システムに制御を委ねる完全自動運転車は、走行中に周囲の安全を確かめる責任から乗員を解放する。多くの人が期待するのは、会話を楽しんだり本や映像といったエンターテイメントを楽しんだりすることだ。睡眠をとりたい人も少なくないだろう。

図1 Daimler社のコンセプト車「F015 Luxury in Motion」の内装
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 こうしたニーズに応えるべく、自動車メーカーはシートアレンジの自由度を高めようとしている。前席を回転させて後ろに向けて後席と向かい合わせに座れるようにした、ドイツDaimler社の自動運転車のコンセプト「F015 Luxury in Motion」は分かりやすい例といえる(図1)。

 だが、自動運転車が事故を起こさない保証はない。しかも、油断している時に衝突されるようなことがあれば、防御体制を全く取れぬままに衝撃を受けることになってしまう。自動運転車では乗員が様々な方向を向いている状況が考えられるため、従来とは異なる危険性をはらんでいるのだ。

手薄だった安全への取り組み

 自動運転時代に消費者が求めるのは“安全で快適な空間”である。快適性を高める提案は幾つもあるが、安全性に着目した取り組みは手薄になっていた。多くのアイデアが、「自動運転車では事故は起こらない」ということを前提としていたからだ。その状況に、自動車シート市場で最大手の米Adient社が気付いた。

 Adient社は、2016年10月31日に米Johnson Controls社から分社した企業(関連記事1)。前身は、自動車用シートや内装部品などの製造を手がけるJohnson Controls社の事業部門「Johnson Controls Automotive Experience」である。世界を走るクルマの3台に1台は、同社のシートを装着しているという。

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