隣のリード・ヘッドで即座にチェックする「リード・アフター・ライト」機能により,書き込みの信頼性を高めている。

 マルチチャネル・ヘッドを使うと,テープ機構部とメディアの磨耗も防げる。例えばトラックが384本のとき,8チャネルのヘッドであれば24往復ですべてのトラックを読み書きできるが,16チャネルなら12往復で済む。一般にミッドレンジ・クラスとハイエンド・クラスのテープ・ドライブでは,ハイエンドのほうがチャネル数は多く,両者の耐久性や信頼性の違いはこのような構造の違いに基づいている。

テープの性能を著しく低下させる要因

 テープ・ドライブの持つ本来のデータ転送速度を引き出すには注意が必要である。テープ・ドライブに対してデータを送信する側,またはテープ・ドライブからデータを受信する側のデータ転送性能が低いと,テープ・ドライブが持つ本来の性能を落としてしまう。「リポジショニング」や「バック・ヒッチ」と呼ばれる現象である。

 通常,ドライブはテープが一定速度で走行しているときにデータを読み書きする。ドライブがデータを書き込むときに,送られてくるデータの転送速度がドライブの書き込み性能より遅いと,データを書き込む前にテープが先に進んでしまう。

 このときドライブは,「テープの停止→逆方向行走行→停止→順方向走行」を行い,テープに空白を作らないように動く。この現象が起こると,性能が著しく低下する。同時に,メディアとヘッド,機構部に余分な負荷をかけてしまう。実際に,サーバーのCPUや内部バスの性能,接続インタフェースがボトルネックになりやすい。

 このような問題を解決するため,最近のテープ・ドライブには,テープ走行速度を調整する機能を備えるものがある。ドライブ・バッファー内のデータ量を監視し,その変動に合わせてテープ走行速度を自動的に調節する。

入出力の信頼性を高めるサーボ・トラック

 データのトラック密度が高くなるにつれて,データ・トラックを正確に追従することが難しくなってくる。様々な原因によりテープの走行軌道がずれるためだ。このため,ユーザー・データを記録する「データ・トラック」とは別に,ヘッドの位置調整に使う「サーボ・トラック」を用意している。サーボ・トラックはテープ・メディアの製造時点で書き込まれている。テープ・ドライブはサーボ・ヘッドでサーボ・トラックを追従して,リード/ライト・ヘッドを正確にデータ・トラック上に位置するよう制御している(図5[拡大表示])。

 サーボ・トラックには,データ記録面の裏面に書き込んだサーボ・トラックを光センサーで追従する方式もある。ハイエンド・クラスのテープ・ドライブでは,同時に使用するサーボ・トラックの数を増やして信頼性を一層高めている。

◆ポイント(3):コスト

 HDDが低価格化するにつれて,HDDがテープ・ストレージよりも安くなったと言われている。実際のところ,ドライブ単体で比較すると,HDDのほうが確かに安くなっている。

 しかし,実際にユーザーが使用する容量帯(数千Gバイト以上)で比較すれば,異なる結果が得られる。図6[拡大表示]は,同条件で同じ記憶容量を実現するときのテープ・ストレージとディスク・ストレージの価格をまとめた結果である。テープ・ストレージとしては比較的高価な「ライブラリ」でも,ファイバ・チャネル(FC)タイプのディスク・アレイや安価なATAタイプのディスク・アレイよりも容量単価が圧倒的に低い。

 図6の横軸はストレージの総容量を示し,縦軸には1Gバイト当たりの容量単価を示した。同じ記憶容量を実現するのに,テープ・ライブラリはATAタイプのディスク・アレイと比べて「およそ2.5分の1~6.7分の1」の出費で済む。FCタイプのディスク・アレイと比べた場合,その差はさらに広がる。大容量になるほどテープ・ストレージの価格優位性は強まっていく。

 ストレージのランニング・コストに影響する消費電力の面でも,テープ・ライブラリはディスク・ストレージより有利である。ライブラリは複数台のテープ・ドライブを搭載するため,最大台数を搭載したときの消費電力がピークに達する。この条件で同容量のディスク・アレイと消費電力を比べると,テープ・ライブラリの消費電力はATAタイプのディスク・アレイと比べて「7分の1から11分の1」。FCタイプのディスク・アレイとの比較では「4分の1から13分の1」となる。

 次回は,SCSIやシリアルATAなどの接続インタフェースを解説する。


吉岡 雄
日本ストレージ・テクノロジー マーケティング本部 シニアスペシャリスト
出典:日経システム構築 2005年4月号 158ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。