フラウンホーファーISEらが試作し30.2%の変換効率を達成したⅢ-Ⅴ族半導体とシリコンの多接合太陽電池
(出所: Fraunhofer ISE/A. Wekkeli)
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 ドイツのフラウンホーファー研究機構は9日、同機構のSolar Energy Systems ISEとオーストリアのEV Group(EVG)社が共同で、シリコン(Si)基板で変換効率30.2%を達成した多接合太陽電池の製造に成功したと発表した。

 面積が4cm2の多接合太陽電池で、同研究機構・ISE研究所(Fraunhofer ISE CalLab)が変換効率を測定したもの。

 これまでに測定されていた純粋なSi系太陽電池の変換効率の記録である26.3%と、理論変換効率29.4%を上回り、このカテゴリーにおける世界記録を更新したとしている。

 今回の成果で研究者グループは、電子産業ではよく知られている「ウェハ直接接合(direct wafer bonding)」という技術を用い、Ⅲ-Ⅴ族半導体材料をシリコンに2~3μm移動させたという。

 具体的には、プラズマ活性化の後、太陽電池セル材料の表面を真空中で加圧することで接合した。Ⅲ-Ⅴ族半導体材料の表面の原子がシリコン原子と接合を形成し、モノリシック素子が作られる。

 今回、達成された変換効率は、フルに統合化されたこの種のシリコン系多接合太陽電池としては初めての成果という。

 Ⅲ-Ⅴ族半導体とシリコンの多接合太陽電池は、各太陽電池セル材料を互いに重ねあわせた構造となる。いわゆる「トンネルダイオード」が、ガリウム・リン化インジウム(GaInP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、シリコンという3つの材料の層を内部的に接続し、太陽光スペクトルの吸収範囲をカバーする。

 最上面のGaInP層は300~670nm、中央のGaAs層は500~890nm、最下層のシリコンは650~1180nmの波長の太陽光をそれぞれ吸収し電気に変換する。Ⅲ-Ⅴ族半導体層はGaAs基板にエピタキシャル析出で形成され、シリコン基板に接合する。

 内部構造の複雑さは外見からは分からないものの、太陽電池セルとしては従来のシリコン系と同様という。つまり、前面と後面にコンタクトを持つ簡単な構造であるため、太陽光パネルとして製造できるという。

 ただし、エピタキシャル析出とシリコンとの接続のコスト低減が、太陽光パネルとして実用化するうえでの課題という。同研究機構の研究者グループは、今後の研究によって解決したいとしている。

 現在、フラウンホーファーISEの「高効率太陽電池センター(Center for High Efficiency Solar Cells)がフライブルクに建設中で、Ⅲ-Ⅴ族半導体とシリコンによる次世代太陽電池技術の開発拠点になるという。