図16●x64 Edition向けのデバイス・ドライバを配布しているNVIDIAのWebサイト
図16●x64 Edition向けのデバイス・ドライバを配布しているNVIDIAのWebサイト
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図17●x64 Editionでは16ビット・アプリケーションは動作しない<br>MS-DOS用のテキスト・エディタ「VZ Editor」を起動しようとしたところ。
図17●x64 Editionでは16ビット・アプリケーションは動作しない<br>MS-DOS用のテキスト・エディタ「VZ Editor」を起動しようとしたところ。
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図18●64ビット版Internet ExplorerではActiveXコントロールを使用するWebページを開けない&lt;br&gt;Windows Updateにアクセスした場合はエラー・メッセージが表示され,自動的に32ビット版IEで同じページが開かれる。
図18●64ビット版Internet ExplorerではActiveXコントロールを使用するWebページを開けない<br>Windows Updateにアクセスした場合はエラー・メッセージが表示され,自動的に32ビット版IEで同じページが開かれる。
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図19●32ビット・アプリケーションと64ビット・アプリケーションは,ローカル・プロシージャ・コールで通信可能&lt;br&gt;32ビット・アプリケーションは64ビットDLLを,64ビット・アプリケーションは32ビットDLLを呼び出せない。
図19●32ビット・アプリケーションと64ビット・アプリケーションは,ローカル・プロシージャ・コールで通信可能<br>32ビット・アプリケーションは64ビットDLLを,64ビット・アプリケーションは32ビットDLLを呼び出せない。
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◆x64の活用
安心してx64に移行するためのポイント

 これまで説明したように,x64 Editionは既存の32ビット環境と高い互換性を備え,移行するメリットが多い。だが,32ビット・アプリケーションとの互換性が高いとはいえ,注意すべき点がいくつかある。

 ここではWindows上で動作する,ネイティブ・アプリケーションと.NETアプリケーションの2つについて,ユーザーあるいは開発者として注意すべき点を説明する。これらの点さえ押さえておけば,x64 Editionへの移行はスムーズに行くはずだ。

必ず64ビットデバイス・ドライバが必要

 32ビットWindowsからx64 Editionに移行するに当たって,最も大きな障害になるのがデバイス・ドライバである。x64 Editionでは,32ビットのドライバは使えないからだ。必ず64ビット版を使用する必要がある。

 x64 EditionのインストールCDには,相当する32ビットWindowsのインストールCDと同じデバイス用の64ビット・ドライバが含まれる予定だ。ただ,プリンタ・ドライバのように,機器の性能を100%引き出すためにメーカー製のドライバが必要な機器もある。また,比較的新しい機器については,WindowsのインストールCDにはドライバが含まれていないこともある。

 まず,GUI環境であるWindowsを利用するのに不可欠なグラフィックス・ドライバが重要だ。市場シェアの大きいATI Technologies,NVIDIA,S3(VIA Technologies)の各社は,x64 Edition用の64ビット・ドライバを既にWebサイトで配布している。これらのメーカー製のグラフィックス・コントローラを利用するならば問題ないはずだ(図16[拡大表示])。

 次に重要なのはネットワーク・カードのドライバだ。これについては,x64 EditionのインストールCDに,Intel製やVIA Technologies製,Realtek製など主要なコントローラ向けのドライバが標準で用意されている。大方は問題ないだろう。もしも使用しているネットワーク・カードのドライバがx64 EditionのインストールCDに入っていなくても,今ではネットワーク・カードは安く買えるので,新しいものに買い換えるのも1つの手だ。

 問題はプリンタである。Windows XP Professional x64 Editionには,いくつかのプリンタ・ドライバが標準で含まれていた。ただし,それらは比較的古い機種向けのもので,おおむね最近3年以内に出た機種のドライバはないと考えた方がよい。実際,日経Windowsプロ編集部で日常的に使用しているセイコーエプソンのLP-8900(2002年1月発売)用ドライバはなかった。ただし,各メーカーとも,x64 Editionの正式出荷後には対応ドライバを配布する見込みである。

 そのほかのデバイスに関しても,64ビットへの移行に際しては,使用しているハードウエアに対応した64ビット・ドライバが用意されていることを必ず確認する必要がある。

実装されていないサブシステムがある

 x64 Editionでは,既存の32ビット・アプリケーションがそのまま動作する。だが,32ビットWindowsで動作したすべてのアプリケーションが動作するかというと,そうではない。32ビットWindowsには実装されているのに,x64 Editionに実装されていないサブシステム*があるからだ。

 x64 Editionには,OS/2サブシステム,POSIX*サブシステム,WOW(Win16サブシステム)が実装されていない。OS/2サブシステムやPOSIXサブシステムを利用したアプリケーションはほとんどないので,これらが実装されていなくても,問題になることはほとんどないだろう。それに比べて16ビット・アプリケーションが動作しない影響は少なからずある。

 まず比較的多いのが,インストーラに16ビット・アプリケーションを利用しているものだ。アプリケーション自体は32ビットでも,インストーラが16ビットだと,インストールできないのでx64 Editionでは動かせない(一部の16ビット・インストーラには対応している)。もしも,独自に開発したアプリケーションの中に16ビットのインストーラを利用しているものが残っているようならば,早いうちに32ビット・インストーラに切り替えるべきである。

 同様に,MS-DOS用のアプリケーションは動作しない。アーカイバやテキスト・エディタに,手になじんだMS-DOS用のアプリケーションを使い続けているユーザーは注意が必要だ。コマンド・プロンプトは用意されているが,16ビットのMS-DOS用アプリケーションは動作しない(図17[拡大表示])。

 独自開発したMS-DOSプログラムのソース・コードが残っていれば,32ビットまたは64ビットのコンソール・プログラムとして再コンパイルすれば動作する。今すぐ手に入るx64対応の64ビット・コンパイラには,Intel C++ Compiler 8.1がある。2005年後末に出荷開始予定のVisual Studio 2005にも,標準でx64用の64ビット・コンパイラが含まれる。

 ただし,これらのコンパイラは,64ビット・モードではインライン・アセンブラに対応していない。アセンブリ言語でコーディングするには,別のファイルにして64ビット版MASM(Visual Studio 2005に付属)でアセンブルした後,リンクする。その際,メモリー・モデルや,関数に対する引数の受け渡し規則に注意が必要である。64ビットWindowsでは,第4引数まではレジスタで渡し,第5引数以降をスタックで渡す。

64ビットから32ビットを呼び出せない

 64ビットWindowsでは,32ビット・アプリケーションと64ビット・アプリケーションが同時に動作するが,DLLの呼び出しに制限がある。64ビット・アプリケーションが呼び出せるDLLは64ビット版のみで,32ビット版DLLは呼び出せない。逆に,32ビット・アプリケーションが呼び出せるのは32ビットDLLだけで,64ビットDLLを呼び出せない(いずれもインプロセスDLLの場合)。

 このことは,特にInternet Explorer(IE)でActiveXコントロールを使ったページを閲覧するときに注意が必要だ。例えばWindows Updateのページなどである。既に述べたように,x64 Editionには,32ビット版と64ビット版の2つのIEが含まれている。だが,ActiveXコントロールは今のところ32ビット版しかない。64ビットIEでは,ActiveXコントロールを利用するWebページを開けない(図18[拡大表示])。ただしWindows Updateの場合は,32ビット版IEで同じページを開き直すので,問題はないだろう。

 また,64ビット・アプリケーションを独自開発する場合は,32ビット版DLLを呼び出せない。既存のアプリケーションのソース・コードを基に64ビット化する場合は注意が必要だ。DLLも独自開発のものならば,DLLを64ビット化すれば済む。だが,DLLが他社製の場合は,それを64ビット化するのは難しい場合があるだろう。

 そのようなときは,ローカル・プロシージャ・コール*を利用する方法が採れる。64ビット・アプリケーションと32ビット・アプリケーションは,ローカル・プロシージャ・コールで通信できる(図19[拡大表示])。32ビットDLLを呼び出すラッパー・アプリケーションを作り,64ビット・アプリケーションからはラッパー・アプリケーションを介して32ビットDLLの機能を使うようにする。

出典:日経BPムック『完全詳説! Visual Studio 2005 & SQL Server 2005』 (2005年5月23日発行) より
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。