三菱マテリアルの岡本チームリーダー
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 いよいよ今年夏にも,電力線通信の実用化が認められる。2005年12月22日に,電力線通信の実用化の可否を問う総務省の「高速電力線搬送通信に関する研究会」が決着したからだ。長い開発期間をかけて実用化のタイミングを待ちわびていたメーカーの動きは,ここへきてあわただしくなってきた。国内外の状況に詳しい三菱マテリアル電子材料カンパニー電子デバイス事業部RFIDデバイスチームの岡本高史チームリーダーに,同社の電力線通信製品について聞いた。(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

--実用化に向けてどんな製品を開発しているのか。

 当社では,電力線通信用のオーディオ・モジュールを開発している。このモジュールを使えば,アンプとスピーカーをつなぐ配線が不要になり,スピーカーを自由に配置できるようになる。HDTV伝送をうたう電力線通信用製品は多いが,当社ではあえてオーディオに特化した製品を開発した。将来的にはホーム・ネットワークでのHDTV伝送は当たり前になるだろう。だが,それには時間がかかる。今夏の実用化が解禁されるタイミングは,間違いなく市場の関心が高まる。いかにコンシューマにとって導入の敷居が低く,電力線通信のメリットを享受できる製品を投入できるかが,スタートダッシュの成否を握ると考えている。。
 iPodの普及で圧縮技術の開発は進み,データ量が小さくても高い音質を実現できるようになったきた。また,オーディオ製品のネットワーク化も重要になりつつある。電力線通信モジュールは,オーディオ・メーカーの反応もいい。国内での実用化が見えてきたことで,メーカー側もようやく動ける状態になってきた。

--無線LANがあるから電力線通信は不要という意見もある。

 それは違う。電力線通信を使いたいと考える人は,無線が通らなくて苦労している人だ。2.4GHzの無線LANは電子レンジなどの影響を受けたり,他の無線LANとの干渉問題も顕在化してきている。何より電源が必要だ。バッテリーの高寿命化が進み,無線端末の可能性が広がった。だが,例えばスピーカーなど,場所を固定して使うものは電池よりも電源をつなぐ方が簡単だ。
 価格面の努力もする。現在,当社のオーディオ・モジュールは1個30ドル。まずは対向で30ドルにまで落としたい。部材で3000円のコストアップは,エンドユーザーへの売価に1万円ほど上がる。3万9800円のオーディオ製品に電力線通信が搭載された新製品が1万円高くてぎりぎりだろうと考えるからだ。

--ホーム・ネットワーク以外の用途は。

 データ用マーケットも視野に入れている。例えば,センサー・ネットワーク市場。温度,湿度,照度などのデータを電力線通信で送り届ける。配線を新たに用意する必要がないメリットが生かせる。また,空調の自動制度などエネルギー・マネジメントにも使える。
 電力線通信はADSLのように急激に伸びるものではなく,徐々に使われるようになるものだ。電力線通信の持つ可能性への理解が徐々に広がり,アプリケーションが付いてくるはずだ。