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燃料電池の電動旅客機、4人乗り・5000km航行を実現へ、水素は再エネで生成

2018/10/15 14:32
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
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完成予想図
(出所:HES Energy Systems)
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主翼の下に多数のプロペラを備える
(出所:HES Energy Systems)
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太陽光パネルも備える
(出所:HES Energy Systems)
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上から見た完成予想図
(出所:HES Energy Systems)
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ユニットごと交換する
(出所:HES Energy Systems)
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自動で倉庫から運搬して交換する
(出所:HES Energy Systems)
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交換は10分以内に終わる
(出所:HES Energy Systems)
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 シンガポールのHES Energy Systemsは10月2日、水素電動旅客機(hydrogen-electric passenger aircraft)「Element One」の計画を発表した。

 燃料電池を使い、電動で航空機を航行する。自社開発した超軽量水素燃料電池、分散型の電動航空機用の推進システムの技術を統合して開発する。「ゼロエミッション航空機」と位置付けている。

 同社が公開した完成予想図をみると、主翼の下に多くのプロペラが並んでいる姿に特徴がある。

 このプロペラの後ろには、円筒型のタンクのようなものが連結されている。これが燃料電池と水素などを納めたユニットとなっているようだ。

 プロペラと燃料電池による電動推進システムを主翼の下に並べている仕組みを、分散型と称している。主翼の上には、太陽光パネルが敷き詰められている。この太陽光発電電力も活用して飛行する。

 給油に相当するエネルギーの補填作業は、「ナセル・スワップ(nacelle swap)」と呼ばれる仕組みを自動化することで簡易化する。

 米Amazonや中国・阿里巴巴集団(Alibaba)が手がけているような自動倉庫から無人搬送車(AGV)が運搬し、交換するようなイメージで、10分以内に完了するとしている。

 「ナセル」は、風力発電の用語で、ブレードの後ろに取り付けられている箱状の筐体を指す。中には、発電機などが収められている。

 HES Energy Systemsの電動航空機では、プロペラの後ろに取り付けた円筒型のタンクのようなものを指す。この内部にある燃料電池と水素のユニットを、丸ごと交換する。

 この補給に関して、HES Energy Systemsは、水素インフラを備えた空港のネットワークを組織し、燃料電池による無人航空機とオンサイトでの水素生成を連携させる計画も発表している。

 オンサイトでの水素生成では、太陽光や風力による発電電力を使った仕組みについて、大規模な水素生成事業者と協議しているという。

 今回発表した水素電動旅客機は、既存のドローン型システムを実質的に変えることなく、複数の分散型システムの冗長性によって他の構成要素に及ぼす影響を最小に留めながら、安全性も向上できる技術を採用するとしている。

 4名が搭乗し、500km~5000kmを航続できる仕様とする。航続距離は、水素を気体、液体のどちらで機内に貯蔵するかによって変わる。

 この航続距離は、これまでの蓄電池を使った電動航空機の取り組みに比べて、数桁上回るとしている。超軽量水素エネルギー貯蔵と分散型の推進システムを併用することによって、蓄電池を使った電動航行の限界を超えた長距離の航続が可能になる。

 これによって、小規模な空港など、既存の飛行場が多くある環境をそのまま活用し、小さな都市や農村との間を結ぶ、新たな航路を開拓できると強調している。

 HES Energy Systemsでは、2025年までに、最初の試作機による飛行を目指している。航空、水素の両方のエコシステム(経済的な生態系)の確立まで見据えた技術、事業のコンソーシアムの組成に取り組んでいる。

 静かで、炭素排出量がゼロで、個人向けで、オンデマンドで、分散型で、農村地域でも実現できる経済性を実現するような、航空移動における新たな形態や手法の開発を目指しているとする。

 同社では、これまでの12年間で、無人で航行する小型航空機向けの水素による推進システムを開発してきた。この1年間は、フランスのトゥールーズにある世界的な航空宇宙開発研究拠点であるAerospace Valleyなどと、今回の水素電動旅客機の計画を実行するためのさまざまな要素を検討してきたとする。

 親会社のH3 Dynamicsは、エネルギー貯蔵システム、無人化システム、ネットワーク・ロボットなど、産業向けのIoTの応用を手がけることで知られている。

 現在、フランスで地方への旅行向けに航空シェアリングサービスを提供しているスタートアップ企業であるWinglyと、水素電動旅客機を想定したゼロカーボン航空機のロードマップについて議論しているという。

 フランスには450カ所以上の飛行場があり、大手の航空会社はこのうち10%の飛行場しか活用していない。残りの90%の飛行場を結ぶ航路を、水素電動航空機で実現できれば、それだけでこれまでの常識を変えることができるとしている。

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